菜奈と甚の家
「ねぇ、茗子………私は…どこから突っ込めばいい?」
菜奈が呆気にとられたまま、言う。
年末年始の休みに、
生まれたばかりの甚と菜奈の赤ちゃんに会いに地元に帰っていた私は菜奈に近況の報告をした。
ーーーー結婚式あと、
航にやり直そうとプロポーズされたこと、
彼氏とは別れたこと、
会社にハルくんが中途で入社してきたこと、
本当はアメリカのメーカー会社からうちの会社を買収しに極秘で来ていたこと、
ハルくんにプロポーズされたこと…。
「航がプロポーズしたことは、私も甚も知ってた。断られたって落ち込んでたし。ーーーでもまさか…東京で春先輩と再会してたとはね…。しかも…プロポーズまで…」
「うん…航には申し訳ないけど…。私まだまだ地元に戻るつもりはなくて…」
「で、春先輩のプロポーズは受けたの?」
「え…」
「だって、指輪…。それ、婚約指輪ってやつでしょ?」
良いなぁと菜奈が私の左手を手に取るとまじまじと眺める。
「私、婚約指輪とか無かったからさぁ、ちょっと羨ましいわ!」
菜奈が茶目っ気たっぷりに言う。
「この子がお腹にいるって分かって、バタバタして婚約とかすっ飛ばして結婚しちゃったからね」
「良いじゃん、甚も菜奈も幸せそうで。幸せなのが、一番だし」
すやすやと眠っているのえるちゃんを見ながら、私はそっと言う。
「茗子…。」
菜奈が私を見て言う。
「ーーー何が、引っ掛かってるの?茗子が抱えている問題は、何?」
ーーーーハルくんにプロポーズされて、
それなのに、菜奈みたいに幸せな気持ちになれないのはなぜ?
引っ掛かってるところは何処なの?
私が抱えている問題は…なに?
「自分でも…分からない…。」
「茗子…。」
「ちょっと茗子、来てるなら連絡してよねー」
「久しぶりー元気だった?」
突然彩と愛梨が、菜奈のアパートに入ってきて賑やかになる。
のえるちゃんも、二人の声で起きてしまい、泣き出して、
菜奈が抱っこしてあやす。
「あ、ごめんのえるちゃん…」
彩が泣いているのえるちゃんに小声で謝る。
二人の元気な姿を見たら、懐かしくて少しだけ元気になれた。