クラス会のあと
クラス会が終わったのは夕方の6時過ぎだった。
カラオケ店から皆が出て、解散となり、
それぞれ仲の良い友達とバラバラになる。
菜奈は、これから甚と会うというので、
私は一人家に向かって歩き出した。
色々つまんだりしたから、
お腹すいてないけど、
お母さんきっと夕御飯用意してるよね…。
家に電話すると、
お母さんに「今から帰るよ」と伝える。
「待ってるわ、気を付けてね」
電話越しにお母さんが言う。
電話を切って、また歩き出す。
すると、今度は着信があった。
「はい?」
「茗子、今どこ?」
ーーーーハルくん!!
お母さんだと思い込んでいたので、
着信画面を見ずに出ていた私は、
驚いて息をのむ。
「…今、帰ってるところだよ」
「どの辺り?」
「えっと…駅前から少し歩いた、○×ショップの近く…」
驚きながら、私が辺りを見回して言うと、
「ちょっと、そこにいて」
「え?」
そこで電話が切れた。
「茗子!」
それから5分後…、ハルくんが走ってきた。
「どうしたの?ハルくん」
私は急に会えて、またドキドキし始める。
「ーーー実はさ、ホワイトデーのプレゼント…今日一緒に買いに行こうと思ってたんだ。」
「え?」
もしかして、公園で言おうとしてたことって…。
「ーーークラス会のこと、すっかり忘れてて…。卒業式の後は、クラス会が恒例なのにな。ーーー俺、自分のことしか考えてなかった…」
勝手だよな、とハルくんが照れたように言う。
「ハルくん…」
「で、結局一人で街をブラついてたんだ。」
「そっか…」
「ちょうど会えて良かった。はい、これ」
立ち止まると、
私に可愛いリボンがかかった小箱を手渡す。
「これ…」
「開けてみて」
ドキドキしながら、リボンをほどき、箱を開ける。
ーーーわぁ…かわいい…。
自然と笑みがこぼれる。
小さなハートのついた、シンプルなネックレスだった。
「気に入ってくれた?」
「うんっ、すっごく可愛い!!」
「良かった…」
私が力強く言うと、
ホッとしたように、ハルくんが笑った。
ーーーー嬉しすぎる…。
「つけてみる?」
そう言って、ハルくんがネックレスを手にすると、
私の後ろに立つ。
ハルくんが近くて、ドキドキ心臓がうるさい。
「髪、あげて?」
長い髪を片手で右に寄せる。
「っつ…」
首にヒヤリと金属の冷たさが伝わる。
「はい、できたよ」
「あ、ありがと」
「うん、かわいい」
満足そうに笑うハルくんの顔が、
かっこよくて直視できない。
「き、今日寒いね…」
話をそらすと、ハルくんが手を差し出した。
「そうだね」
「あ…」
話しながら自然に私の手を繋ぐ。
ーーーーうわ…鎮まれ心臓……。
「これで、寒くないかな?」
覗きこむハルくんの顔が近くて、
私はドキドキが止まらない。
ーーーードキドキしながら、ハルくんと帰る道。
ーーーこうして、
私の中学の最後の日は、
思いがけず、忘れられない、最高の日になった。