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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
89/283

勝利の女神 ~春目線~

「まさか、優勝するとはなー」

選手用の控え室で、着替えながら寛人が笑顔で言う。


「これは、もしかしたら全国行けるんじゃね?」

「でも、相田ちゃんが居たからってのはでかいな…」

「そうそう、相田ちゃんに良いとこ見せたいって、いつもより張り切っちまった!」

ーーーー先輩たち、茗子の呼び方変わってるし。


今日の試合が終わり、

西高バスケ部の皆が優勝に喜びながら雑談している。


「な、春もそう思うよな?」

同じスタメンの先輩が笑顔で尋ねてくる。


「そうかもしれないですね」

俺も言葉を合わせる。


「しっかし、あの嘉津(・・)が相田ちゃん連れてくるなんてなー、びっくりしたわ」

「あぁ、本当、今まで誰もマネージャーとらなかった嘉津が…」


俺は先輩達の会話には入らず、着替える。




ーーーあの日。

練習の後、嘉津先輩に呼ばれた日のことを思い出す。


「昨日見学に来てた、一年の女子の…相田は、お前の彼女なのか?」

「はい」

俺が即答すると、嘉津先輩がため息をつく。

「あいつはダメだ。」

その言葉にカチンと来る。

「なんで先輩が決めつけるんですか?」

「バスケ部のマネージャーをしたいんじゃない、お前がいるから、それだけだろ?」

「………」

何も言えなかった。

「そんなやつ、部員全員のサポートができるとは思えん」

「……じゃあ、チャンスください」

「チャンス?」

「次の試合、茗子が応援に来て、勝てたら、文句ないですよね?」

「なんで、そうなるんだよ」

「茗子が居れば、勝てるからですよ」

俺は断言した。

茗子が見ていてくれたら、俺は絶対に負けない。




ーーー今日、それを証明した。


着替え終えて、帰ろうと会場に戻ると、

嘉津先輩について、茗子が会場の片付けを手伝っていた。


そんな茗子を、他の高校のバスケ部のやつらが、

見ていることに気付く。


「西高のマネージャー、やたら可愛いな!!」

「今まで女子マネージャー居なかったのに、急にあんな可愛い子が…」

「俺、今度から試合の楽しみ増えたわー」


ーーー嫉妬、本当きりがないな。

こんな他校のやつらに見られただけでこんなにイラつくなんて…。



茗子はそんなことを言われてるとも知らずに、

嘉津先輩の指示で、一生懸命片付けを頑張っていた。



「はーるーくんっ!お疲れさま!!」

「今日もかっこよかったよー」

「優勝、おめでとうー」

いつも試合を見に来るクラスの女子三人が俺の前に現れた。


「あ、ありがとう…」

ーーー本当はもう、来ないで欲しいけど。


やっぱりハッキリと言うことができない。



しばらくして、

片付けを終えて嘉津先輩が集合をかける。



俺は女子たちから逃げる口実ができて、

ホッとする。


「今日は優勝おめでとう。

皆、いつもより自信持ってプレー出来てたな。

日頃の練習の成果…と言いたいが、どうやらそれだけじゃないようだ…」

苦々しい顔をして、嘉津先輩が言う。

「ーーー相田を、これからバスケ部のマネージャーにする」

「「え!!」」

嘉津先輩の言葉に、全員が驚いた。

隣にいた茗子本人も、驚いて固まったままだ。


「相田、頼めるか?」

「え、でも私は料理部で…」

「料理部長には俺から話をつける」

「え…嘉津先輩が?」

茗子がキョトンとして嘉津先輩を見ている。


「茗子ちゃん、嘉津先輩、うちの部長だからね…」

こそっと寛人が説明すると、

「えっ」

茗子がまた驚いた。


「知らなかったのかよ…」

嘉津先輩が呆れた顔で言う。

「相田、これから覚えること山程あるからな。」

「はい、よろしくお願いします」

茗子が慌てて頭を下げると、

皆から拍手が起こった。



俺はその時、気づけなかった。


俺の背後にいた、女子三人が茗子をどんな顔で見ていたのかーーー。





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