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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
212/283

文化祭でも

「うわ、茗子、めっちゃ可愛い!!」

愛梨が嬉しそうに言う。


「ちょっと待ってて、彩呼んでくるから」

そう言うと、愛梨が教室を出ていった。





「はい!出来たー」

彩が私の髪をクルクル巻いたかと思ったら、

何やら、凝ったヘアスタイルに変えられた。


「うっわ!やっぱ可愛い!!」

愛梨が満足そうに言う。


彩もバシャバシャ写メを撮る。


「はい、じゃあ呼び込みお願いねー」

愛梨が、私に看板を持たせて、背中を押す。


「え、私…?」

「今年も、よろしくー」

愛梨の指示で、蘭子とペアで呼び込み担当にされた私は、

教室を出る。




「茗子、大丈夫?」

「え?」

同じくメイド服を着させられた蘭子が言う。

「クマ…出来てる」

「あ…うん…」

その時、写メのシャッター音が聞こえた気がして、

私は周りを見渡した。


――――気のせい?でも…。


ストーカー?にあってから、些細なことも怖くて、

気になってしまう。



「似合ってるじゃん、メイド」

――――蘭子と歩いていると、偶然サクちゃんに会ってしまった。

サクちゃんは、いつも通りに振る舞ってくれた。


「み、見ないでよ…」

私は…恥ずかしい気持ちと、

久しぶりにまともに口をきいたからか、赤面してうつ向く。



「あ、サクちゃんお願いがあるんだけど…」

凛ちゃんに頼まれていたことを思い出して、話しかける。


「なんだよ?」


「後夜祭で…凛ちゃんと会う時間作ってもらえないかな?」

「なんで?」

「マネージャー…辞めるって言いだして、みんな困ってて」


「だからなんでそれと俺が関係あるんだよ」

サクちゃんが怒って行ってしまおうとする。

私は咄嗟にサクちゃんの背中のシャツをつかんで引き留める。


「凛ちゃんがね…、サクちゃんと後夜祭で会えたら、辞めないでくれるって言ったの。だからー―――お願い」


「初めてのお願いが、これかよ…」

「え?」

聞き取れなくて、サクちゃんの顔を見ると、

「茗子、マジひどいわ…」

泣きそうな顔で笑って、サクちゃんが行ってしまった。




「本当、最低ね」

隣にいた蘭子が、言う。

「ま、それもその“凛ちゃん”の作戦なんでしょうけど?」


「え?―――え?」

―――――凛ちゃんの、作戦?


「馬鹿なの?どう見てもあの(おとうと)くん、まだ茗子のこと好きなのに。」

「………」

「好きな人に、なんでそんなこと頼まれなきゃならないのよ」


蘭子のハッキリとした言葉が、ザクザク心臓に突き刺さる。


――――本当、蘭子の言うとおりだ…無神経だったよね…


今のも…


――――付き合ってるときも…ずっと…


私…サクちゃんを、どれだけ傷付けるの…。




「茗子、行きましょ!客呼び!」

蘭子が私の腕を引っ張っていく。


――――ごめん…。




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