告白しあう~愛梨目線~
バレンタインデーの放課後、
私は仁科を呼び出した。
呼び出した時点で気づくでしょ…普通。
ドキドキしながら、人気の無いところまで歩いていき、仁科の前に立つ。
いつも通りに…平常心…平常心。
「あの…鈴木さん?どうかしたんですか?」
仁科が心配そうに尋ねる。
―――こいつ…なんでこんなに鈍いの…?
鈍いというか、自分に自信なさ過ぎて、まさかチョコを貰えるとか…夢にも思ってないんだろうな…。
「はい、これ…あげる」
私がチョコを片手でぶっきらぼうに差し出す。
―――うわ、なんて可愛くない渡し方…これじゃまるで…。
「え!す、すごい嬉しいです!!」
仁科が見せたこと無い笑顔で喜ぶ。
ドキンと心臓が高鳴って…顔の温度が急上昇した。
「義理でも…貰えたの初めてで…。ありがとう、鈴木さん」
―――やっぱり…義理チョコだと思われた。
私のバカ!!
「違う、義理じゃないから!!」
やけくそで叫ぶと私は仁科の前からダッシュで逃げる。
「―――えっ?」
仁科が疑問を抱いている声を出しているのが背中越しに聞こえてきた。
――――義理じゃない、本命だよ。気付いてよ、私の気持ち。
「ちょっと、待って鈴木さん」
いつのまにか追い付かれて腕を捕まれる。
―――私これでも中学は陸上部だよ?足の速さには自信があったのに…追い付かれた?
やっぱり…仁科はスゴい…。
本人は気づいてないだけで…こいつ…勉強も運動も…出来るヤツだ…。
――――そういう魅力にも、
髪で隠している顔が、実は整ってることも、
不器用だけどすごく優しいところも…。
―――私だけが知っていればいい。
「鈴木さん?さっきの…」
仁科の声が真剣だと分かる…。
「好きなの、私」
――――仁科が好き。
私は、仁科の顔を見れず、うつ向いて言う。
「鈴木さん…が?僕を?」
掴まれている腕を離さずに、仁科が驚きながら言う。
「分かってるから、あんたが茗子を好きなこと。ただ、言いたかっただけ。」
私が出来るだけ明るく言って、腕を離して貰おうとする。
「ありがとう…」
仁科がそう言って私の腕を離した。
私は、恐る恐る顔をあげて仁科の顔を見る。
仁科が真っ赤になって、…涙目だった。
「ちょっと…なんで泣いてんの?」
―――そ、そんなに迷惑だった?
私が困惑しながら言うと、
「違…違います、う、嬉しくて…」
涙を拭いながら、仁科が言う。
―――う、嬉しい?それって…えっ?
「僕、鈴木さんが好きでした」
「は?やめてよ、そんな冗談…」
「冗談じゃないです、本気です…」
「なんで…?」
―――信じられなくて、そんな事を聞いてしまう。
「スポーツ大会の時、怪我を心配してくれて…僕なんかのこと心配してくれて…すごく…優しいんだなって気付いたら好きになってたんです」
―――あ…あの時…。
私は、お互いの気持ちが分かり合えて、仁科と微笑み合う。
ただ、仁科も私も…泣き笑いみたいになってたけど。