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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
223/283

口実

「じゃあ茗子、行ってくるわね」

「うん、お父さんによろしく」

クリスマスイブの朝、嬉しそうにお母さんはタクシーに乗り込むと、行ってしまった。



みんなが来るのは、

各々部活が終わってからの、夕方からだから…。



私はとりあえず、部活に向かおうと家を出る。


「茗子、おはよ」

同じタイミングで、ハルくんが家から出てきた。

――――会いたくなかった。


ドキドキしてしまう心臓を押さえる。

「おはよう」


「久しぶりだね、あ、そうだ!おばさん今日からアメリカだよな?母さんが今日から夕御飯はうちで食べるように言ってたけど?」


「ありがとう…でも今日はうちに友達来るから夕御飯は大丈夫って伝えて?」

私はうつ向いて早口で伝える。


「へぇ、クリスマスパーティー?楽しそうだな」

ハルくんが言う。


「私もう行かなきゃ、じゃあ」

朝練に急ぐふりをして、

ハルくんの前から遠ざかろうと早足で歩き出す。


「待って、俺も今日学校に用があるから一緒に行こう?」

「――え」

私が顔をあげると、目があって、ハルくんが微笑む。


かぁぁっと顔が熱くなる。


―――ハルくん…マフラー使ってくれてるんだ…。


私が今年の誕生日に渡した、

去年のクリスマスに渡すつもりだった…マフラー…。


私が返事をしなくても、ハルくんは自然と隣を歩く。


―――こうやって隣を歩くのは、あと何回あるんだろう…。







朝練が終わると、私は一人で帰ろうと体育館を出る。

「相田…ちょっと良いかな?」

中島くんが追いかけてきて言う。

「年末とか、バスケ部のみんなでカラオケとか行かない?」


「なんで?」

「なんでって…親睦会?」

中島くんが私に言う。


「私は参加しないよ、皆で行ってきたら?」

「いや、マネージャーも参加して欲しいって声が多数でさ」


「そんなことしても、来年インターハイ行けないと思うよ?」

つい、きつい口調になってしまう。

ウィンターカップだって、予選で負けて…、悔しくないの?

もっと練習したいって思わないの?


私が構わずに帰ろうとすると、中島くんが私の腕を引く。

「ごめん…本当はさ…そんなの口実でー――」

私が立ち止まると、腕を離して中島くんが真剣な顔で言う。


「俺、ずっと好きだったんだ…相田のこと…」




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