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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
220/283

ただの、友達

―――繋がれた手を離すタイミングが分からなくて、離さなかったのかな?


―――手を繋がれて…どうしてあんなに、気持ちが落ち着いたのかな。


私と航くんは…ただの友達のはずなのに。



「どうしたの茗子、手なんか眺めて」

沖縄美ら海水族館に来ていた私は、愛梨の声で我に返る。


――――私…また航くんのことを考えてた…。


「うわ、愛梨…見て!ジンベエザメすごい迫力だね」

ガラス張りの巨大な水槽を指差して、私は愛梨に言う。


「それ、さっき私言ったんだけど?」

愛梨がジロッと睨んだあと、ため息をついて言う。

「あ…ごめん」

愛梨の話、全然聞いてなかった…。


「どうしたの?―――昨日のこと思い出してたの?」

愛梨が真剣な顔で言う。

「えっ」

心臓がドキリと跳ねた。


「私もびっくりしたもん、雛ちゃんの話。――どこの誰なんだろうね…早く解決したら良いのにね」

「あ、うん…」

そっちか…。

そうだよね、愛梨は私と航くんが手を繋いだことなんて、知らないんだし。


――――なぜか、愛梨の言葉にホッとしていた。


「沖縄旅行中は、私が茗子を守るから安心して?」

愛梨が得意そうに言って、笑う。


「ありがとう。」

愛梨のことばに、励まされる。


「ところで、愛梨…あの…仁科くんとはどうなってるの?」

―――昨日のこと、と言えば愛梨のあの反応も気になった。

まだ、好きなのかな?

愛梨は自分のことはあまり話してくれないから…。


「どうって、どうもなってないよ」

愛梨の顔から笑みが消える。

「私は告白なんてしないし。あいつからされることなんてないし」


「どうして?伝えないの?」

何も深く考えず、さらに聞くと、

「私は茗子みたく可愛くもないし、菜奈みたくガンガン来てくれる人を好きになってないから…このままずっとただの友達かな」

菜奈がなぜか卑下するように言う。


「愛梨…」

愛梨の気持ちが計り知れなくて、私は言葉を繋げれずにいた。


「私のことより、茗子でしょ!良いの?元カレ、結局粟野にとられたんでしょ?」

愛梨が話題を私のことに変える。

きっと、愛梨も私にずっと聞きたかったのだろう。


「とられたって訳じゃないよ…私とは別れたあとだし。―――私が協力したんだし。」

「え、そうなの?」

「うん、凛ちゃんに頼まれて…」

「そうなんだ…」

なんだかおもしろくない…と愛梨の顔に書いてある。

「私、茗子と咲くん、上手くいってると思ってたのに…」


「………私が悪いんだ」

「え?」

「私が中途半端に付き合って、サクちゃんを傷つけたの。だから、私は今のサクちゃんに、何も言う資格ないんだよ」

「………」

珍しく愛梨が黙りこんだ。



「おみやげ、見に行こうよー」

その時、同じグループの雛ちゃんと千穂ちゃんが私たちに言う。

「うん、行こう」

愛梨が私に言いながら歩き出す。



――――愛梨…きっと私のこと軽蔑してるよね。

こんな私のこと…、理解できないもんね…。



「久しぶりに来たわー、水族館!楽しかったね」

愛梨がおみやげを買ったあと、満足そうに言う。


「私も水族館好きだから、楽しかった!」

―――そういえば、中学の時、甚と菜奈と…航くんと水族館に行って以来だったな…。


また、私の頭の中に、航くんが出てくる。


あの時に、私が…友達になりたいって言ったんだよね…。


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