イベントに参加したい
「やば…今年も来ちゃうね…」
彩が自分の部屋にあるカレンダーを見ながら、呟く。
「何が?」
愛梨が彩に尋ねる。
「バレンタインデーでしょ!もう来週だよ?」
――――久しぶりに彩の家で勉強会という名の、
お泊まり会をした日のこと、
勉強の話題は出ず、やっぱり脱線してしまう。
今回も、彩のそんな一言から、
バレンタインデーの話が始まった。
「彩がなんでそんな焦るの?もしかして、好きな人できたの?」
愛梨が言うと、彩の頬が可愛らしく膨れる。
「好きな人がいないから、焦るんでしょ―?せっかくのイベントにのっかれない自分…虚しいわー」
「彩、それなら私も…」
私が言いかけると、
「「茗子は、黙ってて」」
なぜか彩と愛梨が声を揃えてくる。
――――え、なんで怒ってるの?
「茗子は、航がいるでしょ?」
唖然としている私に、菜奈が耳打ちしてくる。
「へっ?」
――――航くんがなんで出てくるの?
「もういいからさー、早いとこくっついちゃいなよ」
愛梨が痺れを切らすように言う。
「本当、もう見てて歯痒いって言うか…」
彩もなぜかイライラしながら言う。
「好きでしょ?航のこと」
菜奈が二人の言葉に苦笑いしながら言う。
「私が?―――航くんを?」
私は、つい口に出して確認する。
確認しないと、分からない訳じゃないのに。
「告白したら?航に…。」
菜奈の言葉に、彩も愛梨も力強く頷く。
「私が航くんに?
いやいや、それはないでしょ…
こんなハルくんのあとサクちゃんと付き合ったりして…
フラフラしてる私なんて、航くんはきっともう好きでもないだろうし…」
「じゃあ、私が渡しても良いの?―――本命チョコ」
彩が真剣な顔で言う。
「え?」
――――彩、さっき好きな人居ないって言ってたのに?
「…茗子、いま焦ったでしょ?」
彩が私の反応を見ながら堪えきれないというように噴き出す。
「航はきっと、待ってるよ?」
菜奈が微笑んで言う。
――――そう、かな?
「てか、茗子は自分のこと好きじゃなかったら、好きって言わないの?」
彩が今度こそ真顔で言う。
「待ってるだけ?―――咲くんの時みたいに、相手から来るの待ってるの?」
――――確かに…、
ハルくんの時は玉砕覚悟で告白したのに…。
傷付くのが怖くて…そんな気持ち、忘れてた。
「でも…私が航くんに告白したら…」
今までの“友達”が終わってしまうのが、怖い。
このまま、気持ちを仕舞ったまま、仲良くしていた方が傷付かないと思う。
「茗子、せっかくだしイベントしよ?」
「チョコ渡すだけでも…航は喜ぶよ?きっと。」
気付くとうつ向いていた私は、愛梨と菜奈の言葉に顔を上げる。
「茗子があげるなら、私も…あげようかな」
愛梨が決心したように言う。
「仁科に」
――――愛梨……。
「うん」
私は、頭で考えるより前に…そう返事をしていた。