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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
202/283

インターハイ初戦

今年のインターハイは、名古屋だった。


「蒸し暑いな…」

天気も良く、まさに真夏日だ。



初戦の相手は…去年、一緒に合同合宿をした、

西宮(にしのみや)高校だった。


「久しぶり、茗子ちゃん」

ありすさんが挨拶してくれる。


「まさか、今年の初戦が西高とは思わなかったわ」

「私も…驚きました」

「ところで、澤野くんとは上手くいってるの?」

笑顔で尋ねられる。


ありすさんは、他愛ない会話のつもりで聞いてきたんだろうけど…。


「いえ…別れました」

私が笑顔を作って答えると、ありすさんが絶句した。

「―――ごめんね、私余計なこと聞いて…」

ありすさんがすまなそうに言う。


「いえ…」

「―――もしかして、うちの矢野が原因…?」

ありすさんが思いついたように言う。

「そう言うわけじゃないので、本当に…」


「―――本当ごめんなさい、あの時は…」

「ありすさん、止めてください」

私とありすさんがそんなやり取りをしていると、

「茗子先輩、練習始まりますよ?」

凛ちゃんが呼びに来る。


「あ、ごめん。―――じゃあありすさん、後ほど」

慌ててチームのところに戻る。





「今日は…金井、春、…………あとは、咲。」

顧問の先生が、初戦のスタメンを言い渡す。

今までは三年生で唯一去年もレギュラーだった寛人さんとハルくん、それに今年初めての一人の合計三人、

二年生は今年初めての二人だったのに、

その二年生のうちの一人を外して、サクちゃんが選ばれた。


「ちょっと待ってくださいよっ」

外された、二年生の高田くんが先生に異議を唱える。

「なんで、こんなド素人が…」


「前半で交代する、もし咲が役に立たなければ…な」

先生の言葉に、高田くんが悔しそうに黙る。




でも…サクちゃんは、

先生の期待通り…、ハルくんと二人でチームの得点源となった。




「おめ…」

「おめでとうございますっ」

私が言いかけたところで、凛ちゃんがすかさず皆に声をかける。


「茗子、タオルちょーだい」

呆気に取られていると、サクちゃんが立っていた。

「あ、はい!」

私がタオルを渡すと、

「それだけ?」

サクちゃんが不満げに私の顔を覗き込む。



「え…っと」

「“頑張ったね”とかないのかよ…」

「あぁっ」

―――そっちか!!


「お前今、なに考えてた?」

ニヤニヤして、サクちゃんが頭をぐちゃぐちゃっと撫でる。


「サクちゃんが…」

顔近づけるからでしょ…。

私がうつ向きながら、必死に髪を直す。


「なんだよ…」

サクちゃんが幸せそうに笑うから…

「何でもないよ…」


やっぱり私は、何も言えないでいる…。



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