城の中のダンジョン
「オレ、虫歯の治療中だったから診てもらったんだ。そうしたら、治療跡が無くなっている、って」
「ウッソー?」
亜美奈はバッグから手鏡を取り出し、口の中を覗いて見た。するとやっぱり、虫歯の治療跡が一つも無かった。
「アンジェ、これってどういう事なの?」
聞かれる前からアンジェも不思議だったのか、懸命にノートを捲っている。
「書いて無いです。まだ教えて貰って無いか、みんな気にしないか、です」
治っただけなのか、これからも虫歯にならないのか。分からないが、不思議なのは変わらない。
とはいえ、アンジェに分からないのなら、今ここで結論を出す事は出来ない。
「取り敢えず」
「うん、取り敢えず?」
「これからも、毎日きちんと歯を磨こう」
久我の言葉に納得しつつも、脱力感に勝てない亜美奈だった。
「それはともかく、さっきから何やってるんだ?」
「何って、精霊石の鑑定。大量保護したって言ったじゃ無い」
実は亜美奈、製作中もバッグの引っ越し中もずっと、精霊石の鑑定を続けていたのだ。もう随分と慣れたため、たくさんは無理だが三つぐらいなら、何かしながらでも鑑定する事が出来る。
「ずるいです、亜美奈一人でコッソリ鑑定するなんてっ」
「そうは言うけど、少しずつでもやって行かないと、何時まで経っても終わらないし」
「そうです、けど」
「アンジェにもやり方教えるから、少しずつやって行けば良いよ」
「やるですっ」
途端に機嫌を直す、現金なアンジェだった。それでも可愛いから、許してしまうのだから、ずるいのはアンジェの方だと、コッソリ思う亜美奈だった。
「じゃあ、出発するよ」
「おーっ、です」
「そこは『です』は要らないでしょう、アンジェ?」
そこも可愛いんだけど、と心の中で言って、亜美奈はコッソリ笑う。
「まあ、良いじゃん。初の本格派ダンジョンなんだし、ちょっと浮かれるぐらいは仕方ないよ」
久我が帰ってすぐ、誰も来ていないか空を確認して、城の中に有るダンジョンに挑むことにした。
ダンジョンには慣れているつもりだが、知らない人が作ったダンジョンは初めてで、ワクワクすると共に緊張する。
「私達が作ったダンジョンも、結構本格派のつもり何だけど」
「桃子は中級まで作れるもんね。私は初級までだし、色んな意味で作り物だよ」
「亜美奈のダンジョンは、便利なのでそれで良いのです」
「確かに、便利よねえ」
便利過ぎて、ダンジョンと言えない物に成りつつ有る気がするが、それはひとまず置いておく。
「ともかく、ダンジョンに入ろう。モタモタしてると、また、邪魔が入りそう」
邪魔と言っては失礼だが、どういう訳か人が来る。そしてあれこれ、用を頼まれるのだ。だから人が来ない内に、ダンジョンに入ろう。
「そうね、直ぐ行きましょう」
「行くです~!!」
勢いを付けて扉を開く。すると、いかにもな洞窟が、姿を現した。
ゴツゴツした岩肌。
光る苔。
そして精霊。
いつものように手を伸ばすと、赤い石が手のひらに落ちる。
「ファイヤーだわ」
もう一つ、赤い石。
「今度は、ファイヤーボールです」
そして、最後は白い石が手のひらに落ちた。
「ヒール。回復だね」
このダンジョンでは、保護出来る精霊が決まっているのか、三人が三つの精霊石を鑑定し終えた途端、精霊は姿を消した。
「始めの階層は、火に弱い魔物が出てくるのかな」
「そうなのです?」
「ゲームだと、たいていそんな感じ何だけど。まぁ、行って見れば分かるよ」
火に弱いと言えば、たいてい木が元になっている魔物だ。とすると、第一フロアは草原か森だろうか?
けれど草木の多い場所で、炎魔法など放って良いのだろうか。洞窟の中で火事になったら酸欠になりそうだ。
そんな事を考えながら進むと、草原に出た。だが足元を見れば、随分とぬかるんでいて、火事の心配はしなくて良いようになっている。
となれば、次に気になるのは、出てくるモンスターだ。ゲームに依って色々だが、火に弱いと言えば、亜美奈は木人やアルラウネなどを思い出す。
だが最初に出会ったのはそのどちらでも無く、緑色のトカゲだった。
「しっぽが葉っぱになっているです」
「と言う事は、草属性なのね」
現実に考えれば、生きてる草は水分が多く、余程強い火でなければ、そう簡単に火は着かない。
けれど『ゲームが元になった』ダンジョンだから、ゲームと同じように考えれば良いだろう。
つまり、モンスターには炎が有効で燃えたりするが、地面や草木には炎は燃えついたりしない。と言う、ご都合主義になっている。
と、言う事で。水の精霊石に付与した服に、全員着替え魔法を放つ。
「ファイヤーッ!!」
魔法はもちろん、来る途中で入手した物だ。
「やったっ。一撃で倒れたわ」
「本当です」
「初めてのフロアだから、モンスターも弱いんじゃ無い?」
余り調子に乗っていると、痛い目に会いそうだが。取り敢えず、初めてなので素直に喜んでおく。
それより、トカゲの居た所に、透明なボールのような物が浮いているように見える。
つづく
久々過ぎてすみませんでした。
新しい薬が体質に合わなくて、妙に眠く出ボーッとしてました。
最近になって、少し慣れて来たので、少しずつ書いてます。




