表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
部屋という名の世界には。  作者: 松田葉子
3/7

第2話:扉を開くと。

「部屋」のあるビルには、家から数分で着く。

最寄り駅からは10分ちょっとかな。

大通り沿いに歩いて、郵便局の角を右に曲がって暫くすると、手前に緑色の、奥に黒い屋根の家が見えてくる。

そしたら、その間の路地を通るの。

道が開けると、そこにビルがあるの。

一見するとオフィスビルって感じ。

ここに来るの、中3のとき以来かな。

今が高2だから、2年前ってことか。

「じゃ、行こっか。」

私よりちょっと前に立ち止まってるニーナに声を掛けると、ニーナはこっちを振り返って、

「ニャー。」

と返事してくれた。


ビルの出入口は自動扉。

ニーナが先に入っていき、私はその後に続いた。

ビルの中は吹き抜けで、左右に階段があり、10階まで左右に各々20部屋程ある。

奥にはエレベーターもあるけど、私は滅多に使わない。

だって、階段を使った方が色んな人達の「部屋」の扉が見れるから。

「部屋」の扉も各々違うの!

木製のだったり、鉄製のだったり。

ステンドグラスで装飾された扉もあれば、鎖でぐるぐる巻きにされてて、何個か鍵が必要な扉もあって。

ここはちょっとした博物館みたいで、それを見るだけで気分転換になるんだ。


それにしても、これだけ扉があると、アラタの扉を見つけるのも一苦労だなぁ。

あ、管理人さんに訊けば良いのか。

1階のエレベーターの手前に管理人室があるので、そこに行ってみた。

「すみませーん・・・すみませーん。」

映画館や水族館の窓口のようにガラスで隔たれていて、中は黒い暖簾のようなものが掛かってる。

ちょっとすると、管理人さんらしきおじさんの口から下だけ見えた。

「はいはい、何か御用ですかね。」

「あの、友達の「部屋」を探していまして。ミウラアラタって言うんですけど。」

「ミウラアラタね。ミウラ・・・アラタ・・・と。」

おじさんはパソコンで検索をかけてるのか、打ち込み始めた。

「はいはい、分かったよ。4階の、こっちから見て右っかわの階段登って、管理人室寄の「部屋」4つ目、グレーで、彫刻が施された扉だね。」

「分かりました、ありがとうございます。」

暖簾があるからおじさんには見えてるのか分からないけど、とりあえず一礼してアラタの「部屋」を目指した。


ミウラアラタの「部屋」。

各々の「部屋」の扉の上には、表札のようにちゃんと名前が書いてあるのだ。

扉には触れるが、取っ手を下に下ろそうとしても鍵がかかっているみたいで、開かない。

アラタの扉は蔦模様に彫られていた。

模様に手を触れてなぞっていると、蔦模様とは明らかに違う、ばつ印のようなものが。

「ニャー。」

ニーナが首元を掻いた。

「あ、あれだ。」

私は胸元にぶら下げていたネックレスを引っ張り出した。

このネックレスのモチーフのやつとそっくりなんだ。

中1のときの誕生日に、アラタがプレゼントしてくれたんだ。

モチーフをそこに当てると、ピッタリはまった。

すると、カチャという音がしたので取っ手を下に下ろしてみた。

ガチャ・・・っ。

扉が開いた!!

やった!と思ってたら、ニーナはするりと中に入っていった。

「ちょ、ちょっとニーナ待ってよ!」

なーんか、ダシに使われた気分だなぁ。

まぁ、とりあえず入れるってのが分かっただけ、良しとしましょうか。

ニーナの後を追って、私も「部屋」の中へ入った。


中に入ると扉は勝手に閉まる。

そして一瞬だけ周りは闇に包まれる。

この瞬間だけ、どうにも慣れないんだよなぁ。

「部屋」の存在というものが、謎に包まれているせいか、ちょっと怖いって思うんだ。

一瞬だけ訪れる闇が去ると、アラタの「部屋」には砂漠が広がっていた。

「うわー!砂漠!だだっ広い!!」

両手を上げて叫んだ。

「前、こんなの無かった気がするけど・・・。」

「まぁ、「部屋」の中身なんて、持ち主次第で変えられるからね。」

・・・ん?誰だ?

周りをキョロキョロと見てみるが、誰もいない。

「ちょっと、どこ探してるのよ。今はアンタ以外にアタシしかいないでしょ。こっちよ、下よ。」

足元にはニーナしかいないはず。

「・・・へ?」

「何間抜けな声出してるのよ~。」

「うわ!ニーナが喋ってる!!」

「アラタの「部屋」に来たら、アタシ人間の言葉で話せるのよ。アラタがアタシと話せたら良いなって言ってて。アラタとはよく一緒に来て、ここで話してるのよ。言わばアタシたちのデートスポット。だから、ホントはアンタと一緒に来たくはなかったけど、アタシだけじゃ鍵も無いから入れなくて、渋々よ・・・!」

あー・・・今ので全て納得した。

「ニーナはアラタのことが好きなんだねぇ。」

「そうよ!アラタもアタシのこと、だぁ~い好きだから、いっつもラブラブよ!」

「うん・・・、そうかそうか・・・。何回も来てるなら、道案内してくれるのかな?」

「アラタの記憶、夜には無くなっちゃうから仕方無いけどね!ホントはこの砂漠でアンタを迷子にしてやっても良いんだけどね!」

「ニーナ、酷いな・・・。何で私にそんなに当たりが強いの?」

「だって、アラタ取っちゃうから・・・。アタシ、アラタがいないと寂しいのよ・・・。」

「そんな風に思ってたんだ。じゃあ今度アラタと会うとき、ニーナも誘うよ。それで良いでしょ?」

「・・・アンタがいるのは邪魔だけど、アラタといられるなら・・・。」

「よし、決まり!じゃあアラタのとこまで案内して!」

「・・・分かったわ、でも、時間無いから走るわよ!」

「了解!」


私とニーナは走り出した。

ただっ広い砂漠の中を。

何も無いわけではなく、たまに2メートルくらいのでっかいサボテンがある。

それを目印にしているのか、ニーナは迷いなく走っていく。

私もその後を走って着いていってると、遠くの方で人影が見えた。

その方向を指差しながら、

「ねぇ、ニーナ、あそこの人たちとは話したことある?」

と訊いてみた。

「あの人たちは何も話さないわ。人の姿してるけど、ただの背景と一緒。こっちを見てもくれないわ。」

「ふーん、そうなんだぁ・・・。」

走ってると、何だか足元がぐらついてきている気がした。

「ね、ねぇ、ニーナ。何かグラグラするんだけど、私運動不足なのかな?」

「それもあるかもしれないけど、下に何かいるわ。」

「え、この砂漠の下に?こんなグラグラするんだよ?すっごいデカい何かだよね?!」

「もしかしたら、サソリかもしれないわ・・・。前にサソリ出てきたの、見たことあるわ・・・。」

「ギャー!でっかいサソリなんて、恐怖でしかない!!」

騒いでると砂がボコボコと盛り上がってきた。

私とニーナはキャーとかうわーとか叫びながら、それでも止まらず走っていると、地中に潜んでた物体が姿を現した!!

「ギャー!さそ・・・り・・・じゃない!え、何?!ハムスター?!」

地中から出てきたのは、3メートルはあるであろう、ゴールデンハムスターだった。

(つづく。)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ