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「私の胸には飛び込んでくれないのですか?」


背後から声をかけられ、ビクッと肩を震わせる。

振り向けば従者が私を真っ直ぐ見つめていた。


「…ご機嫌よう。」


王子も従者も揃いも揃って挨拶をしない不躾で紳士失格である。

咎めるように私から挨拶をしたが、この従者には一つも効いていないみたいだ。


「私の胸に飛び込んでいいんですよ?」


従者は両手を広げて私を迎え入れる仕草を見せている。

どうやらこの前王子の胸に飛び込んでしまったことを根に持っているらしい。


「私は婚約者がいる身ですので。」

「あの男爵令嬢と違う、と。」

「ええ。」


図星を指されても、人間のご令嬢の私は動揺なんてしない。

澄ました顔で、ツンとキツいことを言ってしまう。

後から後悔したりもするが、体面が大切な貴族というの生き物には必要な気の強さである。


「でも、貴方の婚約者は男爵令嬢と同じ考えでは?」


従者は貴族らしく私に揺さぶりをかける。

この従者は決して猫の上に立とうとはしないが、人間相手だと決して上に立たせてはくれない。

そんな所が胡散臭くて信用ならない。


「それが?」


胸を張り、従者を見下す。

本来なら私の方が立場が上だ。

失礼な発言など受け付けない。

今までに沢山の人から何かを言われてきた。

言い返せずにグッと唇を噛みしめたことなんて何度もある。

だから自分を偽ることなど


「失礼しました。しかしながら、私めも貴方様と同じ考えを持っております故、お話が合うかと。」


彼はわざと自分を立てて私を持ち上げる。

だからと言って揺らいだりしない、外面は…


「そう、貴方は一途の様ね。」


きっと誰よりも従者は私を大切にしてくれると思う。


「でも、私は猫では無いわ。」


にっこりと従者に微笑みかける。

私は貴族らしく完璧な笑みを浮かべていた。

猫なら簡単に脱げる貴族の仮面を人間の私は脱ぐことなんてできない。

可愛らしく無い私、それが私だもの。

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