28話 上陸
聖地でもある迷宮「西境の森山」の掃討・調査が終わった後は、美味しい肉質の魔物を探しながらカラスヤタ市に戻った。もう一つの掃討依頼先であるナミミテル島はカラスヤタ市から船が出ているからだ。
因みにこの船便はつい最近まで船乗りが逃げてた都合で行けなかった場所でもある。
汚職の影響がここにも及んでたわけだ。
そうして放置された結果、荒れてる可能性が高いらしい。現時点でどうなってるかすら分からないってどうなのよ?
とは言っても今回は人数が揃っている。他の冒険者が臨時パーティーに加入しているからだ。どうやら立ち入りに制限はあるものの、部外者の立ち入りは禁じられていないらしい。
入島経験者もいることもあって、あの島が気になる地元の有力冒険者は少なくなかった。その為、Bランク以上で募集をかけてもそれなりの人数が集まったのだ。
ただ厄介なことに、社からの特別枠で参加した私が一番ランクが低いのに臨時パーティーのリーダーは私が務めることになってしまった。
港には依頼を受けた冒険者と船乗りが集結していた。
「おう、ようやく来たか!」
「久しぶりですね。キトキンさん」
転斧のキトキン、左右上下対称両刃斧と言うイロモノ武器を扱いこなす冒険者だ。先日はカラスヤタ市の案内をしてもらった優しい人でもある。ランクはなんとAまで上がっており、引退までにSに上がれるかどうかと言われてるほどの実力者らしい。
尚、本人は無理させられそうなSランクに上がりたいとは思っていないらしい。
他にもツタカキ市に向かう護衛任務でお世話になった人も混じっていた。ハルノブと名乗るその人は二刀流の使い手で、往復で受けていた。あの後、仕入れが上手くいかなかった都合もあって解散が早まったそうだ。その結果余裕ができて故郷であるこっちに来ていたらしい。
「あん時はアンタには世話になりっぱなしだったからなぁ。今回はオレを頼りにしてくれよ!よろしく頼むぜ」
「そうね、頼むわ」
「そう言えば、面倒見てた貴族のボンボンどもは見ねぇけど?」
「お留守番させてるわ。偶には道場で基礎訓練させないとね。私は社からの依頼があるからこっち来てるけど」
「そりゃ仕方ねぇな」
どうやらあの戦いを生き抜いた皆のことを気にいったらしい。
他にも実績ある冒険者が多数集まっている。
既に私の表向きの経歴や戦歴は共有されてるらしく、ランクの低い私がリーダーになることに誰も反発しなかった。寧ろ私がリーダーで当然と言う態度だった。因みにナミも来てるけどそちらは完全にお客様扱いを受けている。まさかそれなりの戦闘力を持ってるなんて思わないだろうなぁ……。
「まぁ西のチバンカ教国の大聖女だって?この国の輝巫女に相当する立場なんだろ。俺たちからしたら敬うべき対象さ。それにあの戦績だろ、何でCランクに留まってんのが謎なくらいだ」
皆もこれに頷いている。文句はつけられない。
「若輩者ですがよろしくお願いします」
最後に一言だけ挨拶して渡船2隻に分乗させた。
この渡船は短距離の航路に用いられる客船・貨物船の一種である。
正直言えば1隻でも全員乗ることはできた。しかし長期戦を想定して物資も多めに運んでいる。故に2隻体制なのだ。
物資輸送ならマジックバッグでも良いのだけど、そもそも高価であり、しかも大容量のものは流通すらほぼしてないのでこういう時には使えない。無論私が王宮から持ち出したマジックバッグは貸し出すつもりはない。
距離も短いので航行は短時間で終わり、島の港に辿り着いた。
島に着いたら先行して戦闘要員の冒険者が降りて危険がないかを確認する。と言うか島に接岸する前に泳ぎを想定した装備の冒険者数名が海に飛び込んで自己上陸をしていた。
迷宮によっては必要な能力とは言え、こんなところでやる必要は無いと思うんだけど……。
因みに私は安全が確保できるまで船で待機している。私も乗り込むつもりでいたけど、周りが「子供は待ってろ」と言って前に出るのを許さなかった。
探索自体はあまり時間は掛からない。上陸地点となる港はそこまで広くないし、建物も少ないからね。
「おーい!上陸地点は問題なしだ!島に荷を揚げてくれ!」
「おう!」
どうやら上陸地点周辺の偵察は終わったらしい。
偵察終了と聞いて船乗りたちが気合を入れて荷物の降ろしを始めた。残念なことにここでも私の出番はないらしい。つまり私が動くのは上陸後の戦闘のみと……。
荷降ろしと共に仮設拠点の設営が始まった。
冒険者は仮設拠点設営と周辺巡回の組に分かれることになった。私はここでようやく後者に振り分けられた。
巡回しつつ、探知魔法で偵察を行なったけど周囲に敵と思わしき反応はなかった。勿論魔族の邪気も感じない。
「事前情報によれば魔物が溢れてる可能性があるって話だったが、思ったより荒れてねぇな」
「上陸地点周辺には居ないわね。確かに魔物が現れた形跡はあっても人気の無いところなら普段通りとしか言えないわ」
「言われてみればそうだな。確かに長期間無人だったからなぁ……」
「いや、奥は判らんぞ?まだいるかもしれない」
そう、今のところは特に異常はない。
奇妙なまでに何もないのだ。
「これでは隠された殺気ね」
「あぁ同じこと思ってたぜ……嫌な予感がする」
一緒にこっちに来てたキトキンも同様の見解を示している。
他のメンバーも同調するものが多い。仮に同調せずとも油断する素振りはない。
その後も探索を続け、日が落ちる前に上陸地点に戻ってきた。
実は上陸地点の少し先には修験者や来訪者向けの小さな宿場町があるけれど、そこは放棄されていて詳細も不明だ。
なので港で一泊するのだ。
そして港に戻った後、予感は的中した。
いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
来週はお休みさせていただきます。次回は5/18(月)となります。
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