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24話 西境の森山(中)

 修行者の宿泊小屋ではぐっすり眠れた。


 小屋は邪気祓いによる魔物避けの効果で襲われることもないから安心して眠れた。


 迷宮の洞の中でも森林のような地形では外と同じ様な空が広がっている。そして日夜は外と連動していることが多い。漏れなくこの迷宮もそうらしい。


「おはよう」

「おはようございます」


 起きたら仕度をしてすぐに出発だ。

 のんびりしている暇はない。


「地図によるとこの盆地は一本道が整備されているらしいわ。取り敢えずその周囲を掃討すれば良さそうだね」

「えぇ、修行の場もその道に沿って整備されているはずです」


 迷宮の森はかなり厄介で、方角が分かりにくい。なので迷うと本当に抜け出せなくなる。故に道があるのはありがたいのだ。迷う確率を大幅に減らせるからね。

 因みに迷宮内部の森での遭難による行方不明者は世界全体で年間1000人近く出ている。中にはベテランが行方不明となり、後日狩りをしていた別の冒険者がボロボロになった遺体を発見したと言う事例もある。


 今回は道からあまり離れないようにしないといけないわね。迷って死ぬなんて嫌だし。


 小屋を出て魔物避けが効かなくなる辺りには既に魔物が群れを成していた。同一種で30体は居るな。


「アレはクビナガシカですね。それにしても数が多すぎます」


 ほう、アレがクビナガシカか。


 この国の町の市場で時々見かけたあの高価な肉はあの魔物から採れるのね。

 それにしてもやたら首が長い。普通の鹿に比べて2倍近い長さの首で、しかもよく曲がる。なんか見てて凄い。首さえ気をつけていれば簡単に倒せそうではある。ジュルリ……


「ねぇナミ、この迷宮の魔物、狩って食べたり売ったりして良いの?」

「聖域で倒した魔物は売っては駄目よ。祈りを捧げて野に還すのか、その日のうちに全て食べてしまうかの二択、それが掟です」


 どうやらこれまで倒してきた魔物も全て短いながら祈りを捧げていたらしい。大したものだね。


 それにしても魔物の肉を持ち帰るのは厳禁か〜。まぁ良いや、また今度狩って食べよう。流石に丸ごと一頭は食べきれないから諦めるしかない。


 食べないとは言っても倒すしかない。


 近づけば当然気づかれ攻撃を受ける。


 このクビナガシカ、その長い首を振り回して攻撃してくるけど対処は難しくない。

 その飛んできた首を斬ってやれば良いだけだ。

 首を斬って頭さえ落とせば死ぬのだから。


 適当な強化魔法を刀に纏わせ、敵の軌道から躱しつつ、刀を軌道に合わせて振るう。これだけで倒せるのだから簡単だ。30程度なのですぐに殲滅が終わった。


 その後も次々と魔物が現れた。


 その中には隠形熊、森林大蠍、剣猿などの特定危険種も多数含まれていた。


 森林大蠍は森林に紛れてしまうので視覚で探すのが難しい上に、猛毒の毒針を持っている。しかも奇襲が得意と言う厄介な性質まで持っている。奇襲で毒針を撃ち込んで捕食するのが奴らの特徴だ。ただ群れないので先に発見してしまえばこちらから奇襲をかけてやれば良い。なので倒すのは難しくなかった。

 因みにコイツは虫のくせして人並みの大きさがあるので体重もある。体重に物を言わせた攻撃もあるので気をつけないとそちらでも死ぬ。


 剣猿は全身刃だらけの猿で、木々を身軽に飛び回る魔物だ。コイツは魔法で狙撃して倒している。何気に魔法には弱いからね。


 そして魔物を倒していく傍らで今日も修行の場の破損状況を確認して記録している。これらの作業はナミに任せている。私はこっちの社の文化や施設は全く知らないから彼女に頼むしかない。


 そして昼前に第3階層に入ることができた。


 2階層と3階層では雰囲気が大きく異なる。


 まず木々の高さ、太さが違う。

 3階層の森の木々はまばらである一方、めちゃくちゃ大きい。2階層の平均の2倍近い幹の太さでなおかつ高さも3倍近くある。


 ただ魔物は非常に少なかった。

 不気味なまでに少なかった。

 いなかった訳では無い。ちょこちょこ出てはいたけど大きな群れとかはまず見なかった。


「この階層の修行の場は一つだけです。そこは修羅の間と呼びれているそうです」

「凄い名前だね……名前以外に情報はあるの?」

「私も持っていないです。なので正直なところ、行ってみるしかないですね」


 その修羅の間とやら辿り着いてみればそこは広々とした広場になっていた。広場の真ん中にこの第3階層でも一際デカい木が聳え立っている。そしてこの広場には恐ろしいまでの聖気と魔力が集まっている。ただ聖気は何故か塞ぎ込まれているような感じがする。これは一体何があったのだろう?


 しかし魔力が集まってるとなると、異常な数の魔物が発生していてもおかしくないはずである。なのに何もいない。あまりにも気味が悪い。


「まさか、修羅の間って……」

「何かあったの?教えて!」

「下がってて!多分魔物が異常な数出てくるわ!私が対処する。この魔力量は異常よ!」


 私の推測を理解したナミは慌てて広場から出た。

 広場の近くには退避小屋が幾つかあった。その時に気づけば良かった。後悔してももう遅い。既に膨大な魔力がこの広場で暴れ出している。


 そして予想通り、魔物が現れ広場一面を埋め尽くした。


「本当に酷い状況ね……」

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