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いっこの差  作者: 夢呂
【第四章】
250/283

今日は定時

『今日、メイの家行ってもいい?』


定時が近づいていたところに、パソコンのチャットが届く。



私はハルくんにパソコンを使って仕事を教えていたので、

慌ててチャットを画面から消した。



「今の、彼氏?」

ハルくんがパソコンを見たまま小さな声で…尋ねる。


「……うん」

――――見られた…見られた…

恥ずかしくて、うつ向いて頷く。


「へぇーそうなんだ、社内恋愛だ?」

「――澤野さんには関係ないですから」

私は、パソコンを見ながら、頑張って他人行儀に応える。


「それより、このシステムの使い方ですが…」




――――暫くして、定時になり、だんだんと人が減っていく。



「では、今日はここまでで。明日は、他の業務の説明もしていきますね」

私が自分のノートパソコンを閉じようとする。


「ありがとうございました」

ハルくんがにこやかに言う。


「ところで、さっきの…返信しなくて大丈夫ですか?」

ハルくんが自分のデスクに戻ると、

私に、わざとらしくそんなことを聞いてくる。


「――――お疲れさまでした」

私は、質問には答えず、席を立つ。



――――ハルくんには、関係ないでしょ?

なんでイチイチ聞いてくるの…?

私は、構わないで欲しいのに…。





「メイ」

私は、隣のフロアーの営業部に顔を出す。

冬吾がすぐに私に気づいて、席を立つ。


「冬吾、さっきはごめんね、返せなくて。――――今日は、残業じゃないの?」


「うん、もうすぐ終わる。ちょっと待ってて」

冬吾が笑顔で言う。


「うん」

私も、笑顔で答える。


総務部のロッカーに行き、

荷物を持って一階のエントランスで、冬吾を待っていた。




「澤野さん、これから何か用事あります?」

「みんなで、飲みに…とか行きません?」

エレベーターが一階に着く音がして、

何となく目を向けると、

女子社員 に囲まれて、ハルくんがエレベーターから出てきた。



――――うわ…。


気まずいし、なんだか見たくなくて顔を背ける。


「あ、すみません…今日は先約があって…」

ハルくんの爽やかな声が聞こえてくる。


――――嘘だ…。ハルくんの声色ですぐわかる。

誰にも興味がないときの、声。


私が携帯電話をいじりながら、そんなことを思っていると、

「相田さんと、…ね?」


私の目の前でハルくんの足音が止まり、

いきなり、腕を掴まれ顔を覗き込まれる。



「ちょ………っ」

「お願い、あわせて」


私が振りほどく前に、ハルくんが早口で囁く。


―――私は、逃げるための手段(どうぐ)ですか?






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