ずるい告白
『もし、何年か後に会って、お互いもっと大人になって…その時に恋におちたら、きっと上手くいくよ俺達は…』
高校生の時、私をフッたときの、ハルくんの言葉。
今、思い出して…どうするの?
「茗子、会えて良かった」
――――“逢いたかった”って 聞こえる。
ハルくんに、呼び出されてお洒落なカフェに入る。
「ハルくん、さっきのは何?冗談だよね?」
ドキドキしながら、私が尋ねる。
「本気だよ、俺はずっと茗子が好きだから」
ストレートに言われて、私が照れる。
「茗子は、今の彼と…長いの?」
ハルくんが落ち着いた雰囲気で話し出す。
「仲西と、まだ付き合ってるかと思った」
「――――ハルくんには関係ないで…」
「関係ある、茗子が好きだから。…教えて?」
「―――その前に、ハルくんから教えて?」
「ん?」
「どうして今更私の前に現れて…そんなこと言うの?」
私が問いかけると、ハルくんは少し黙った。
コーヒーをゆっくり口に運ぶ。
一口飲むと、ハルくんが話し出した。
「あの頃の俺は、ガキだった。
茗子が好きすぎて…精神状態をもうまく制御出来なくて…傷付けたくないのに泣かせてばかりで。
あぁ、今の俺じゃ駄目だなと思った。」
――――ハルくん…。
「―――俺のひい祖父さんはさ…、アメリカ人なんだ。
俺はずっと英語に興味があったし、アメリカで生活したい、自分のことを試したいと思ってた。」
ハルくんから飛び出す初めての話に、驚きながらも…、
聞き逃さないように、黙って聞いていた。
「茗子と比嘉先輩のこと、俺が勝手に誤解してケンカ別れっぽくなったけど…。
あの頃、そのまま…別れたまま卒業しようって決めてたんだ。
遠距離恋愛をして、茗子に寂しくて辛い思いさせたくなかったし、
日本に居ない俺が、茗子を束縛するのは…違うと思ったから。」
――――ハルくん…。
「でも、アメリカに行っても、茗子のことは気になってたよ。
たまにおじさんやおばさんにも会ってたしね。」
―――え、うちの両親とアメリカで会ってたんだ…。
お母さん、そんなこと一言も言ってなかったのに…。
「東大現役合格したって、おばさん自慢してた」
ハルくんが笑顔で話す。
「茗子、頑張ったな!」
――――ハルくん。
「はい、じゃあ次は茗子の番。」
ハルくんが私をじっと見つめて言う。
「今の彼とは…」
「昨日別れた。」
私がハルくんの言葉が言い終わらないうちに答える。
「えっ!?」
ハルくんが驚いた声をあげる。
「やっぱり…違うと思ったから。」
私がうつ向いて言うと、
「仲西とは?いつ別れた?」
「成人式の日。―――お互い好きだったけど、すれ違ってしまって」
「そっか…」
「でも、……結婚しようって言われた。先週。」
私が菜奈の結婚式で再会したことを話した。
「――――それで、茗子はなんて返事した?」
暫く黙っていたハルくんが、私をまっすぐ見つめて聞く。
「出来ないって答えた。―――今はまだ、東京で仕事頑張ってみたいし…。地元には戻らないかな…。」
私がそう答えるとハルくんがホッと息を吐く。
「茗子、俺とのこと…真剣に考えてくれる?」
「ハルくん…私、戻れないと思う。」
「あの頃の気持ち、今は持ち合わせていないの。」
「そっか…じゃあ仕方ないね…」
ハルくんが微笑みながら言う。
――――あれ?なんでそんな余裕な表情なの?
「そしたら俺の片想いで居るから」