第3話:全力少女。
「な、何でハムスターなのぉぉ?!」
驚きつつも走り続ける私とニーナ。
ハムスターも地中を出てから私たちと同じ方向へ走る。
「でも、何か見たことあるハムスターのような・・・。」
私は暫く考えた。
その答えをニーナが言ってくれた。
「あ、分かった、あれよ!アラタが昔ハムスター飼ってたって言ってたわ!」
「・・・あぁ!!ハムスターの公太!!」
何故名前が「公太」なのか。
説明しなくても分かるでしょう。うんうん。
「それにしたって、公太、何故こんなでかいのかしら!!猫のアタシよりでかいなんて!!」
「そういえば、公太飼ってた当時、アラタ、「公太が大きかったら背中に乗りたいくらい、コイツの毛並みは良いなぁ。」なんて言ってたよ。」
「流石「部屋」って訳ね・・・。これならアラタの願望が叶えられるわね。」
「ねぇ、公太も私たちと同じ方向へ走ってるけど、公太もアラタのとこに向かってるのかな?」
「そうかもしれないわねぇ。・・・まずいわ、ミキ、公太より先に次の扉に入らなきゃ!!」
「え?!何で?何がまずいの?」
「扉は公太よりもサイズが小さいわ。公太が先に入ったら扉に詰まって、下手したらアタシたち中に入れないかもしれないわ!!」
「そ、それはまずい!!急げー!!」
私たちは全力で走った。
全力少年ならぬ、全力少女だ。
公太もペースは遅いが、元々でかいから1歩がでかい!
抜きつ抜かれつつのデッドヒートを繰り広げた。
「ミキ!!次の扉が見えてきたわ!公太には悪いけど、次の扉をくぐったら閉めて!またその次の扉でも詰まったら困るから!」
「分かった!!」
次の扉は砂漠よりもずっと濃い茶色。
チョコレートみたいな色の木製の扉だ。
「ラストスパートだ!!」
でも、公太も扉に気付くとスピードアップしてきた。
これはやばいぞ。
すると、ニーナが公太の顔に飛び付いた。
公太は立ち止まり、ニーナを振り落とそうと、頭をブンブン振り回した。
「ニーナ!!」
「ここで時間稼ぐから、早く開けて!!私は隙間に飛び込むから!!」
「分かった!!」
そして私は扉の取っ手に手を掛け、扉を開けて、中に入った。
あと少しで扉を完全に閉める!というとこで、間一髪ニーナは滑り込んできた。
バタン!と扉を閉めると、扉の外で公太がぶつかったのだろう、ドシン!と扉が振動した。
「ハァ、ハァ、ハァ、公太、ごめん・・・。」
「ふぅ、危なかったわ~。公太は、帰りに会ってもらいましょ・・・。」
一瞬の暗闇。
私たちは木造の建物の中にいた。
夜なのだろう、辺りは薄暗い。
近くの窓から外を覗くと、月が見えた。
満月だ。
「何だか、夜の学校に忍び込んだみたいね・・・。」
「ニーナ、正解。この建物、私とアラタが通ってた小学校の廊下だよ。小学生の頃の休みの日、私が次の日に提出しなきゃいけない宿題を学校に忘れたことを思い出して、アラタについてきてもらったことがあるの。」
「ふぅ~ん、そうなの。それが高校生になった今でも「部屋」に出てくるなんて、よっぽど思い出に残ったのね。」
「まぁ、私もおてんばだったけど、私たちだけで夜に出掛けるなんて、何だか悪いことしてるみたいでドキドキしたしなぁ、覚えてるよ。」
「へー。」
「ニーナ、興味無さそう~。」
「無いもん。」
正直な猫め。
「ミキ、後ろから誰か来る!そこの教室入ってみよ。」
ニーナは声を潜めて言ったので、私は頷き、左手にある教室の扉を開け、中に入った。
ギリギリ外が見えるくらいの隙間を開けて、外を覗いた。
そこに現れたのは、スーツ姿の黒猫だった。
黒猫だが、ニーナとは違い、人間みたいに二足歩行で身長も170センチはありそうだった。
冷や汗が流れた。
何故だか、コイツに見つかったら、殺される。
そう思った。
そのスーツ姿の黒猫は廊下をゆっくりと歩いて、2階へと続く階段を上っていった。
私はそれを確認して、扉を完全に閉めた。
ふぅ、と溜め息ひとつ。
「怖かった・・・。」
一瞬の暗闇。
次に現れたのは、畳の部屋だった。
畳の部屋だけど、教室みたいな造りで、長机が横に2列、縦に10列程並んでた。
各々の席には人が座っていた。
正面にはロールスクリーンがあり、部屋の後ろからプロジェクターで映像を映していた。
今は海の映像なのだろう、青い画面に時々魚が映り込んだ。
座っている人たちは、皆その映像を見ていた。
私たちはその部屋の後ろの扉から入ったようで、皆の背中を暫く見ていた。
するとニーナが、プロジェクターに近い席に座っている人に近付いた。
「アラタ!!」
私たちは見つけたのだ。
「部屋」の持ち主を。
(続く)




