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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
208/283

新学期

『俺も茗子を離す気全く無いから』

付き合ってた時、ハルくんがくれた言葉。



『俺はもう妹としてしか見てないから』

別れるとき、ハルくんが言った言葉。



私は、自分の言葉を彼に伝えていたのかな…。

こんなことになるなら…付き合ってる時も、別れ話の時も…自分の言葉を伝えるべきだったんじゃないの?




「文化祭の準備についてですがー―――」


生徒会室に、文化祭の実行委員とミーティングをしている間、

私は、話を進めるハルくんをじっと見つめていた。



「茗子、ボーッとしてどうしたの?」

教室までの帰り、花井 蘭子が私に言った。


――――私がサクちゃんと別れたという噂は、新学期が始まるとまたあっという間に広まった。

どこから広まったのか、誰が知っていたのかは分からなかったけど…自分から言う手間は省けたし、悪口もなくなった。


花井さん…蘭子も、急に名前で呼ぶ間柄になったのだった。


「何でもないよ」

私は、笑顔をつくって答える。






「うちのクラス…メイド喫茶になったわ…」

愛梨が昼休みに、彩と菜奈に言う。

「男子がさー、も、チョーノリ気で…」

「うわ…」

彩がひいたような反応をしながら言う。

「うちのクラスは、ただのアイス屋さんだよ」


「いいなー、B組が良かったわー。ねぇ、茗子」

「そだね…」

私が笑って頷く。


「茗子ってば、別れてから元気ないねぇ…やっぱ戻りたいんじゃないの?」

彩がため息をついて言う。

「どうして急にふっちゃったの?―――あんな完璧なイケメン…もったいない…てか、理解できない!!」

愛梨もため息をつく。


私が塞ぎこんでいるのが悪いんだけど、

――――二人の誤解はちょっとツラい。


別れた理由も…言ってないから、

皆は私がなんとなくふったんだと思っているんだろうな…。



そもそも、三ヶ月のお試し的な付き合いだったのも、

皆は知らないんだから、仕方ないんだけど…。




「―――咲くんと、別れたのって…やっぱり春先輩が好きだから?」

菜奈に放課後呼び止められて、お互い、部活に向かいながら話す。


「………」

そう、だったはずなのに…

…私は、また言えないでいる。


だって、この気持ちを伝えたところで、どうなる?

ハルくんが決めた、進路(アメリカいき)を、止めたい訳じゃない。

でも…応援もできない。



「私も、翔太郎と別れたよ…」

菜奈が、突然ポツリと言った。

「やっぱり、甚が好きなのに…翔太郎と付き合ってるのは卑怯だから…」

「そっか…」

――――菜奈は、良いな…。甚ときっとやり直せる。


「後夜祭で告白しようって思ってる…」

「頑張って、きっと上手くいくよ」

私は、心から思ったことを言った。



「茗子は?」

「え?」

菜奈が私に問いかけるので、聞き返してしまう。


「告白しないの?春先輩に」

「………」


「高校、最後だよ?」

「…分かってる」


今年が最後…、来年はもう…居ない。


分かってる…でも、迷惑にしかならないと思うと…。

私はまた、言葉を伝えることができない。



「茗子、たまには自分の気持ちを一番に考えなよ…」

「菜奈?」

菜奈がサッカー部の部室へ向かう廊下に差し掛かると足を止めて言う。


「あんたは、いつも周りの気持ちを考えすぎてる。一番大事なのは、自分の気持ちだよ?春先輩が好きなら好きって言えばいいじゃん」

「でも…」


「遠回りしてると、タイミング逃しちゃうよ?」

菜奈はそれだけ言うと、サッカー部の部室へ向かってしまった。


私は、体育館に向かう廊下を歩き始める。


――――私は…ハルくんが好きって言っても良いの?



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