気持ちを整理する
午後の仕事中に、パソコンの手を止めて考えていた。
―――ハルくん、…私の初恋の人。
幼馴染みで、ずっと好きで…。
好きだったのに、上手くいかなくて…。
――――忘れたくて…忘れられなくて…。
―――でも、ハルくんが居なくなっても、
航が居てくれたから、寂しくなかった。
ハルくんが居なくても、幸せだった。
でも、
航とお互いすれ違いで、上手くいかなくなって別れて…。
ついこの間、再会して…プロポーズされて…。
――――航が好きだった。本気で好きだったのに…。
プロポーズに、「イエス」と言えなかった。
嬉しいはずなのに、したいと思えなかった。
――――仕事を辞めなきゃいけないから?
――――地元が物足りなくなったから?
――――航への気持ちが、ただの“情”になってたから?
『茗子、可愛いな』
ハルくんの言葉が不意に思い出される。
ドキドキと鼓動が音をたてる。
――――ハルくんが、戻ってきた、から?
「相田さん、三番に経営企画部の田中部長から電話です」
美樹の声で我に返る…。
――――田中部長から・・・?出たくない…。
「―――相田です…」
震える声で私は受話器に話し掛ける。
『あぁ、相田さん?ちょっと今時間あるかな?』
―――どうして平然と電話なんてして来れるの?
「――――どういったご用件でしょうか?」
私があくまで仕事上のトーンで話す。
『うん、直接話したいから、小会議室Aに来てくれる?』
――――嫌だ…怖い…行きたくない…。
思い出したくない…。