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いっこの差  作者: 夢呂
【第四章】
260/283

早苗の気持ち

「メイ、どうしたの?」


―――早苗が私の顔を覗き込む。


昼休み、ボーッと一人で屋上で休憩していた私は、

「わっ…」

あまりに突然で、驚いてしまった。


『早苗の気持ち、考えたことないの?』

―――果歩に言われてこと…まだピンと来ない…。

本当に冬吾が好きだったの?



「外出先から帰ってきてから、なんか上の空じゃない?」

早苗が言う。


「そうかな…?」

私が曖昧に答えると、


「―――冬吾と…別れたって本当なの?」

隣に座りながら、早苗が静かに…私を見ずに問いかける。


「うん…」


――――“ごめん”…と言うべきなのか、いや、それは不自然だよね?




「そっか…じゃあ私も、別れようかな」

早苗が前を向いて言う。

「え?」


「私の彼…既婚者だから…」

「えぇっ?」

――――それは…つまり…不倫…?


「割り切って来たけど、そろそろ限界だったし…」

早苗が言う。


「―――早苗…、冬吾が好きだったの?」

私が恐る恐る尋ねる。

「―――え?」

早苗が面食らう。


「だとしたら、私…本当に早苗のこと傷付けてたよね?」

「――()めてよ」

早苗が険しい顔で言う。


「私が冬吾を好きだったら、メイは冬吾のことフッてたの?―――まさか、私が冬吾を好きだから別れたの?」


「違うよ…、私が冬吾とは友達以上に思えなくて…」

「―――私、行くね」

聞きたくないとでもいうように、早苗は屋上を出ていく。



――――私は…早苗を傷付けてたんだね…。






結局この日、一度も早苗と言葉を交わすことは無かった。



「はぁ…」


「どうかしたんですか?」

澤野さんが聞いてくる。


「え?」

「さっきからため息連発してますよね?」


「――嘘…」

「本当ですよ、気付いてなかったんですか?」

苦笑いしながら言われる。


―――無意識にため息ついてた…?


「あ、そうだ、このシステムの使い方、確認しておきたいんですけど、見てもらえます?」

「はい?」

澤野さんのデスクにイスをスライドさせて、画面に顔を近づける。


「どこー―――」

私が聞こうとした瞬間、ほんの一瞬…かすめるように頬にキスされた。


バッと片頬を両手で押さえる。


「なっ」

――――何すんの、業務中に!!!


「ここなんですけど…」

平然と、ハルくんが話し出す。


――――なんなの、もう…っ。



「元気でた?」

ハルくんが私の顔に顔を近づけて、パソコン画面を見ながら微笑んでこそっと言う。


「出るわけないでしょ!!」


「ちょっと相田さん、何叫んでるの?」

背中合わせで後ろに座っていたお局様の坂上さんに注意される。


「すみません…」

私は椅子から立ち上がって、うつ向いて謝罪する。

ハルくんは、そんな私の姿を笑いをこらえながら見上げる。



――――こんなの…私の知ってるハルくんじゃない!


ドキドキしている心臓を押さえて、私はハルくんを睨み付けた。













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