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そういうのも有るの,

 久我、心菜、真鈴の三人が付与してくれた、魔法とスキルの本を受け取ると亜美奈は、一旦胸に抱きしめた。

 それからドキドキしながら本を開く。先ずはレシピ。二つとも上手く付与されている。続いて魔法。


「うう…… そんなぁ、」


 亜美奈が結果を見る直前、上がった悲痛な声に手が止まった。


「ダメだったの?」


 久我に聞いて。答えを聞く間もなく、ゆっくりと本を開いた。

 亜美奈が貰った魔法は、無事に貰う事が出来たが、久我はガックリ肩を落とし、心菜も真鈴も微妙な顔をしていた。


「限定版て何だよ。しかもコレ、肝心なのが使えないとか有りかぁ?」


 ゲームやCDじゃあるまいし、限定版って何だろう?

 見せて貰いたいが、ちょっと言いにくい。


「私もぉ、限定版だってぇ。でも、ぬいぐるみは作れるからぁ、コレで良いやぁ」

「ボクもだけど、欲しかったのは移動や入れ替えだから、OKだよ」

「えっ、ちょっ、見せて貰って良い?」


 あっさり見せてくれた真鈴と心菜。ぬいぐるみは付与が出来ず、引っ越し魔法はバッグなどの機能の移動などは出来ないという事が書かれていた。

 まったく何もないよりは遥かにましだが、これは確かに微妙な顔にもなる。一体どうして、こんな中途半端な付与になったのだろうか。これは今までに無かった事だ。


「あ、あの…… バッグの引っ越しは、オマケという事で私がやるから、そんなに落ち込まないで」


 せっかく貰えると思ったのに欲しい部分が削減されていたのだ、ガッカリするのも良く判る。けれど目の前で、そこまで肩を落とし続けられる方も辛いのだが。


「そうだなぁ、もうそれで良いか、あ?」

「どうしたの?」


 上を向いてあんぐりと口を開ける久我は、何か馬鹿らしい物でも見つけたかのようだった。

 他の誰かが、更なる画伯様レベルのノロシでも上げたのだろうか。そう思いながら上を見ると、亜美奈も同じような呆けた顔で固まった。


 一面天使


 なぜココに、こんなに集まってしまったのか。聞きたいくらい沢山の天使が、亜美奈達の居るこの広場目掛けて飛んで来るのだ。

 不思議な事に天使達の翼は、白一色では無かった。ピンクや黄色、青に紫など、カラフルな翼が夜空一杯はためいている。

 やがて彼らは見知った人物を見つけ、それぞれに散って行った。もちろん亜美奈達の元にも、二人の天使がやって来る。

 それは今まで世話になったミケルと、緑色のふんわりと愛らしい髪と雰囲気を持った天使だった。


「はじめまして、私はミルフェ。あなた達がミケルの受け持っている『神の手』さん逹ね」


 声も話し方も愛らしくて、なのにちょっぴり色っぽくて、同性なのについつい見惚れてしまう。


「ミケルの言う通り可愛いらしくて、会えて嬉しいわ」

「こっ、こちらこそ嬉しいですっ」


 緊張でガチガチの亜美奈逹を見て、彼女はふんわりと笑う。亜美奈の思う理想の天使そのものだ。


「今日はぁ、わざわざぁ紹介しに来てくれたのぉ?」


 恋人が居る事は、以前少しだけ聞いた事が有るが、まさか会わせてくれるとは思ってなかったので、ものすごく嬉しい亜美奈逹だった。


「いや、今日はみんなでご褒美をあげる為に来たんだ」

「ご褒美?」

「今日の一連の行事を終えて、第一段階が終了したからね。聖王様が、労いとお祝いを込めてアレコレ用意してくれたんだよ」

「という事で、そっちの君も仲間の所に戻った方が良いわ。でないと貰いそびれちゃうわよ」

「わっ、はっ、はいっ……」


 からかうように言われ、久我は慌てて走り去った。バッグの件は、忘れず後で声をかけよう。


「先ずはコレ、新しいバッグね。容量が三倍ぐらいに増えてるから、いっぱいになるのを気にしないで使えるよ。もちろん、今までのもそのまま使っていて良いからね」


 今度のバッグはボディバッグだ。色は明るい茶色で本革だから、色んな服に合わせやすそうだ。容量も増えているのも嬉しい。

 更に言えば。例の魔法の練習が出来るのが嬉しい。

 一つだけしか無いもので、いきなり試すのは少し不安だったのだ。けれど新しいバッグが有るのだ、今使っている方で試してみようと思える。

 それに、このボディバッグなら女の子っぽい感じが無いから、久我も喜んでいるだろう。


「次は地図だよ」

「ちっさっ」


 手のひらに乗ってしまう程度の板だ。ダンジョンを作るペンタブに少し似ている。リール式のストラップになっていて、バッグに付けられるようになっているのが便利だけれど、すでにスキルの道具が沢山付いているため、収拾がつかなくなっている。

 ある程度はしまって、必要な分だけ外に出すように考えなければいけないだろう。

 そう考えながら亜美奈は、リールのレシピ作成に挑戦してみた。これは後々、いろんなものに使えそうだ。


「端を持って、斜めに引っ張ると大きくなるわよ」

「おーっ、本当だ大きくなった」

「って言うか、大き過ぎない?」


 広がるだけ広げたら、亜美奈の両手いっぱいになった。テーブルに置かないと、上手く見る事が出来ない。

 そう思って隣を見ると、心菜と真鈴の地図はクリアケースぐらいのちょうどいい大きさだ。

 あのくらいで止めれば良かったのかと、縮めてみれば同じでは無いが良い大きさになった。


「亜美奈のは世界地図だよ。大陸に興味が有るようだったし、珍しい『手』の人達が必要になる道具を、沢山作って貰う予定だからオマケなんじゃないかな」


 つまり、行って欲しいんですね。

 言葉にせずに、目で訴える。これは、初めてダンジョンを造った時の、あのやり取りを思い出す。はっきりと行ってと言わないのに、何気に強引なのがミケルだと、今になってしみじみ思う。

 とは言っても、興味が無い訳じゃ無い。元の世界にいた頃から、大人になったら行ってみたい国がいくつも有った。

 あの頃は、旅費と言語と言う大きな壁が有ったが、この世界に旅費の心配は必要無い。紙飛行機に乗って、海を渡って行けば良い。

 お腹が空いたり眠くなったりしたら、扉を使ってあの部屋に行けば良い。宿の心配も、食費の心配も、ほぼ無いと言って良いのが、亜美奈達『神の手』だ。


「大陸に行こうとすると、先ず日本海側に出ないとね」

「というかぁ、九州の方からじゃ無いとぉ、海渡るの厳しい~?」


 一旦対馬に寄って、朝鮮半島に渡るのが現実的だ。それでも不安は有るけれど。


「野生のパンダが見たいなあ」

「パンダも熊だよ。野生は危険」


 確かにそうだ。可愛いからと言って、むやみに近付くと大怪我をする。生き物はぬいぐるみとは違うのだから。


「それなら大丈夫よ。神の加護が有る人間族は、動物や魔物体襲われる事は無いの。流石に友達にはなれないし触るのは危険だけど、多少近づいても問題は無いわ」

「アフリカもアマゾンも行き放題っ」


 動物に近づいて見るだけじゃ無い、素晴らしい景色を、襲われる心配をしないでゆっくり見たり、そこで暮らす事さえ可能になる。


「行ってみたいっ」

「私もぉ」

「ボクだってっ」


 でも。心菜と真鈴は、この地から離れる事は出来ないのだ。

 三人で行きたかった。言葉にせず、亜美奈は悲しんだ。






                      つづく

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