鑑定はやばいです
本日二回目のup!です。
今日の一本目を読んでない方は注意して下さい。
召喚されたのだと思っていた。おそらく三つ葉の全員が、そう考えているだろう。
もちろん全員に何かの役目があるとまでは、きっと考えてはいないだろうが、いつか天使から切り出され『勇者様御一行』が召し上げられると。
自分達がその勇者だと、一部、考えているグループもあるはず。
「いや、次々現れるからサポートしてるだけだよ。居てくれればして欲しいことは有るけど、世界の移動は一生の内一度だけっていうし、無理に呼び込むのは不味いだろ? 死す定めの人間族を、入れ替えてこっちに送り込んで来るっていう話しだけど、詳しくは判らないんだ」
なるほど。と、三人で顔を見合わせ頷き合う。
不味いの意味は解らないが、自分たちで呼んだわけでもないのにサポートしてくれるなんて、天使は良い人達だと思う。
「と、言う事で、次の説明に移っても良いかな?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
亜美奈がそう言って頭を下げると、心菜と真鈴もつられたように頭を下げた。
「これが、ダンジョンを創る道具で『ペンタブ』という物」
「板と棒?」
「で、ペンタブ?」
ブルーの宝石のような透明の板の周りを、黒い石で取り囲んでいる板と、同じ様な二つの素材で作られた棒が渡された。
隅の方には、家の鍵になっていたような光る球が幾つも並んでいて、そこに魔力を流すのだろうということが判る。
名前がアレなのはもう、聞くまでもないだろう。と言うより、聞いたら負けのような気がしてくるから不思議だ。
「簡単に言うと、ダンジョンの構造や魔物や採取物の絵を描いて、自由に配置して行くだけで出来るようになってる。詳しい事は、神の手の『鑑定』を使うと判るらしいよ」
「鑑定って、どうやってやるんですか?」
「神の手にもそれぞれワードが有って、鑑定の類は『サーチ』だな。だけど、初めの数回は」
「「「サーチッ」」」
「鑑定に含まれる全ての情報が見えてしまうから、物の無い静かな所で落ち着いてやらないと駄目だよ、って……… うん、もう聞こえて無いね」
凄い勢いで情報が飛び込んで来た。
この家の構造や、中に置いてある物全てから始まり。周辺の地理、動植物に亜美奈達に悪意を持った生き物が存在するかどうか。
話に聞いた精霊では無いかと思われる生き物の居場所も分かった。
自分はもちろん、心菜と真鈴のスキル? 『手』? の内容も見え隠れする。
あとは物の構造・作り方・その材料とレシピ。
海の向うの筈の三つ葉学園高校の姿も、なぜだか見えて来た。
残念ながら、上空から眺められただけだったが。
「大丈夫か、三人とも?」
声は心配そうなのに、顔をみれば呆れているのが丸わかりのミケル。
この場合、呆れられて当然だと亜美菜も判っているのだが。
「残る道具を説明しちゃうから、ぼんやりで良いから聞いておいてくれ。詳しくは、後で案内する部屋なら、鑑定しても大丈夫だからその時で」
ぼんやりとミケルの声を聴き、コクコクと頷く。
すると、紙飛行機をデザインしたチャームの付いた、サコッシュショルダーバッグをまとめてテーブルに置く。
バックは三つとも白い色をしているが、チャームは三色あり、食器棚と同色に染められていた。
「これは『ゲーマー』達の自信作で、『バッグ』と言う。片手でバッグに触れて、もう一方で引き戸を開けるように、手の平を外側に向けて内から外にスライドさせる。そうすると、枠が表示されるんだ。収納したい物を触れた状態でその枠に触れると、収納完了。同じ物なら一つの枠に九十九個入るから、工夫すればかなりの数入る事になるね。
出す時は、同じ要領でも出せるし、バッグに手を入れて欲しい物を思い浮かべれば、出すことも出来る。まとめて沢山入れてある物は、手を入れる方の方法で一つだけ取るほうが面倒が無いな。
あと、時間は止まらないから、食べ物を入れる時は例の箱に入れてしまわないと、中で腐っちゃうからね」
それなら、大きな袋を幾つか作って置いたほうが良さそうだ。
細かいものは同時に使う物ごとに纏めて、それからしまって置かないと枠が勿体ない。
とはいえ、出し入れが頻繁になるだろう物も有るだろうし。使ってみてから、工夫して行く必要が有る。
「外側のポケットの方は、普通にその大きさの物が入るから、うまく使って行ってくれ。
最後はチェーンにぶら下がってる玩具だけど。これは、外して地面に置くと大きくなって空が飛べる乗り物だ」
「えぇ~、飛びたいぃ~」
「ボクも飛びたいっ。学園まで飛べる?」
急に元気になった、心菜と真鈴。
ミケルは一瞬だけ目を丸くして、それから笑顔で頷いた。
「もちろん行ける。けど、あそこが嫌で逃げ出したんじゃ無いの?」
「あ~、そうなんだけどぉ」
とても言いづらそうに心菜は、チラチラと真鈴の方を見るが、真鈴は真鈴でフォローに困ると顔を背けてしまい。その挙句が、二人揃って亜美奈へのすがるような視線だ。
仕方なく、亜美奈はこっそりとため息を吐いた。
「心菜と真鈴は、兄弟が別の校舎に住んでいるはずだし。生まれてからずっと高校の近くに暮らしていたから、親戚や幼馴染も沢山いるんです。逃げたかったのは、悪意の有る人達と同じ建物で暮らすことを、強要されていたからなんです」
「そうなのぉ。だからちょっとぉ、心配でぇ」
「連れて来たいとは言わないから、ボクもちょっとだけ、見に行きたいんだ」
それが学校生活という物だから、我慢して卒業をしなくてはならない。
元の世界に居るのなら、そうするべきだった。だがここは異世界であり、卒業すべき高校もただ建物が有るだけで授業も無い。
皆で協力して、生きて行くための糧を得よう。
それも当然だが、命が掛かっているのに悪意を持つ人と、生活しなくてはならないのは厳しいものが有る。
だから逃げた。
もっとも亜美奈は、あの学園内にはほかに友達もいない。
普段から気にかけてくれていた委員長や担任の事は、少しだけ気にはなるがそれだけだ。
だから、自分ひとりだけなら戻る気は無い。けれど、心菜と真鈴が戻りたいなら、手助けはしたい。
二人が居なかったら、自分はどうなっていたか判らないから。
「あの周辺にもダンジョンは必要だし、三人にやって欲しい仕事も有る。ある程度の事が出来るようになったら、頼みたい仕事の前でも、一度覗きに行ってみようか」
「ダンジョン作るんですか?」
「じゃないと、あの辺の動物も草木も絶滅しちゃうからね。大陸の方に大きめの城が落ちて来た時、実際に丸坊主になったらしい。だから今回は、慎重になってるんだよ」
生徒だけでも九百人近くいる。
それに教師・職員を入れれば千人を超えるはずだ。
更に不味いのは、牛・豚・鶏がそれなりに居たはず。
食べられていなければ、だが。
おそらくはこれからの事を考え、増やす方向で行ってるのでは無いかと思われるが、普通科の生徒である亜美奈達には解らない。
それだけの胃を満足させるには、やはり食べ物もたくさん必要になるだろうし。
「こっちの周りの山も、丸坊主になっちゃうかもね」
あり得そうで怖い。
食べなければ生きて行けないから、仕方ないのだが、丸坊主は不味いと思う。
だが、
「ダンジョン作るとぉ、丸坊主にならないのぉ?」
「作り方によるけど、食べられる野菜や果物・魔物なんかが獲れるようにすれば、山からは獲らなくなるだろ? 君たちの作るダンジョンは初心者向けだから、木の棒だけでも攻略出来るしね」
「勇者が一番初めに持つ装備だ」
「ヒノキの棒だね~」
話している内気分もすっかり良くなったため、昼食を摂ることにした。
今日のメニューはスパゲッティミートソース。それにミニサラダとリンゴジュースが付いてる。
ミケルの方は、可愛いバスケットに盛られたサンドイッチを食べている。
城にいるパートナーが作ってくれた物だそうで、とても美味しそうだ。
「一週間かぁ………」
「どうしたの、真鈴?」
突然憂鬱そうな声を出して、と亜美奈が真鈴の顔を覗き込んだ。
二人に挟まれるように座っている心菜も、同様に真鈴の顔を覗き込む。
「だって、一週間経ったら自分でご飯作らないといけないんだよ。ボク、料理は苦手だし。そもそもこの辺りって、店も無いんだから材料買えないじゃん」
この辺りと言うよりも、この世界に店が有るかどうか判らない。
ミケルの話では、大陸の方にも人が居るらしいから、そちらに行けばあるいは有るかもしれないが。
そうなると、作るか狩るかになるが三人とも普通科であり、農業も畜産も経験が無い。
運動神経も大きな声で言えない程度のため、狩りも怪しい。
釣りは釣り竿が必要で、さらには虫を餌にしなければならないため、触りたく無いとなると難しい。
もちろん、飢える前には頑張るが。
「その辺りはダンジョンを造れば………」
言いかけたミケルの言葉を遮るように、フワフワと赤い光が四人の方に飛んで来た。
家の鍵にしたあの球と似た光にも見えるが、何故か同じものとは思えない。
大きさもだが、あの光はただ光っていただけだったが、これは意思を持って飛んでいるように見えるからだ。
そして、その感覚は当たりだったらしい。
「これが精霊だよ」
「精霊?」
「誰かにくっついて入ったみたいだね」
精霊と言えば虫のような羽をもつ、人の姿をした不思議な生き物だと思っていただけに、この光には驚いた。
けれど、
「これがこの世界の精霊なんですね」
亜美奈がそおっと手を伸ばせば、触れた瞬間テーブルの上にコロンと石が落ちた。
赤い、ルビーのような石だ。
「一先ず預かっておくよ。あの袋に入れると同時に、鑑定が始まってしまうからね。精霊の鑑定だけなら良いけど、レベルが足りないと持ってる鑑定全部一気に来る」
「つまり、さっきのアレ再びって事ですか?」
亜美奈が聞くと、ミケルは苦笑しつつ頷いた。
それは嫌だと、亜美奈はすかさず石を差し出す。
つづく




