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神に選ばれし英雄の異世界物語  作者: 甘味神宝
五大英雄ともう1人の英雄
34/86

デネブラエの戦い

英雄・フィデスについて

英雄の最初の段階である。

神の魂の一部で出来ているリトスからわずかに発している神力が英雄を刺激することで生まれた力のことを言う。


英雄が使うフィデスは千差万別であり、英雄が持つ思いなどが影響している。人が成長や変化するようにフィデスも変化することがある。この変化により、まったく違うフィデスになることもある。

フィデスには様々なタイプに分けられる。


1.レイやアモル、アスラが使う大技を使う単発系

2.シュガー、セレネが使う何かを契約する使役系

3.ルキス、ミラが使う一定状態を保つ持続系

4.アイランが使うリトスそのものを変化させる媒介系



前回のあらすじ

リトスの中に向かうことで修行を始めたレイとミラ。

修行する日々は過ぎていき、アモルとルキス達が合流を果たす。これからどうするかを話し合っていると悲劇が訪れた。


****


 ミラがリトスの中に入る修行を始めて、2日が過ぎた。夜になれば町に泊まり、朝になれば空を飛ぶ生活だった。

ようやく、自分の意思でリトスの中に入ることができた、

 中の景色はどこまでも黒かった。ミラの前には1人の男性が立っていた。その男は肩より少し下ぐらいの長さの赤髪で燃えているような赤眼だった。その姿は非常にシュガーに似ていたが、雰囲気が違っていた。何より、彼の頭上には獣人の証である獣耳がなかった。


「あんたは誰だ?」

「……」


 答える気がないのか、何も話さない。


「シュガーなのか?」

「そうとも言えるし、そうとも言えない」

「どういう意味だ?」


 意味が分からずに聞き返すミラ。


「我はシュガーの分身、半身ともいえる存在。今、言えることは弱き者に力を貸すことはないということだ。助けはしないが、邪魔もしない」

「そうか。なら、強くなってから来るからな。名前はなんていうんだ?」

「とりあえず、天蓋と呼んでもらおう」

「じゃあな、天蓋」


 天蓋の前から、ミラが消えていった。


「なぜ、フレイヤがあれを気に入っているかが分からん」


 天蓋はそうつぶやいた。

 リトスの中から帰還したミラは目を覚ました。


「会えた?」

「会えたことには会えたけど。すくなくともシュテルが言っていた奴らじゃあなかったぞ」

「何があっても不思議じゃないから、自分で解明して」

「ああ、はい。レイはまだ目を覚まさないのか? もう、2日になるぞ」

「もう、ダメかもね」

「うう……」


 レイの方から声が聞こえてきた。彼は目を覚ますと体を起こした。シュテルが声をかける。


「どう? レイ」

「どうにかエインヘリヤルにたどり着けそうです」


 彼は立ち上がり、ミラとルリに話しかけた。


「エインヘリヤルになるため、修行しに行ってくるね」

「レイ君が行くなら、私も行くね」


 フラースは自分の体を押し付けるようにレイに抱き着いた。


「フラースさん、離れてくれませんか?」

「いやー」

「まあ、いいか」


 レイはそのままの状態で光の鳥の外へと出ようとしていた。ミラがあることに気付いた。


「待て! レイ。ここは空の上だ!」

「きゃああああー」


 レイはミラの言葉で止まることなく、そのまま飛び降りていき、それと共にフラースの楽しそうな悲鳴が鳴り響いた。


「大丈夫なんですかね? 先輩」

「アスラならともかく、レイなら何か考えがあるだろうから大丈夫だろう」

「アスラさんって、猪突猛進な方なんですね」


 光の鳥はデネブラエ上空を飛び続けた。


****


 同じ頃、シュガーたちはエクレールたちと合流していた。


「シュガー様、すいません。セレネ様が見つけることができませんでした」

「こちらで合流できたから、大丈夫だ」

「ペテルギウス様とドルチェの姿が見当たりませんが」

「その2人はシリウスのところにいる」

「シリウス様と戦ったんですか?」

「ああ、封印したのでそれが解けた時の説明と監視を兼ねている」


 シュガーとエクレールが話していると彼女が見たことがない人物がいた。金髪の少女であり、竜の尻尾が生えていたため、竜人であることが分かる。


「シュガー様、あの竜人は?」

「この姿だと初対面だったな。おーい、ジル」

「はい」


 シュガーが呼ぶとジルが近寄って来た。


「こいつの名前はジルニトラ。俺の家族であり、相棒だ」

「ジルニトラ様、私の名前はエクレール・ラスターといいます。以後、お見知りおきを。家族と言われましたが、どういうことでしょうか?」

「ジルニトラはゴルドラが人化した存在だ」

「ゴルドラとはフィデスで使役されている黄金竜のことですよね?」

「そうだ」


 エクレールは一度シュガーが屋敷に戻った際にフィデスを見たことがあった。その時は人の姿ではなく、竜の姿だった。


「何故、こんなことが?」

「第3段階カテーナに入ったときに人化したから、それが関係しているのだろう」


 一方、かつての英雄であるセレネ、アイラン、イディナの3人が盛り上がっていた。


「久しぶりだな。セレネ、アイラン」

「ええ、お久しぶりです」

「……相変わらず、賑やか」

「お主も相変わらず口数が少ないな。それにしても姿はあまり変わっていないな。500年経った感覚は浮かばんな」

「私たちはそういう種族ですから」

「この調子ではシュテルとギオンも変わってなさそうだな」


 イディナはセレネのそばにいたティアのことを聞いた。


「そういえば、セレネ。そいつは何者だ?」

「ミーティア・エレオン。私の妹です」

「妹なのか。しかし、お主には家族はいなかったはずだろう?」

「まあ、事情がありまして。英雄として、第3段階に入ったときに生まれた存在です。私の大切な家族であり、妹です」

「そうか。これからよろしく頼む、ミーティア」

「ティアでいいよ☆ これからよろしく☆」


 イディナとティアは握手を交わした。

 シュガーがこれからのことを話した。


「今、道標は全部このデネブラエに集まっている。俺とジルはこれを回収にしに行く。エクレールたちはルークスにある姉さんの屋敷に向かってくれ。道標を回収したら、俺もそこに向かう」

「分かりました」


 シュガーたちはそれぞれの向かうべき場所へと歩み出す。


****


 それからさらに2日過ぎた。シュガーから離れたアモルと水の神アクアによって飛ばされた英雄ルキス達、それに勇者アスカたちが合流した。

 彼らはデネブラエにある町におり、宿屋に泊まっていた。アモルたち女性陣は同じ部屋に集まっていた。外は夜であり、空には十三夜月が輝いており、それは誰が見ても美しいと思わせる風景だった。

 リアマはアスカに勇者のことについて、聞いていた。


「アスカ、勇者は何ができるんだ? 私たち英雄はフィデスという力が使えるんだが」

「勇者の証であるこの剣を持つことで身体能力が上がるよ。それにこの剣に異能力に似た能力が宿るんだって。ミストさんがそう言っていた」

「案外、勇者も英雄と変わらないんだな」

「同じ神に選ばれた存在だし、考えるのがめんどくさいんだよ。きっと」

「いやいや、神様もちゃんと考えてくださっているはずですよ」


 アスカたちがそう話している時、悲劇は訪れ、下から爆発が起こり、それに巻き込まれていった。

 少し前のこと、宿屋にある男性が入ってくる。髪は黒く、服装も黒く、全身が黒かった。男は手続きを終わらせるとそのまま部屋へと入っていく。それから、約5分後。その部屋から、宿屋1件を軽くぶっ飛ばす爆発が起こした。

 町は悲鳴に包まれていく中、爆風に巻き込まれたアモルたちは回避行動が間に合わず、怪我を負ってしまっていた。アモルは木材が太ももに刺さっており、リアマは木材の欠片などで軽い擦り傷をしていた。その中でアスカとミストは運よく無傷だった。


「アモルはここで待っていろ。その傷では動かないほうがいい」

「分かりました」

「ミストさんは町の人をお願い」

「えー、めんどくさいですね」

「お願い」

「アスカのお願いなら、仕方ないですね」


 ミストはアモルの肩を貸しながら、町の人達を避難の誘導へと向かった。


「リアマさん、どうやって犯人を追い詰めるんですか?」

「アモルが言っていた魔人が私たちを狙っているとしたら、この爆発にも納得がいく。私たちを狙っているなら、あちらから来るだろう」

「リアマさん、危ない!」


 アスカがそう叫ぶとリアマの後ろから不意打ちが襲い掛かる。その攻撃は本来なら当たっていただろう。しかし、彼女はその攻撃を避け、相手の後ろへと移動していた。


「それがお前のフィデスか」

「そうだ、これで終わりだ」


 リトスから取り出した槍で首を刎ねようとしたが、刀で受け止められてしまった。


「恨みはないが、やらせてもらう」

「私も英雄として、倒させてもらう」


 魔人は刀で槍を弾き、懐に入ろうとしたが、リアマの口から吐かれた炎に襲われようとした。即座に距離を取り、体勢を整え直す。

 互いに距離を詰めていき、槍と刀の攻防が始まった。アスカは隙を見て、入ろうとしていた。魔人の刀を槍で受け止めた。


「お前、道標を持っているな? フィデスは使わないのか?」

「もう使っている」


 空いている左手で火球を作り、それを地面に叩きつける。すると木材の欠片や石が襲い掛かる。リアマがそれを避けようすると上から刀が振り下ろされる。槍で受け止めることができたが、破片を避けることができず、足に傷を負う。


「私を忘れないでよ」


 アスカの剣が魔人の首に襲い掛かるが、身を低くすることでそれを避けた。彼女は後ろ蹴りで攻撃され、壁へとぶつけ、気絶してしまった。

 リアマは耐える体勢から解放されるが、足を払われたことでバランスを崩された。止めを刺さんとばかりの刀の突きが襲い掛かる。

なんとか槍で下に弾くが、左足の太ももを斬られてしまった。空いている右足で相手の腹を蹴り飛ばした。


(強いな。なら、これしかない)


 リアマは竜力を高め、竜化していく。竜眼となり、頭からは2本の赤い竜角が生える。


「行くぞ」


 槍を握り直し、魔人に襲い掛かる。先ほどとは違い、リアマの攻撃は一撃一撃が重くなっており、押していた。さらに畳みかけようとした瞬間、足に力が入らなくなり、ガクッと崩れてしまう。相手はその隙を見逃さず、刀は肩へと振り下ろされようとしていた。しかし……。


「リアマ!」


 突然、現れたルキスの膝が魔人の顔面へと叩きつけられ、吹っ飛ばされる。ルキスはリアマに駆け寄った。


「ルキス、アスラは?」

「アスラは怪我してたから、置いてきたよ」

(ルキスという少女。速いな。逃がさないようにするためには)


 魔人はルキスに逃げられたら、追いつけないだろうと思い、逃がさないようにするために自分のフィデスを話した。


「俺のフィデスは呪われた傷。俺の攻撃で出来た傷は治ることはなく、それどころか広がっていく」

「それが原因だからか。痛みが酷くなっていくのは」

「どうすれば、解けるの?」

「さあ、解除したことがないからな。ただ、確実なことは逃げても効果は続くということだ」

「こういうのは相手を倒せば、解けるのが定石だよね」


 ルキスは体に雷を纏わせていく。この雷はルキスの神装であり、その名を雷霆(ケラウノス)という。雷そのものが神の象徴である神装であった。

 手から雷を魔人に向かって放した。


「単純な攻撃だな」


 雷を避けると後ろにルキスが既におり、魔人の右脇腹へと拳が叩き込まれる。


「なっ!」

「遅いよ」


 右脇腹に続き、背が蹴られ、その場で膝をついてしまう。


「なるほど、確かに速いな。これなら、いくらでもやりようがある」


 魔人は左手で大きな火球を作り、リアマの方に放つ。それを見たルキスが高速移動し、彼女の前に立つが、火球は彼らではなく、その後ろにある家に当たった。家は崩れ、ガレキがルキス達に降りかかろうとしていた時、ルキスはその行動の意味を理解し、身に纏っている雷を周りに強く放つことでガレキを防いだ。

 その代償として、彼の身には雷がもう纏われていなかった。


「ハア……ハア……」

「俺の行動の意味が分かったようだな」

「君のフィデスは自分の攻撃だけではなく、介したものにもその効果がある。だから、火球を作り、家を破壊し、ガレキの雨を降らせたんだね」

「その通りだ。もう、あの雷は使えないようだな」


 魔人は近づき、止めを刺そうとした瞬間、ルキス達と魔人の間にある英雄が空から降ってきた。


「今度は誰だ?」

「僕の名前はレイ・シルバ。英雄です」

「レイ……なのか?」


 レイを久しぶりに見たリアマはある違和感がしていた。どことなく、以前のレイとは違うということを感じ取っていた。


「久しぶり。ルキス、リアマ」

「気をつけろ、レイ。そいつは強いぞ」

「分かった」


 レイは緑のコートを着ており、顔には緑に輝く仮面。右手には黒い剣を握られていた。

 魔人とレイはほぼ同時に距離を詰めて、剣と刀が交差する。何度か、交えると刀はレイの体を斬る。しかし、斬った感触がなかった。


「幻影か」


 彼は瞬間的にスピードを上げることで幻影を作り出していた。彼は魔人の後ろに回り込んでいた。


「絶風波」


 左手から風の衝撃波を放つ。魔人は魔術で炎を放つが、少し相殺しただけに終わり、魔人の体を傷つけていく。追撃と言わんばかりに剣が振り下ろされ、刀で受け止める。


「絶風刃」


 至近距離の風の斬撃が魔人を襲い掛かる。魔人は2つの大技を受けたことでボロボロになっていた。


「あなたの道標を渡して、もう悪さをしないなら見逃していいけど」

「そういうわけにはいかない事情があるんでな」


 2人が再び、戦おうとしたその時。魔人の左胸に刀が刺された。


「ご苦労だったな。ポーザ」

「シュガーー!」

「お前の役目は終わった。永遠の暇をやろう」


 シュガーの声を聞いた魔人ポーザはシュガーに斬りかかったが、あっさりと避けられ、逆に刀で斬られ、地面に伏せることになった。シュガーが彼の身に手をかざすと道標が出てきて、それを手にした。


「シュガー……」

「俺は魔人を倒しに来たわけではない。お前たちにお願いがあって来た」

「お願い?」

「お前たちの道標をもらおう。拒否すれば、奪い去ることになるが」


 レイは彼の体を感知にすると4つの道標が感じ取れた。

 シュガーに向かって、レイは接近するとその勢いを利用され、そのまま投げられ、背を地面に触れることになった。レイの胸に手をかざし、道標を回収した。

 シュガーはルキスとリアマに近づいていく。


「今の戦いで満身創痍だろう。抵抗はしないほうがいい」


 左手をルキスに、右手をリアマにかざし、道標を回収した。


「これで道標が全部揃った。後は時期を待つだけだ」


 そう言うと瞬間移動し、その場から消えた。

 レイは体を起こすとリアマたちに近づくと彼女が不思議に思っていたことを聞いた。


「レイ、なぜ手を抜いた? 今のお前ならシュガーに勝てても不思議ではないのに」

「ちょっと、事情があって。助けてあげたいんだ、シュガーを」

「どういう意味だ?」

「僕にもよく分からないけど、説明するよ。みんなと合流しよう」


 3人は立ち上がり、合流するために歩き出した。

 すべての道標を手に入れたシュガー。彼の計画は最終段階へと入る。

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