給湯室での話
「ちょっとメイ、どういうことっ?」
給湯室で、お茶を淹れていると、営業部の果歩が、すごい剣幕でやって来た。
「あ、今私お茶淹れてたんだけど、果歩も要る?」
私が急須を持ちながら言うと、
「そんなことより、冬吾と別れたって?なんで?」
真顔で果歩が、問い詰める。
「――なんて説明したら良いのか…」
「メイ、早苗の気持ち、考えたことないの?」
「え?」
「早苗はずっと冬吾が好きだったんだよ?
二週間で別れるぐらいなら、最初から付き合わなきゃ良かったのに…。」
ズキッと胸が痛む。
早苗がー――冬吾を?
そんな…だって、早苗には彼氏が要るって聞いてたのに…。
「給湯室で、何の話ですかー?」
そこに、美樹がやって来た。
「何でもない…」
果歩が言うと、
「あ、私、金曜の飲み会で澤野さんの情報ゲットしたんですけど…」
美樹が私と果歩の間に入って話し出す。
「澤野さん、彼女アリでしたぁ。残念だけど、あんなイケメンが彼女いないはずないですよねー」
――――え?
「え、マジで?」
美樹の言葉に、果歩が、がっかりした声をあげる。
「本人に聞いたんですから、本当です!」
美樹が言う。
「まぁ、それ聞いてテンション下がりましたけどね…まぁ目の保養用にします、彼女と別れるまで」
「……別れるって話、今タブーだから」
美樹の言葉に、果歩がイラつきながら言うと、給湯室を出ていった。
「果歩さん…彼と上手くいってないんですかね…」
何も知らない美樹は、突然そんな事を言われて、ぽかーんと口を開けて見送る。
「そんな事ないと思うよ?」
私も、自分の分のお茶をマイマグカップに淹れて給湯室を出る。
――――彼女いるんじゃん。…嘘つき。
ハルくんの、嘘つき。
私のこと、好きとか言ったくせに…。