正直な気持ち
「優勝おめでとう、ハルくん」
「うん、ありがとう…それより平気?」
「うん」
部活はただ見学になってしまい、嘉津先輩には申し訳なかったが、
ハルくんと一緒に帰るときには、少しの痛みはあるものの、なんとか一人で歩くことはできるようになった。
私の歩くスピードに合わせて、ハルくんがゆっくり歩いてくれる。
「おんぶしようか?」
「え、恥ずかしいから大丈夫!!」
ハルくんのことばに、全力で拒否する。
「…ごめん、俺さ…嫉妬して苛立って…」
ハルくんが突然謝るので私は驚く。
「え?」
「今日、仲西と茗子の写メ、見せられて…。茗子に意地悪な聞き方して…」
「……」
やっぱり見られてた…。
私は黙ったまま、うつむく。
「ーーー茗子が俺以外の誰かに触られるのが、すごく嫌だ」
ハルくんが私の前にかがみこむと、言った。
「ーーー仲西に触られるのが、一番嫌だ」
「ーーーこの間から、私のこと触れてくれないのは…どうして?」
私は気になっていたことをハルくんに投げかける。
「私のこと、嫌いになったからじゃないの?」
自分で言いながら、声が震え、涙が瞳にたまる。
「茗子…触れて欲しかったの?」
ハルくんが優しく言った。
私は頷く。
ハルくんがため息をつくと、
帰り道の歩道で突然抱き締めた。
「嫉妬して余裕がなくて…茗子をどうにかしてしまいそうで…優しくできないと思ったから」
ハルくんの声が胸の音と一緒に体の中から聞こえてくる。
………ハルくんが…?
「嫉妬深くて、心が狭くて、いつも全く余裕がない…そんな自分を茗子に気づかれたくなかった…それで茗子を不安にさせてたならごめん。」
「私のせいで…ごめん」
「え?」
ハルくんが腕の力を弱めて、私の顔を覗きこむ。
「私が航くんと関わってしまうからだよね?私、クラスでも仲良くしたりしない。話したりしないようにするから」
「茗子…でもそれは…」
ハルくんが言いかけた言葉を、遮るように私はハルくんの顔を見上げて言った。
「私、ハルくんが好き」
私はハルくんに言えなかったことを伝える。
「私も…嫉妬してた。かすみ先輩とハルくんが話すのを見るたびに…別れてるって分かってるのにどうしようもなく胸が苦しくなるの…」
「茗子…ごめん…気付いてなかった…」
私の言葉に、ハルくんがすまなそうに謝る。
「同じなんだよね、だから」
笑顔で明るく言うつもりが、全然上手く笑えなかった。
「俺たち、素直な気持ち…言えてなかったな…」
「うん」
「これからは、何でも話そう?隠したりせずに」
「うん」
ハルくんが差し出してくれた手を、
私は握る。
ーーー良かった、私の気持ち…伝えられた。
ーーーーなんだろう、それなのに胸の奥になにか残っている感じは…。