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大変ですっ

「えーと、そうするとまずは・・・… 何をするですか?」


 ミケル達が余計な物を出したせいで、話しがズレてしまった。そのせいなのか、アンジェが混乱している。

 それでもノートとペンを出すのは忘れないのだから、真面目で良い事だと亜美奈は思う 今回はラエル達が指示してくれているが、いずれはアンジェも指示する側に回るのだ。それがいつの事だかは判らないが、準備しておくに越したことは無い。


「まずは商談。持って来た品物を、どの人に卸すか決めて、金額の交渉をするんだよ」

「なるほどなるほど~」

「それがぁ、決まったらぁ、実際に納品してぇ、開店の後でぇ様子を見て追加する~、かなぁ?」

「ほうほう、判りましたです。で、それはともかくです。皆さん、地図を出して欲しいです」


 突然どうしたと思ったが、その位大した手間じゃ無いからと、先日貰った地図を出して見れば、四国の辺りに点滅する光が有った。


「それです、町が落ちて来たです。小さな家が五十ぐらいと、大きな四角い家が一つ。四角い家の中には、たくさんの人が寝てるです。あと上から二段目には、大人の女の人と、生まれたての子供がいっぱいです」

「産婦人科って事?」

「総合病院?」


 落ちて来たと言うことは、つまり三つ葉や先日出会った旅客機のような状態だろう。

 この世界に来たばかりで、何が起きたのか分からず、不安ばかりが大きくなって行く。きっと、そんな状態で居るはず。


「でも、四国かぁ」

「さすがに遠いわね」


 一度でも行った事が有れば、道が通る為すぐ行く事が出来るが、四国なんて今はもちろん、元の世界でも行った事が無い。


「道は私が通します。お金に関する取り決めが途中なので、ここはミケルのグループに任せて良いですね?」

「はい、判りました」

「他の皆さんは、一旦それぞれの家に戻り、日持ちのする食べ物と、援助物資として適当と思える物を用意して、『皆さんの為の家』に集まって下さい」


 了解し、心菜と真鈴を残した全員が家へと戻る。

 パーティションで区切られているとはいえ、人がいる場所で扉を出すのは初めてで、少し緊張してしまう。

 それでも今後はそういった状況も増えて来るだろうと、出来るだけ気にしない様にする事にした。






 援助物資として適当なものとは、どのような物が良いのだろうか。自分達の時は、寝具や着替えが多かったようだが、家や病院ごとの転移だと、そのどちらも有るだろう。

 城に戻ると亜美奈達は、真っ直ぐ工房に向かった。ここで物資を揃えて、元の家に向かう事になる。

 とは言え、他のグループと打ち合わせをせずに来ているのが、亜美奈の不安を煽る。


「桃子は『手』が有るから、病院の検査を代行した方が、物を持って行くより遥かに喜ばれそうだよね」

「でも病院には、検査室が有るでしょう?」

「電気が無いから、無理だよね?」


 もちろん、非常電源が有るだろうから、最低限はなんとかなっているだろうが。

 家ごとだと、車も家電もしっかり有るし、ソーラーパネルを設置している家も有るだろう。生活に必要な物が、何も無い生徒が多かった三つ葉とは、条件が違うのだ。

 この世界では『化学で作られた物は禁止』ですよ、と言ったところで全員が頷いてくれるとは思えない。

 とはいえ、ルールに従って生きている天使達が、放置してくれるとも思えない。揉めるのは、目に見えている。


「まずはトイレ。後は、お風呂かなぁ?」

「家が有るんだから、どちらも有るんじゃ無いの?」

「有るけど、水が出ないでしょ? 水がなんとかなっても、追い炊きの出来ないお風呂も多いしね」


 水が無ければ、トイレなど使用出来ない。いや、そもそも下水とつながっていない為、水を流すことなど出来る筈も無い。

 それに気付かないで汚水を流してしまったら、大惨事になってしまう。


「トイレを優先しよう。大至急持って行かないと、やばい事になる予感がする」


 想像し、顔が引き攣る亜美奈だった。

 特に病院がやばい。転移が有った時、向こうが夜だったら多少はマシだが、もしも午前中だったりしたら、大きな病院だと大混雑している可能性が有る。


「それなら私は、水魔法を付与した本と、料理に使う道具にしようかしら。スキルでも良いけど、混乱している所にいきなり不思議アイテムを沢山持って行くと、余計に混乱しそうだし」

「料理台はどうするですか?」

「外にブロック積み上げて、竈を作って貰えば良いわ。火を付けるのは、当面はライターで良いんじゃないかしら?」


 桃子達の会話を聞き流しながら、亜美奈はトレーラーハウスを改造して、移動型トイレハウスを数種類作る。

 男性用のみ、男性用個室付き、個室オンリーの三種類。洗面台は外に付ける事にした。トイレ使用者専用の物が出入口付近で、飲み水を出すための物は両脇に二つずつ設置した。

 水場を別にしたのは、そういうのを気にする人もいるし。料理に水を使いたい場合、汚れの付いた手で触った蛇口から出た水では、病気になる可能性もゼロでは無いと思ったからだ。

 それらをダンジョンに接続し、コピーで数を増やす。本当は一つずつ作った方が、レベルが上がるのだが、今はそれ所じゃ無い。

 自然現象を我慢するのは、限界が有るのだ。病人より空腹より、何よりも優先すべき物。それがトイレだ。


「えっ、もう出来てしまったの?」


 コピーを持っていない桃子は、一つ一つ丁寧に作っていた。作っている内にレベルも上がる為、スピードもそれに合わせて上がって行くのだが、それでも限界がある。


「セットにして袋に詰めてくれるかな? 私が纏めてコピーするから」

「判ったわ」


 炊き出し用の道具のようだから、三十も有れば足りるだろう。

 魔法を付与した本は、今日は取り敢えず五十程度で。

 数を増やす魔法を使い、それぞれ用意したら出発だ。


「では、行くですっ」


 全てをバッグに詰めて、アンジェが開けてくれた扉に飛び込む。

 いつもの工房、いつもの扉。

 そして亜美奈達は、待ち構えていたラエルに事情を話し、他のグループを待たずに四国に向かった。







つづく

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