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いっこの差  作者: 夢呂
【第四章】
246/283

帰り道

「今日は本当におめでとう、二人とも」

三次会に向かい、ようやくゆっくり二人と話すことができた。


「ありがとう、茗子」

妊婦の菜奈が幸せそうに笑う。


「また、うちにも遊びに来て」

甚も笑顔で言う。


「うん」

私も笑顔になって頷く。





酔っぱらいの彩と愛梨の二人をタクシーに乗せて、

私も帰ろうとしたとき、

「茗子、もう一軒行かない?」

航に呼び止められる。


「いや、私飲みすぎてるし…」

「今日は実家に泊まるんだよね?ちゃんと送っていくから」


「でも…明日の朝には東京に戻らないと―――」

「…じゃあ、家まで送るから一緒に帰ろう」


――――航。


私は、航に言われて断れきれず、一緒に帰る。


「今…どうしてるの?」

航が前を向いたまま、歩きながら尋ねる。

「仕事?―――それとも…」

あまりに抽象的な聞き方に、私が聞き返す。

「付き合ってる人、いる?」

航が質問をし直す。


「うん…いる」

私が答えると、航がうつ向いた。

なんだか…ガッカリしてるように見える。


「そいつ、会社の人…とか?」

「うん…」

「そっか…」

航くんが、つらそうに口を開く。


「俺は…別れたことずっと後悔してた」



「今更…」

「そうだよ、今更な話だよな。でも…俺は別に茗子が嫌いになった訳じゃなかったからー―――」

「そうだよ、私だって…。嫌いになった訳じゃなかったよ。でも…もう遅いよー――」


「茗子…」

「やり直せない、もう。航は地元(ここ)で、私は東京で…仕事だってあるんだからー―ー」

私が言うと、航が私の肩を掴む。


「仕事辞めて、地元帰って来ればいい。――結婚しよう?」

航が真剣な表情で私に言う。


私は…航の手に自分の手を添えて…肩から退けながら言う。

「―――辞めない…。結婚も、しないよ…」



――――好きだった。嫌いになった訳じゃない。

でも私は、今、航と結婚したいとは、思えない。



「ごめんね…」


私たちは、そこから家の前に着くまで一言も話せなかった。



「じゃあ…元気でね」

私がそう言って、家に入ろうとする。


「茗子…」

航が私を、後ろから抱き締める。


「やめて…?」

小さい声で私が言っても、航が腕を緩めない。


――――こんなの、間違ってる…。



頭では、分かっていたのに…。


私はその日、航と一夜を共にしてしまった…。





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