試験
明日はいよいよ、西高の試験日。
私は早目に勉強を切り上げて、
ベッドに入る。
いつものように寝る前に、
オフにしていた携帯電話の電源を入れ、
受信確認する。
と、ピロンと着信が鳴った。
驚いて、携帯電話を見ると、
ハルくんからメールが届いた。
『明日、応援してる!』
――――そのことばに、うれしくて胸がいっぱいになる。
『ありがとう。頑張ります!!』
私はそう返して、眠りについた。
翌朝、いつもより、頭が冴えてる気がした。
「頑張ってね」
お母さんに応援されて、家を出る。
試験会場の西高に着くと、
すでに菜奈がいた。
菜奈は、緊張して珍しく表情が硬く、
喋らなかった。
「菜奈、あれだけ勉強してきたんだから、自信持っていこうよ」
私が軽く背中をポンと叩くと、
菜奈はなんとか笑って、席に着いた。
そして試験官が教室に入ってきて、試験が始まる。
―――試験内容は、特に迷う問題もなく、
全てが終了した。
私はやり終えてホッと息をつくと、
菜奈の席に迎えに行く。
「菜奈、帰ろう…」
菜奈は机に突っ伏したまま、動かない。
私は心配になり、もう一度声をかけようとすると、
「茗子…本当にありがとう…」
菜奈は顔を上げて、笑った。
「茗子に教えて貰ったところ、ほとんどだったよね?私…あんなに解けるなんて思わなかったよ~」
菜奈は笑いながら、
めいこーと菜奈が私にしがみついて泣く。
「ちょっと…苦しいよ…」
私は照れながらそう言ったけど、
嬉しい気持ちでいっぱいになる。
―――菜奈、頑張ってたもんね!!
一緒に西高行こうね。
合格発表は、3週間後だということだった。
合格者には中学に連絡が行くらしい。
菜奈と帰りにケーキ屋さんでも行こうと、
話ながら西高の正門を出ると、
甚と航くんが立っていた。
「甚…。」
菜奈が甚の元へ駆け寄ると、
嬉しそうに今日の報告をする。
私もそんな二人を見ていると、
「おつかれ」
と、航くんが私に話しかける。
「うん、ありがとう。」
私が笑顔で答えると航くんが目をそらして言った。
「今から、ケーキ屋でも寄っていかない?前祝いに…」
「え?」
私は驚いて聞き返すと、
菜奈がこちらを向いて言う。
「行こうってちょうど茗子と話してたとこなの!みんなで行こうよ!」
その一声で、
久しぶりのメンバー四人で歩いてケーキ屋に向かう。
「どうだったの、そっちは」
「あぁ~キツかったわ、筋トレが半端なくて…」
前を歩く、菜奈と甚の会話が聞こえてくる。
「今日、何かあったの?」
私が隣を歩く航くんに聞くと、
「ちょうど今日から、先輩たちとサッカー部の練習出るように言われててさ。俺ら、サッカー部の推薦で合格してるから…」
「あ、それで…」
それで、ジャージ姿なのか。
「ちょうど終わる時間が試験が終わる時間とたいして変わらないから、待ってたんだ…」
「そっか」
私がそう言うと、なぜか慌てたように、
甚が菜奈ちゃんをって意味だから、と航くんが付け足す。
「?うん」
―――分かってるけど。
航くんが焦って言う意味が分からず首をかしげる。
「カンパーイ!!お疲れ様ー!」
ケーキ屋さんに入り、みんなで紅茶で乾杯する。
「お、菜奈のチョコケーキ、ひとくちチョーダイ」
甚が菜奈のケーキに手を出す。
「ちょっとー」
菜奈が怒る素振りをすると、
「いいじゃん、明日バレンタインだろ~」
と甚が言う。
その言葉に、
「「あっ!」」
私と菜奈が同時に声を上げる。
「ごめん、忘れてた…」
菜奈が甚に謝る。
「良いって、受験で頭イッパイだったの、分かってるし、これで貰ったことにするから!!」
甚が笑って言う。
「ちゃんと明日作って渡すよ~」
「マジ?楽しみにしてる!」
菜奈と甚の会話を聞き流しながら、
私は考えていた。
――――本当受験のことしか考えてなくて…
すっかり忘れてた…。
でも………。
「私…明日ハルくんにチョコ渡して、気持ち伝えるよ…」
明日しか、ない。
合格通知なんて、待ってられないよ…。
私はグッと手を握りしめた。
帰ったら、
早速チョコレートのお菓子作りしなくちゃ。
菜奈と甚が、
一瞬固まっていたけど、笑顔で応援してくれた。
航くんは、何も言わずに紅茶を飲んでいた。
「ごめん、私、先帰るね!!」
それだけ言うと、私は急いで店を出て、
前を向いて走り出した。
明日、想いを伝えよう。
―――ずっと言えなかった、私の気持ちを。




