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いっこの差  作者: 夢呂
【第四章】
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過去の夢、未来の話

『愛してるって…言ってくれたのに』

ハルくんに怒りをぶつけるように口から言葉が出てしまう。


ーーーーこれは確か…ハルくんがアメリカに行くって聞かされてた時の記憶…?



『茗子、どうしたんだよ、急に…』

ハルくんが困惑する。


『急じゃない…急じゃなくて…』

気持ちがこみ上げてきて、涙が溢れてくる…。


『茗子、落ち着いて?』

私が勢いで、告白しようとすると、私の口にハルくんの指先が優しく触れる。


『駄目だよ…俺達は上手くいかない…』


―――――告白させても、もらえなかった。


『好きなだけじゃ、上手くいかないんだ…』

『ハルくん…』


『もし、何年か後に会って、お互いもっと大人になって…その時に恋におちたら、きっと上手くいくよ俺達は…』


『何それ…』

納得いかなくて、ハルくんを睨む。


『茗子…ごめん…』

私より辛そうな表情(かお)で、ハルくんが言った。



ーーー過去の私とハルくんを、第三者の目線から見ている自分。


あの時も…、本当はハルくん、私を好きでいてくれたの?

好きな人に、わざとそんな事言うのは…どれだけ辛かった?



卒業式の日、

『寂しいとか、行かないでとか言ってくれないんだ?』

ハルくんが冗談半分に言ったことば。


私は…航が好きになってたから、ハルくんにお別れできた。



ーーーーハルくんが、私と別れていなかったら…、

私は航と付き合ってなかった…。


ーーーーきっとハルくんと別れなかったら…、

会いたくて寂しくて…いつまでも泣いて過ごしたと思う。


ーーーハルくんなりの…私への思いやり。


ずっと私のことを考えてくれてた。


別れてからも…変わらずに優しくて…、

何かあれば、心配してくれて、護ってくれて…。


ーーーー私は…、

フラれたと思っていたから、優しくされるのがつらかった。


ーーーーそれも全部…本当は私を好きでいてくれたからだった。





『俺…あと二年ぐらいしたら、またアメリカに戻らなきゃならないんだ…』

ーーーー突然、夢の場面が変わり、つい最近のハルくんが告げる。


『え?』


『今の会社を買収したら、アメリカに戻る。』


『待って…ハルくん』

ーーーー行かないで…、離れたくない…。

やっとこうして、また想いが通じたのに…。



『ーーー茗子、今度は…一緒に行って欲しい』

『え…』


『結婚しよう?』




ーーーー驚いてガバッと起きる。

寝汗が凄くて、シーツが濡れている。


ーーーーそんな、怖い夢じゃなかったはずなのに…。



何だろう…

すごく後味の悪い気持ちが心に残っている気がして…。



ーーーどこまでが夢…どこまでが、現実だっけ?


過去(むかし)の夢の内容は…どこまでが真実(ほんとう)


現在(いま)の夢の内容は…本当だよね…。


左手の薬指に、つけられていた指輪を見ながら、

私は複雑な想いでベッドから起きた。



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