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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
213/283

役割

私が看板を持って立っていると、

愛梨が心配そうに走ってくるのが見えた。


「ごめん、茗子、大丈夫?」

「ん?」

「航に聞いたの、さっき…」


「ちょっと…どうしたの愛梨ちゃん」

蘭子が愛梨の様子に気づいて尋ねる。

私も、よく分からなくて、愛梨の言葉を待った。


「…怪しいやつに、狙われてるって…」

―――もしかして、こないだの放課後の…。

「え、本当なの?」

愛梨が驚いて言う。


「狙われてるって訳じゃないと思うけど…」

「私…知らなくて…。教室に戻っても良いよ、ここは私がやるから」

「じゃあ…ありがと愛梨」

私は教室に戻ることにした。


外で呼び込みより、

教室の中の方が変な人に会う確率も低いと思ったから。


愛梨と…気遣ってくれた航くんに感謝しながら、

教室に戻る。



「あれ…嘉津先輩?」

見慣れていた背の高い背中で、私は思わず声をかける。

「おぉ…相田、久しぶり。………にしても、すごい格好してんな…目のやり場に困る…」

振り返った嘉津先輩が顔を赤くして言うので、

私もつられて赤くなる。


「それより、インターハイ応援に行けなくて悪かったな」

「いえ…。そうだ、西宮に勝ちましたよ!」

「聞いたよ、春に」

「ハルくんに…会ったんですか?」

―――ハルくん、どこに居るんだろ…全然見かけないけど。


「あぁ、さっき偶然な。相田のクラスを教えてくれたのもあいつだ」

「そう、ですか…」

告白する前に玉砕してから、私は…ハルくんとまともに話していなかった。



「それより、春たち三年が居なくなって大変みたいだな…」

「はい…」

「中島が部長になったんだろ?――正直、不安だなぁ」

「嘉津先輩がしっかりしすぎてたからです!!」

「なんだ、それ…褒めてんのか?」

「褒めてますよ、半分は」

「言うようになったな…」

嘉津先輩に久しぶりに会えて嬉しくて、笑い合う。


久しぶりに笑ったかも…。


カシャッ…。

「!!」

「相田?」

今…またカメラのシャッター音が…聞こえた、気がする。


私は顔を強張らせて周囲を見渡す。


「どうした?」


「いえ…先輩、楽しんでいってくださいね。私、仕事に戻らないと…」


「あぁ、頑張れよ」

比嘉先輩が教室を出ていくと、

私はすぐにクラスの人しか入れない裏方のキッチンに入る。


「あ、茗子ちゃん…」

執事の格好をした航くんが、クラスの女子と

クッキーをお皿に並べているところだった。


「真美ちゃん、航くん…お疲れさま」

「お疲れさまー、じゃ私これお客さんに運ぶね」

真美ちゃんがクッキーを運んで行く。


「―――大丈夫?なんか、顔色悪いけど…」

私の顔を見て、航くんが驚いて近づく。

「なんか、あった?」


「カメラのシャッター音が…き、気になっちゃって」

普通にしてなきゃ…心配かけたくない…。


「気のせいだと思うんだけど…ごめん…ちょっとここに居させて?」

「あ、私クッキー用意するから」

震える手で、お皿にクッキーを並べる。


「分かった、じゃあ頼むわ…俺、ホールやるから」

「ありがとう…ごめん」


航くんが優しく微笑むと出ていった。


航くんの顔を見たら、不思議と少しだけ落ち着いた。




あのシャッター音は…気のせい?

私…自意識過剰なのかな?


――――このあいだの男子…本当になんだったんだろ…。


うちの制服来てたけど…。




「茗子ちゃん、代わるよー」

しばらくすると、交代の時間になって、クラスの女子が来てくれる。


「あ、うん…」

私はメイド服を脱いで、制服に着替えた。


「茗子ちゃんも、自由時間?」

航くんが制服に着替えて、教室から出てきた。

「うん」


「誰かと…約束してたり、する?」

「え?―――ううん、してない。」


「じゃあ…俺と一緒にまわらない?」

「え…でも航くん、彼女さんが…」

「茗子ちゃんのこと、どっかで狙ってるやついるかもしれないだろ?」

私の声をかき消すような勢いで、航くんが言う。


「ありがとう…」

――――彼女さん、良いのかな?

私なんかと居たら、きっと彼女さん、気分悪くするのに…。



「早速だけど、甚達のクラス行こう?」

「あ、うん!私も行きたかったの」

航くんと並んで隣のクラスに入る。


「茗子、来てくれたんだ?」

菜奈が笑顔で迎えてくれる。


「茗子、大丈夫か?」

菜奈といた甚が心配そうに言う。


「…例の変なやつ、まだ見つからないのか」

甚が航くんにボソッと尋ねる。

「あぁ…」

航くんが低く返事する。


「航くん?」

私が甚と航くんを見ながら話しかけると、

「ごめん、俺が話した。なるべく茗子ちゃん一人にしない方がいいと思って」

航くんが私にすまなそうに言う。


「友達だろ、頼れって!!」

甚が言うと、菜奈も航くんも笑顔で頷いてくれた。


――――みんな…ありがとう…。














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