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電話の向こうに
『茗子?…ちょっと聞こえてる?』
「あ、ごめん…」
耳から聞こえていたはずの声に、今やっと気がついて聞き返す。
『だからね、私もお父さんも、今年の夏には日本に帰るから!』
「え!?」
『やっと仕事が落ち着いてねー!もう歳だし、日本でのんびり老後を過ごすわ』
「でも…」
私は…―――。
『聞いたわよ、春くんから。茗子、春くんと婚約したんだって?なんでそんな大事な事も連絡して来ないのよー?』
「ハルくんに…会ったの?」
『今一緒よ?替わろうか?』
「う、ううん、大丈夫。」
そんないきなり…心の準備もなく話なんて出来ない…。
『茗子?ごめんな、おばさん達に勝手に話して』
――――ハルくん!?
お母さん…代わらなくて良いって言ったのに…。
『でも、ちゃんと御両親に話しておきたくて…』
「ハルくんは…私の事好きなんだよね?」
『―――当たり前だろ…』
少し恥ずかしそうに、ハルくんが返事をする。
――――信じても、いいんだよね…?
「私…ハルくんと―――」