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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
206/283

夏休みの朝練

「はい、おみやげ」

翌朝、部活に向かうときにサクちゃんの掌にそっと乗せる。


「こんな貝殻…いらねーし」

サクちゃんが拗ねたように言いながらも、

自分のポケットに押し込んだ。



「楽しかった?」

サクちゃんが聞く。

「うん、ありがとう…あ、そうだ」

携帯電話を取り出して、彩にもらった写メを見せる。

「昨日…皆で撮ったの」


「…やっぱ行かせるんじゃなかった」

サクちゃんが赤面した顔を片手で隠すと呟く。


「え?なに?」

聞き取れなくて、聞き返すと、

「何でもねぇよ」

なぜか睨まれた。


「――今週の日曜なんだけど…」

しばらく無言で歩いていると、

気を取り直したようにサクちゃんが口を開く。


「花火大会、行こ?」


「……うん」

私が返事をすると、サクちゃんが前を見たまま言う。

「大事な話もあるし」


――――きっと、三ヶ月の付き合い期限のことだろうな。


「うん」

私も前を見たまま返事をした。






「ハルくん…」

体育館に向かうと、ハルくんがバスケをしていた。


「どうして…?」

私が驚いて、ドキドキしながら言う。

「あぁ、ごめん…引退したくせに早速顔出してー―」

ハルくんが苦笑いで言う。

「つい、気分転換に…」




―――気分転換…。


ふと、ハルくんが腕につけてるリストバンドに目がいく。


――――別れてからも…ずっと着けていてくれてたよね…。


ハルくんが体育館から居なくなることが、来年は当たり前になるんだよね…。

考えただけで、胸がぎゅうぅっと締め付けられた。



「あれっ、春先輩じゃないですかー!」

凛ちゃんが体育館に顔を出して、ハルくんを見つけてすぐに駆け寄ってくる。


―――『私、春先輩狙いますから!茗子先輩も協力してくださいますよね?」』


凛ちゃんが合宿で言ったことを思い出しながら、

ハルくんと楽しそうに話す凛ちゃんを見つめる。



モヤモヤした気持ちが、胸の中に疼く。


「茗子、ボール!」

サクちゃんに言われて、我に返る。

「あ、はい」

ボールを渡すと、サクちゃんがドリブルシュートを決める。


私は、凛ちゃんとハルくんを見ていられなくて、

サクちゃんのバスケ姿を眺めていた。



『ハッキリしてください!春先輩なのか、咲くんなのか。

先輩が好きなのは、どっちなんですかっ!?』



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