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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
221/283

おばさんの言葉

「あの、これ修学旅行のおみやげです」

修学旅行から帰ってきて、私は隣の澤野家に出向いていた。


「あら、わざわざうちに?」

おばさんが、嬉しそうに言う。

―――去年、ハルくんにはたくさん貰ったから…。



「ね、茗子ちゃん、ちょっとあがっていかない?」

おばさんが突然そんなことを言う。


「え…私は―――」

「いいからいいから、今、息子たちも居ないし。」

私が断る理由が分かっていたのか、おばさんが言う。




どぎまぎしながら久しぶりに、澤野家にあがる。


「ね、茗子ちゃん…咲と別れたのは、どうしてかしら?」

お茶を出してくれ、おばさんが向かい合わせの椅子に座る。


「……それは」

「咲が何かした?」

私が口ごもると、おばさんが真顔で言う。


「いえ、サクちゃんは何も悪くないんです…私が全部悪くて」

「咲が茗子ちゃんを傷つけたんじゃないかと思ってたんだけど、違うの?それなら良いんだけど」

変なこと聞いて、ごめんねとおばさんが微笑む。


「違いますっ、私がサクちゃんを傷つけました…ごめんなさい」

私が頭を下げて謝ると、

「ごめんごめん、私は責めるとかそういうつもりはないの。咲や春が茗子ちゃんを傷つけてないか、それだけが心配で。ごめんね、親が口出しすることじゃないのは分かってるんだけど…でも…私は茗子ちゃんが大切だから…それだけが心配で」


「おばさん…」


「うちの息子たちは傷なんていくらでもつけていいのよ?男の子なんだし」

笑いながらおばさんが明るく言う。


「でも、あなたは女の子だから…。私達にとっても広子さんたちにとっても、大事な。」

――――優しく言われると、涙が出る。

私がサクちゃんを傷つけたのに…そんなこと言われると…罪悪感が増しますよ…。


「恋愛なんて、いつどうなるか誰にも分からないものだわ。

でも、間違いなんてないのよ。

それは、全部必要だった出逢いと別れなの。

だから、息子たちと別れたことも…茗子ちゃんが気にすることないの。

今まで通りって訳にはいかないかもしれないけど、

でもきっと時間が、あるべきカタチに関係を修復してくれるわ」


“あるべきカタチに”?


「春も、咲も、小さい頃から茗子ちゃんが大好きだったから、いつかこんな日が来るだろうと思ってた。

―――あなたたちは、まだ若い。若すぎる…。

だから、何も恐れなくて良いの。

今は失敗や間違いを学ぶ時間なんだから。

人は傷付いて、人に優しくすることを学ぶんだし。

それが青春なんじゃないかしら?」


「………」

私は涙をぬぐいながら、耳を傾ける。


「ごめんごめん、年取ると説教ぽくて本当…」

おばさんが苦笑いを浮かべて言う。


「ありがとう、おばさん。少し、元気でました」



―――ハルくんとの別れも、サクちゃんとの別れも…、

通るべき道だったんだと、

自分勝手だけど…そう思うと少しだけ気持ちが軽くなる。


元カレ二人の実の親に、そんな話をされることなんて、

きっと日本中探しても私ぐらいだろうな。


そう考えると、幼馴染みって…すごいな。



私は…これからどんな人に恋をして、結婚するんだろう。


―――小さい頃から、ハルくんのお嫁さんになることしか考えてなかった。


だけど、高校生になって、大好きだったハルくんとも別れて…、現実(いま)は少し違う。


ハルくんが好きだ、

でも…この気持ちも時間が経てば、

“あるべきカタチ”に変わっていくのだろうか?



そんなことを考えながら、私は自分の家に戻った。






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