久しぶりの再会
「じゃあ、気を付けて帰ってね…」
ホテルの前で航に言いながら、私は背を向け歩き出す。
「茗子、こないだの話だけど…俺本気だからっ」
航の声が心に響く。
―――――こないだの話…それはつまり…。
「考えて欲しい…俺との結婚…」
――――結婚しようって言った事だよね…。
「でかい声で何叫んでるのかと思えば…仲西くんじゃないか…」
気づけば、うつ向いていた私の目の前に人影があった。
「茗子に何話してたの?」
素早く私の腰を抱き寄せて…ハルくんがにこやかに言う。
あまりに素早くて…、抵抗する隙もなかった。
航は、驚きすぎて、絶句したままだ。
「離して!ハルくんこそ、ここで何してるの?」
「何って…うちのマンションあそこだから…」
ハルくんが近くにあった高層マンションを指差す。
――――そうなんだ…、すごい…。
じゃなくて…!
「私は帰るから!」
ハルくんも航も、私のこと構わないで!
私はハルくんの腕を手で外して、帰り道を急ぐ。
―――びっくりした…。
航とハルくんが…、まさか東京で再会するなんて…。
ますます気持ちが落ち着かないよ…っ。
早足で家へと向かいながら、
私は混乱して、精神的にも弱っていて…、
現実から逃げ出したくなった。
明日…会社休みなら良いのに…。
月曜日からそんなことを願ってしまった。