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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
205/283

夏の想い出~航目線~

海に向かって歩いている時、

ふいに赤くなった茗子ちゃんに気づいて、からかったあと、

俺に向き直ると、

「茗子ったら、この間ここにキスマークつけててさ…」

愛梨が自分の鎖骨を指差しながら、興奮気味に俺に言う。


俺が杏奈と付き合っていると思っているからか、

平気で茗子ちゃんと(あいつ)の話をしてくる。



―――茗子ちゃん、

本当に(おとうと)の方を好きになったのか?


諦めようと、杏奈と本当に付き合いだして…

でもやっぱり忘れられないと思ったときには、

茗子ちゃんはあいつと付き合い出していた。


でも…春先輩と付き合ってた頃のような、幸せオーラは感じられなくて…俺はなかなか信じられなかった。






「航、ちょっと写メ撮って―」

海に着いて、水着に着替えた彩に言われ、

「うん」と言うつもりが、

隣にいた水着姿の茗子ちゃんを見たら、

あまりの可愛さに鼻血が出るかと思った。



―――ヤバ…直視できねぇ…。



甚が提案したビーチボールの罰ゲーム、かき氷の奢り。


あっさり茗子ちゃんがボールを落としたのを見て、

俺はすぐにわざと失敗した。


二人でかき氷を買いに行かされる…。

せっかく二人きりなのに…

直視できねぇし…



「お金…」

「いや、いいよ」

いいところを見せたくて、見栄を張ると、

「私が一番最初に負けたんだから…」

茗子ちゃんが譲らないようなので、

仕方なく半額払ってもらうことにした。


でも、茗子ちゃんの手が触れてつい反射で、ビクッと手を払ってしまった。


――――久しぶりに触れたら、

めっちゃ心臓がバクバクいってるぞ…おい…。


「あ、ごめん」

慌てて小銭を拾う。

―――と、目の前に茗子ちゃんの胸があった。


――――うわぁっ!

俺は、心の中で叫ぶ。

一緒に小銭を拾ってくれただけなのに、俺は…。

「大丈夫?―――具合悪いの?」

茗子ちゃんが心配そうに顔を覗き込んでくる。


―――やめてくれ、これ以上近づかれたら…。



かき氷を受け取って、

俺は目のやり場に困るから先を歩くことにした。




「そういえば、航くん、彼女さんは良かったの?」

「え…」

茗子ちゃんに突然聞かれ、つい振り返ってしまった。

「いや、今日のこと…怒らなかったのかなって」

―――まるで、自分は怒られた…みたいな言い方だな。


「あ、うん、大丈夫」

―――俺は、杏奈と連絡とってねーし。

まだちゃんと別れてないけど…夏休み部活以外で会うこともなかった。


俺がすぐにまた前をスタスタ歩きながら言う。

茗子ちゃんは、それ以上何も聞いてこなかった。

チラッと振り返ると、

なんだか思い詰めたような顔で、トボトボと歩いている。



――――幸せそうに笑う茗子ちゃん、いつから見てなかったかな…。


俺じゃ…ダメなんだよな…やっぱ…。



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