五ノ十.決意
「私は嫌です! 里緒はここで他の男と同棲する事になるのでしょう? そんなの我慢できるわけないじゃないですか!」
「え、えー……? なにそれ。聞き分けのない子供じゃあるまいし」
変な意味合いに聞こえるが、確かにファレスの言う通りではあるのだけど―――。
ウトゥヌ神は死後の世界に居るのが通常なのだと勝手に思い込んでいたのだけど、別にそういうわけではないらしい。
というよりも、リオナが居た頃は特に用事のない限りは、ほぼ神殿内の神子の部屋で一緒に生活していたというのだ。
神と神子という関係上、共に過ごす時間が多いほど双方にもたらすエネルギーが増加・安定する仕組みなのだとか。
だから他の神々も神子とそのように過ごしているらしいし、ファレスの言う事は「共同生活」という意味では正しいのだ。
「あなたは全然分かっていない! 私の里緒が他の男に取られ掛けているというのに、黙っていられません!」
「―――え?」
「決めました! アルディアの事は兄上とセイに任せます。身分を放棄し、私も里緒と一緒にこちらで神官になります!!」
「えええ!? ちょ、なに血迷ってるの! そんなにわたしのお肉が好きならアルディアにだって―――」
「ち・が・い・ま・す! わたしは里緒だから好きなんです! 里緒のお肉だから愛してるんですっ!」
「ええええええええええ」
何その残念な告白! ドキドキになれなかった一瞬のドキを返せ!
ククク、と楽しげな笑い声に顔を上げれば、ウトゥヌ神がファレスを面白そうに眺めてから、わたしへと視線を移した。
「彼ら―――特に第二王子は随分と里緒にご執心のようだね。『私の里緒』とは」
(うっ。「私の里緒(と、そのお肉)」だろうけど、それだけ聞くともんの凄く恥ずかしい!)
「良いのではないかい? 里緒をイサで縛るのはフェアではないからね。彼の熱意は認めてあげるべきだろう」
「―――そう、でしょうか……?」
何がそこまでファレスをムキにさせているのか分からないのだけど、とにかく必死なのは伝わってくる。
それを押し返すのも悪い気がするが、帰さないのも悪い気がする―――彼の気持ちに応えられるかどうか、まったく分からないのだから。
「……そう深刻に考えず、少しの間でも良いからファレスの好きにさせてやってくれないか? こいつがこんなに我が侭を言うのは初めてだ。兄としては叶えてやりたい。身分はそのままに、当分は遊学ということにして、こちらで預かってもらうよう俺から掛け合ってみる」
「そういうことなら―――はい。お願いします」
「えー、いいなー、ファー兄! 僕も残りたい……けど、まぁいいや。僕はあっちの里緒の部屋に通うからね」
「そうだな、俺もそれで我慢しよう」
―――これで、ひとまず丸く収まった、のかな?
これからどうなるか分からないけど、今はやれる事をやるだけ。
今まで無駄に過ごしてきた時間を取り戻すつもりで、異世界での生活を満喫しよう!
これで一部を完結とします。
恋愛色を強くした第二部を続編シリーズで投稿します。
少し重くなってしまったので、二部ではもう少しライトに読めるものを目指します。
宜しければそちらもお付き合い頂ければ幸いです。
私の拙い文章にお付き合い頂き、ありがとうございました。




