春の気持ち~春目線~
「え…?」
電話の声が聞こえなかった訳じゃない。
ただ、信じられなくて…俺はつい聞き返してしまった。
『私…ハルくんが好き。だから…アメリカから帰ってきたらーーー私と結婚して欲しいの…。』
「それは…すぐには結婚出来ないってこと?」
―――来年からアメリカ行きが決まっているし、
そこから二年はアメリカで仕事することになっている。
茗子とともにアメリカで暮らしたいと願っていた俺は、
つい口調がきつくなる。
『離れてても大丈夫なこと…ちゃんと証明したい…』
「何でそんな事…」
『………ハルくんは高校の時、私と別れて、私が…他の人と付き合えば良いと望んでたの?』
「え…?」
突然、茗子が訳の分からない質問をする。
―――そんな事、思うわけないじゃないか…。
『サクちゃんに聞いたの…』
―――あいつ、何でそんなことを…。
「茗子…何か誤解してる?
俺は…他の誰かに盗られるのが嫌で…だから咲に託していったんだよ…茗子を俺の知らないヤツに渡さないように―――」
『―――え…』
「でも、まさか咲と別れるとも思ってなかったし、卒業前には仲西に奪われるとも思ってなかった。」
――――全ては、俺の誤算。
茗子の気持ちが仲西に向くのが、あんなに早いなんて。
「…ただ、俺が望んでいたことは…、茗子が笑顔でいられることだから。」
―――でも、俺さえ我慢していれば…仲西が茗子を守って…茗子は笑顔でいられる。
先に、手を離した俺が、何も口出しできるわけない。
『……ハルくん』
「まぁ…正直に言うと、俺の知らないヤツにとられるよりは、咲とか仲西とか…まだ信頼できるヤツだったら安心だなと思ってた」
――――中島とか…牧野とかよりは…よっぽどマシだ。
『私…ハルくんが好きだよ?ずっと変わらないよ』
日本にいる茗子の声が、アメリカにいる俺の耳元で甘く響く。
「早く…会いたい」
会って抱き締めたい。
茗子…好きだ。もう誰にも渡さないから。