嫌がらせ?
「あれ?」
文化祭の準備も始まり、忙しくなってきたある日、
帰りにその日体育で使った体操服がロッカーにないことに気づく。
「茗子、どした?」
愛梨が私の声に気づいて聞く。
「体操服…持って帰ろうと思ったんだけど…見当たらなくて」
「え、まさかまた嫌がらせ?」
愛梨が深刻そうに言う。
「あの先輩たちじゃない?前にも体操服落書きされたりしてたじゃん…」
「え、まさか…」
だって、今私とハルくんは全く仲良くしてないし…。
でも、最近たまに、お弁当のお箸が無くなっていることもあったことを思い出して、私は少し怖くなった。
――――なんでまた?しかも今になって?
「言いたいことあるなら、直接言って来いよって思うよね」
愛梨が私に代わって怒ってくれる。
文化祭が前々日になり、
生徒会の仕事が遅くまでかかり、遅れて部活に向かう。
「あ…明日の宿題…」
教室に問題集を忘れてきたことに気が付く。
「茗子ちゃん?どしたの?」
「あれ、航くん…部活は?」
途中の廊下で、ばったり航くんに遭う。
「忘れ物、明日の」
「数学の問題集?」
「そう…って、茗子ちゃんも?」
「うん…」
お互い同じ忘れ物をして、なんとなく照れながら笑い合う。
二人で小走りに教室に行くと、
「え…」
知らない男子が一人、席に座って寝ていた。
――――その席は…私の…。
「お前…何やってんだよ」
航くんが、気づいて男子に声をかけると、
「……ん?」
起きた男子が、目の前にいた私に驚いて、教室から飛び出していった。
「…何だよ今の」
航くんが怒ったように言う。
―――私の席で…何を…。あの人、誰?
怖くなって、身体が震えてしまう。
―――私の体操服が無くなったのも…使ったお箸が無くなったのも…もしかして、今の人が?
「茗子ちゃん?大丈夫?―――茗子…」
航くんの声が遠ざかる。