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臆病な恋の結末  作者: みなみ ゆうき


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第37話 秘密の発覚(5)

 無事に煌斗との話が終わり、お互いに自分の気持ちを伝えた後、すぐに煌斗の家を後にした。

 煌斗はもう少し一緒にいたいような素振りを見せていたけど、最初にあった気まずさが、どこか気恥ずかしい雰囲気に変わったことで、俺のほうがいたたまれなくなり、大急ぎで帰ることにしたのだ。


 家に帰る最中、海里に対して、『無事に煌斗と話ができた』とメッセージを送った。

 海里はあれからずっと俺のことを心配してくれていたらしく、待ち構えていたかのようにすぐに既読をつけると。


《よかったね》

《おれもほっとした!》


 そんなメッセージと一緒によくわからないスタンプを送ってきた。

 絶妙に可愛くないゆるキャラ的なものに笑いのツボを刺激された俺は、勝手に緩んでいく口元を制御するのに苦労しながら、家までの道を歩いて行った。


 海里の気持ちに応えられる確証もないのに、海里の優しさに甘えている自分を後ろめたく思わないわけじゃない。


 でも海里の


『あのさ。俺が告白したから気を遣ってんのかもしれないけど、俺は凛音がひとりで悩んでるほうが嫌なの。そんな風に思い詰めたような顔されたら、気にするなってほうが無理だし。──それに俺は、凛音の友達でもあるんだからさ、悩んでる時や困ってる時には、相談くらい乗らせてよ』


という言葉にだいぶ救われたし、背中を押してくれたことに感謝している。


(海里のこともちゃんと考えないとな……)


 そう考えながらも、前ほど重苦しい気持ちにならないのは、失恋の真相を知り、ずっと引きずっていた初恋が終わりをむかえたことで、気持ちに区切りがついたからだろう。



 ◇



「ただいまー」


 ものすごく久しぶりにスッキリとした気持ちで帰宅すると、ちょうどリビングから出てきた母が出迎えてくれた。


「おかえりなさい。遅かったわね。もしかして何かあったの?」

「……べつに何もないよ。用があって、ちょっと煌斗んちに寄ってただけ」


 高校入学以来、ずっと暗い表情をして、放課後はほとんど寄り道することなく真っすぐ家に帰って来ていた息子が、ある日突然、憑き物が落ちたような顔で帰ってきたら、親としては何があったか気になって当たり前だ。

 この間煌斗が家に来た時や、海里に送ってもらった時にも思ったけど、親って普段は何も言わないけど、子供のことちゃんと見てるし、心配してるんだなって実感する。

 でも過保護ってわけじゃなくて、一歩引いて見守ってくれてる感じが、なんだか照れくさいし、こそばゆい。


「この間凛音を送ってきてくれた子も一緒だったの? ──藤島くんだっけ?」

「海里は一緒じゃないよ。今日は俺ひとり。この間は俺が具合悪くなった直後だったから、心配してわざわざこっちに来てくれただけ。海里の家は全然別の方向だし」

「わざわざ遠いところまで送ってもらったってこと? 少し待ってもらって、お父さんに送ってもらったほうがよかったわね……。よく御礼言っておいてね」

「うん」


 海里が大丈夫だって言ってたから、そのまま帰しちゃったけど、母の言ったことを聞いて、確かにそうするべきだったと反省した。


「──藤島くんが住んでるのって、どのへんなの?」

「え、どこだったかな……?」


 煌斗以外の友達に興味津々らしい母からの質問に、俺はかつて海里から教えてもらった地名をなんとか思い出す。

 本当にあってるかどうかはわからないけど、電車の路線的にはあっちのほうだから完全な間違いじゃないはず。

 目が泳ぎそうになっている俺に少しだけ怪訝そうな表情をしながらも、母からの質問は続いた。


「家族構成は? 兄弟はいるの?」

「一人っ子だったと思うけど、家族の話はあんまり聞いたことないかも。ご両親は共働きで忙しかったから、小さい頃はおばあちゃんちに預けられることが多かったって話は聞いた気がする」


 これまで俺が全くの無関心だったせいで、海里に関する情報が少なすぎることに、自分でもびっくりだ。


(これ以上聞かれても答えられることないかも……)


「どうしてそんなこと聞くの?」

「……今まで煌斗くん以外のお友達の話を聞いたことがなかったから、ちょっと気になっちゃって」


 やっぱりそういう理由だったらしい。

 内心、これ以上追求しないでほしいな、なんて思っていると、母の顔色がだんだんと悪くなってることに気付いた。


「大丈夫? 顔色悪いよ?」

「大丈夫よ」

「具合悪いなら休んだら? ごはんの準備がまだなら俺がするし。そういえば琴音は?」


 いつもにぎやかな妹の声が全く聞こえないことに、今更ながらに気が付いた。


「琴音は今日はずっとおばあちゃんのお家で預かってもらってる。さっき、ご飯もお風呂もあちらで済ませてから帰すからって、おばあちゃんから連絡がきたのよ。お父さんが仕事の帰りに迎えに行ってくれるって」

「そうなんだ。じゃあ、父さんもあっちで食べてくるよね。あとは俺がするから、早く休んで。ご飯できたら声かけるし」

「ありがとう。お言葉に甘えて夕ご飯は凛音にお任せして、ちょっと横になってくるわね」


(元々身体が丈夫なほうではないけど、ここのところずっと体調は良さそうだったのに……)


 母の後ろ姿を見ていたら、不意にこの間海里と会った時に、わずかに動揺したように見えた母の様子を思い出した。


 体調不良とは関係のないことなのに、なんでこのタイミングでそんなことを思い出したのかはわからない。

 けど、なにかが引っかかった気がして首を傾げる。


 何が原因かもわからない小さな違和感。でもそれがなにかということまではわからず、俺はまたもやもやしたものを感じながらも、すぐに気持ちを切り替えるように次の行動を開始した。


 

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