“友達”~航目線~
「茗子…行っちゃったね」
菜奈ちゃんが呆気に取られたまま言う。
「ついに、自分の片想いにケリつけるんだな…」
甚は、しみじみと言う。
そんな二人と向かい合っていた俺は…、
ただ、何も言えずに紅茶を飲んでいた。
――――あんな、イキイキした顔の茗子ちゃん、
初めて見たかも。
眩しいくらいにキラキラして、
あんな可愛い子に告白なんてされて、
断るやつなんかいるかよっ!
ドンッと思わずテーブルを叩くと、
我に返る。
「あ、ごめん…」
「航さぁ、お前まだ茗子のこと、引きずってるのかよー…。次の恋を探せって、お前ならいくらでも見つかるから!!」
甚がため息をつきながら言う。
―――そんなこと、分かってる。
俺だって次の恋にいきたいと思ってるんだ…。
俺が黙っていると、
「仲西くん、役に立てなくてごめんね…。」
菜奈ちゃんがすまなそうに言う。
―――菜奈ちゃんが謝ることなんてないんだ。
――――文化祭の時に、
春先輩に言われた時のことを思い出してしまう。
『花火大会の“友達”?だろ?』
あいつは、“友達”“友達”と強調した。
―――まるで、そうじゃなければ許さないとでも言いたげに。
『二度と、泣かせたりしないでね。俺の大事な妹なんだから』
顔は笑っていたけど、怒りを感じさせる声色で、
何も言い返せなかった。
あいつは茗子ちゃんのことを、“妹”だと言った。
でも、
“大事な俺の人”だ、と
俺にはそう聞こえて、
あいつの本当は笑っていない目にとらわれて、
俺は敵わないと思ってしまったんだ。
―――明日か…。
“友達”なら、こんなとき、
上手くいくと良いと、
願うんだろうなー―――。
もし、上手くいかなかったときは……。