表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
225/283

パーティーの始まりは~航目線~

「今日、茗子の家でクリスマスパーティーだから」

愛梨が、部活終わりに突然告げる。


「なんだよ、それ」

―――反則だろ、そんな嬉しすぎるイベント。


「あれ、航来ないの?じゃあまぁ良いけどさ」

「いや、行かないなんて言ってねーだろ」

愛梨の言葉に、つい焦って言ってしまう。

言ってから…いつもの“イジられ”だと気づく。


「航先輩、私とクリスマス…」

杏奈が話に割り込んでくる。


「杏奈…もう諦めなって」

菜奈が横からなだめるように言う。

「もうさ、杏奈は次の恋探しな?ねっ?」


「嫌です…だって私はまだ航先輩が好きなんです…」

「ごめんな…」


それだけ言って、俺はみんなと歩き出す。

杏奈が一人で泣いているのを、置いて…。



「このあと、すぐ支度して、茗子の家集合ねー。お菓子とか飲み物テキトーに持っていくこと!」

愛梨が言う。

「あとは、パジャマねー」

菜奈が持ち物を付け足す。


「は?パジャマ?」

甚が驚いて菜奈に聞き返す。

「今日は、皆で茗子の家お泊まり!!」

菜奈が楽しそうに言って、解散した。


――――いやいやいや、ダメだろ!!好きな女の子の家に泊まりは…。


暫く思考停止していた俺は、みんなが居なくなってから心の中でつっこむ。




とりあえず、支度してすぐって言ってたから…。

飲み物とお菓子も買って、いそいそと茗子ちゃんの家に向かう。



家の近くに来て、春先輩が茗子ちゃんの家の前で立ち尽くしているのに気づく。


――――気まずい…。

なんでか分からないが、

自分が茗子ちゃんの“浮気相手”みたいな感覚に陥り、

買い物袋を後ろ手に隠す。


「あ、仲西くん…もしかしてクリスマスパーティー?」

春先輩が俺に気づいて、言う。

笑顔だけど、目が笑っていない。


「あ、まぁ…」

俺が言うと、

「茗子、母親が今日からアメリカで暫く一人だから、友達とクリスマスパーティーするって聞いて、安心したよ」

春先輩が言う。


――――本心じゃねーだろ、それ。

でも…暫く一人って…危なくないか?


「春先輩…茗子ちゃんがストーカーっぽいのに狙われてるの知ってます?」

「えっ!?」

春先輩が心底驚いた。


「学校の…誰かは分からないんですけど、服とか無くなったり、盗撮されて…茗子ちゃん、一人だと危ないかもしれないんで気にしててあげてください」


―――本当は、俺が側にいて、守りたいけど…。

でも…現実的には無理で…。


すっげぇ悔しいけど、

隣に住んでる春先輩(このひと)に頼るしかない。


「分かった」

春先輩が真剣な目をして俺に言う。


「じゃあ…」

それだけ言うと、家の呼び鈴を押す。


―――――あれ?出ないな…。



暫く待ってからもう一度、押してみる。



―――まだ、帰ってきてない、とか?


俺が引き返そうとしたとき、ドアが開く音がした。


「航くん…」

つぶらな瞳をまん丸くして、茗子ちゃんが俺の名前を口にする。



ドキンッと胸が高鳴る。


あれ…髪濡れてる…もしかしてシャワーを…ー―――。


「ごめん、もしかして早すぎた?」

「うん、夕方からだよね?」

俺が慌てて聞くと、茗子ちゃんも慌てた様子で言う。


――――えっ!?

「支度してすぐって言われたから――――」

言いながら、嵌められたのだと気づいて黙る。


――――あいつら…。時間早く教えやがったな…。



「寒いし、入って?―――私まだ準備したいけど」

「あ、うんごめんな…」

とりあえずリビングに通される。


茗子ちゃんの濡れた髪が、めちゃめちゃ色っぽい。

スッピンも、可愛い…。


って、何考えてんだ、俺はー―ー―。


「テレビでも見ててくれる?私部屋に戻って支度してくるから」

「あ、うん」

ソファーに座っていた俺にテレビのリモコンを渡そうとして、

かがんだ茗子ちゃんが、

赤いワンピースから谷間をチラリと覗かせた。



思わず顔を背けると、

カチャンと音をたててリモコンが落ちる。

「?航くん?」

可愛い声で、茗子ちゃんが聞く。

「ごめん、大丈夫」

慌ててリモコンを拾う。


――――大丈夫なわけねぇ!!

やばいって!早く、目の前から居なくなってくれ…。


押し倒したい衝動を懸命に堪えながら、

俺はリモコンをテキトーに押しまくる。


でも、なかなかテレビがつかない。


「航くん、それ…リモコン逆になってるよ?」

「あっ、本当だ」

あはははと笑いながら、リモコンの向きを正しく持ち直す。



茗子ちゃんは、笑いながら二階へと上がっていった。



――――みんな、まだかよ…。いつ来るんだよ…。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ