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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
210/283

助け

目を覚ますと、目の前に航くんがいた。



「あれ…」

――――私…。

ここが教室だと気づいて、慌てて立ち上がろうとする。

でも立ちくらみがして、よろけてしまった。


「ちょ…茗子ちゃん、大丈夫?」

「航くん…ごめん…」

咄嗟に航くんが支えてくれた。


「急に倒れたから、どうしようかと思ったよ…」

航くんが心配そうに言う。

「ごめん…最近寝不足で…」

安心させようと、微笑んで言う。


「さっきのやつ、もしかして、ストーカー?」

「わからない…」

――――さっきの人が…誰なのか…怖くて考えたくない…。



「ねぇ、(あいつ)と別れたって、本当?」

航くんが突然話を変えて、尋ねる。


「うん…」


「なんで?」

理由を聞かれたのは初めてで、答えに困って黙り込む。



「言いたくないなら、良いよ」

航くんが優しく言うと、

「俺、部活に戻らねーと…茗子ちゃんは?平気?」

教室を出ていこうとする。


「あ…」

怖い…怖い…行かないで…。

一人にしないで…。

――――私も慌てて航くんと一緒に教室を出る。


「体育館まで、付き合うよ」

航くんが優しく言ってくれて、ホッとした。





「澤野咲、サッカー部に入り直したよな…」

「だね…」

「バスケ部、大丈夫か?」

「ちょっと…キツいかも」


―――新学期になると、サクちゃんは突然バスケ部を退部し、サッカー部に入部した。

途中の退部と入部は、異例だったけど、サクちゃんの実力であっさり認められた。


私は、ハルくんとサクちゃんの居なくなったバスケ部で、

相変わらずマネージャーとして頑張っている。


でも、バスケ部が代替わりして弱くなってしまったのは…事実だった。


サクちゃんも失なって、正直今年のウィンターカップも危うい。


全部仕方のないこと…。

私は、それでも最後までここでみんなを支えたい。





「それにしても、さっきのやつ…今度会ったらぶん殴るわ…」

航くんが思い出しながら苛ついて言う。

「何年だろ、一年?っぽかったな…」



「さっきは、ありがとう。一人じゃなくて良かった…航くんがいてくれて…」

私はお礼を言いながら思い出していた。

「そういえば、前に痴漢にあったときも、航くんが助けてくれたよね…なんか助けられてばっかりだね…」


「そんなこと、ないよ。じゃ、じゃあ俺、部活に戻るから。また明日!」

航くんが体育館まで送ってくれた後、走って行ってしまった。


「うん、バイバイ」

私も手を振ってから、体育館に入る。




「茗子先輩、遅かったじゃないですかー」

凛ちゃんが言う。

「ごめん…ちょっと忘れ物しちゃって…。」


「相田ー、ちょっと…」

新しく部長になった、二年の中島くんが私を呼ぶ。

「はい、今行く」

急いで、中島くんのところに向かう。

「バスケ部のマネージャー辞めたいって言い出したんだよ…粟野のやつ…」


「え…」

私は驚いて、遠くでタイマーをはかる凛ちゃんを見る。

なんだかんだ言いながらも、仕事はちゃんとこなしていたのに。


「あいつ、咲がいなくなったら急に言い出してきてさ…。相田もあと一年で引退だし…どうするよ?」

――――サクちゃん?ハルくんじゃなくて?

疑問はわいたけど、それより…。


「―――説得してみる…」

「良かった、じゃあ頼むな…」

私が言うと、ホッとしたように中島くんが言う。




「凛ちゃん…あのさ」

「はい?」

私が片付けながら、説得を試みる。


「マネージャー…辞めないでくれないかな?凛ちゃんが居なくなっちゃうと…」

「だって、澤野兄弟が居なくなっちゃったし、もう私ここにいる意味ないですからー」

凛ちゃんが悪びれずに言う。


「凛ちゃん、バスケ部だったんだよね?」

「そうですけど?」

「じゃあ、楽しくないの?皆がバスケしてるところ見てて」

「………?」

「私は経験ないけど…見てて楽しいよ?応援したいって…思うよ?」

「うわ、ウザいですそういうの。」

「凛ちゃん…」


「茗子先輩が、咲くんと私の仲を取り持ってくれるなら、続けますよ、新入生が入ってくるまで」

凛ちゃんが微笑んで言う。


「凛ちゃん…サクちゃんのことまだ諦めてなかったんだね」

菜奈の推測通りだったんだ…。



「別れたんですよね?全く…今までにないパターン続きで、困りますよ」

ため息をつきながら、凛ちゃんが言う。

「まさか、サッカー部に行っちゃうなんて…」

「ごめんね」

「何思い上がってんですか?別に茗子先輩関係ないし」

私が謝ると、ムッとした顔で凛ちゃんが言う。


「私…どうすれば…?」

「後夜祭、誘ってください、咲くんを。」



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