卒業~春目線~
卒業生代表の挨拶を終えて、卒業式が終わりに近づく。
―――今日俺は、高校を卒業した。
「春先輩…、ずっと前から好きでした!」
「そ、卒業おめでとうございます!」
一年生と二年生の女子が、花束をくれる。
―――こっちは、名前も知らないのに…。
遠くに茗子の姿を見つけた。
俺は、自然と茗子に近付いていく。
「ハルくん…卒業おめでとう」
茗子が花束をくれた。
―――正直、貰えるなんて思っていなかった、話すら…出来ると思っていなかった。
「ありがとう」
嬉しくて、つい笑顔になる。
俺が笑顔になると、茗子はいつも…赤くなる。
でも、今日は…ならなかった。
「アメリカ…頑張ってね」
「寂しいとか、行かないでとか言ってくれないんだ?」
俺が構って欲しくてわざとそんな事を口にすると、
「言っても…ハルくんは行ってたでしょ?」
茗子が微笑む。
―――あぁ、もう…仲西に奪われたんだな…。
茗子の表情で、嫌でも思い知らされた。
俺のことは、もう…なんとも思っていない…。
―――自分が望んだことなのに、苛立ちが消えない。
こうなるように仕向けたのは、俺なのに。
遠距離になって、不安な思いをさせたくない。
俺とだけ付き合って、狭い世界に閉じ込めたくない。
だから、わざと手離した。
今さら、悔やんでも仕方ない…茗子の幸せは壊したくない。
茗子が側にいるのが仲西なら…
まだマシだろ…。
あんなに、一途に想っていたんだから…。
でも、
俺が、日本に戻ってきた時に、茗子とまた出逢えたら…。
その時、俺は今度こそ、逃がさないから―――。
「じゃあな、茗子!幸せに…」
それまで、幸せに過ごしていて…。