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初期機体は初心者にあらず!  作者: バショウ科バショウ属
ゴースト
30/75

デュエルを受諾します!

≪V、2人でかかりましょう!≫

「いやいや、だめでしょ」

≪えぇ…だめですか?≫


 ゾエの発想は正しい。

 正しいけど、そうじゃないじゃん?

 師匠の弟子と言われたからには、ここは俺が行かないと。

 レールガンは持ってないけど。


「ゾエ、これは決闘(デュエル)だ」

≪決闘……分かりました、ゾエは立会人ですね!≫


 臨戦態勢だったフランベが右腕のライフルを下ろす。

 決闘という概念を授けてくれてありがとう、アイゼン・リッター。


≪はぁ……楽しんでこい≫

「おう」


 長い溜息の後、それでもヘイズは背中を押してくれる。

 2人とも付き合わせて悪いな。

 でも、()()がやりたくてティタン・フロントラインやってるんだ。


≪準備はいいか?≫

「待たせた」


 アリーナ3位さん、律儀に待ってる!

 ちょっと申し訳なかった。


 気を取り直して──跳躍のため、脚にパワーを蓄える。


 鉛色の空をバックに、カッパーの巨人も跳躍の姿勢を取った。


≪行くぞ≫

「おう!」


 ロックオン警報がゴング。

 ペダルを蹴った瞬間、視界が左へスライドする。

 赤茶けた砂が舞う。


 射撃はない──上空に赤い閃光を纏ったカッパーの巨人。


 さっきのは挨拶代わりのフェイント。

 右腕のフレイムロックは、既に相棒を照準済み。

 スティックを倒し、噴射方向を変更。


≪エネルギー残10%≫


 相棒の未来位置をAP弾が貫く。


 狙いは正確だが──それもフェイントなんだろ?


 スラスターをカット。

 眼前にビルの壁面が迫る。

 機体を捻って接地、同時に壁面を蹴って飛ぶ。


≪…やるな≫


 コンクリート片の粉塵をAP弾が貫き、わずかに相棒の右肩を掠った。

 いい狙いしてやがる。


「こっちも行くぜ!」


 上空で滞空中のアリーナ3位へ吶喊、ライフルを叩き込む。

 しかし、AP弾はスラスターの赤い閃光を掠め、空へ吸い込まれる。


「早っ!?」


 FCSが追従を即座に諦める速度、手動でも偏差が取れない。

 さっきまで正面に捉えていた影が、右斜め後方にいた。

 反射的にペダルを蹴って、左へ加速。


 相棒の過去を穿ったAP弾は2発──フレイムロックの両手撃ち!


 かっこいいじゃねぇか。

 追撃の1発を自由落下で回避。

 ビルの影に降り立ち、舞い上がる砂塵。


≪あれも避けるか≫


 避けるだけじゃ勝てないけどな。

 レーダーは、急接近してくる赤点を映す。

 性能差は歴然、()ならどうする?


 腕と地形で補う──戦場を思い出せ。


 ペダルを蹴って、後方へ急加速。

 眼前で舞い上がる砂塵に風穴が開く。


≪初期機体で、よく避ける≫

「オープニングよりは避けやすい、ぜ!」


 機体を旋回させる際、移動の軸線を逸らす。

 AP弾が至近を掠める。

 旋回と同時に、上空のアリーナ3位へライフルを連射。


≪あれと比べるな≫


 急加速でビルの影へと消えるカッパーの巨人。

 スラスターをカット、エネルギーを回復。

 そのままストリートを突っ走り、高層ビルの立ち並ぶ一帯を目指す。


≪ヘイズ、Vが逃走していきます!≫

≪いや……あれは奴を戦場まで誘引しているな≫


 解説ありがとう、ヘイズ。

 後方から飛来したAP弾を飛び跳ねて躱す。

 背後から急接近してくるアリーナ3位。


 肉薄すれば躱せない──そこは俺の間合だぜ?


 着地で硬直する前に、スラスターを噴射。

 レーザーブレイドの刀身を最大へ。

 上昇、旋回、左腕を振り抜く!


≪ちっ!≫


 間一髪で逆噴射し、上空へ逃れるアリーナ3位。


「避けたっ」


 旋回の勢いを殺さず、右腕を突き出してライフルを連射。

 当然のように回避され、光弾が鉛色の空へ流れる。


≪エネルギー残10%≫


 スラスターをカットし、着地。

 あれで撃破できれば万々歳だったが、そう上手くはいかない。

 とにかく、足場がある場所まで移動する。


 アリーナ3位は距離を維持──あれで怖気づく相手じゃない。


 高層ビルの影へ入り、周囲の視界が一気に狭くなる。

 鉛色の空も狭まっていく。


≪いい腕だな……奴が認めるわけだ≫

「小手調べは終わったか?」

≪ああ≫


 上層が崩れ落ちたビルの残骸に降り立つカッパーの巨人。


≪こいつの装弾数は6発、両腕で計12発……残り4発≫


 わざわざ残弾を教える。

 それは、俺を確実に仕留めるという意志の表明。

 細身のティタンから放たれる威圧感が増す。

 奴とは違うプレッシャーだった。


≪勝負だ≫

「来い!」


 同時にスラスターを噴射、吶喊する。

 視界が加速で狭まる中、手動で照準。

 どちらも撃たない。


 左背面に回り込まれる──そのまま高層ビルへ一直線に突進。


 迫る壁面、スラスターをカット。


≪エネルギー残30%≫


 壁面に接地、脚のパワーだけで跳躍。

 一瞬、視界が粉塵で灰色に染まり、背面を取っていた巨人を映す。

 左腕にエネルギーを集中、光の剣が伸びる。


 交差は一瞬──回避はしない!


 フレイムロックが火を噴き、レーザーブレイドを振り抜く。


≪ちっ!≫


 発砲と同時にアリーナ3位は、俺の右手側へ加速して切先から逃れる。


「外したっ!」


 光の剣は、ただ鉛色の空を切り裂く。


≪機体損傷≫


 相棒は左肩の装甲が弾け飛んだ。

 相手は装甲の塗装を焼かれただけ。


 割に合わないか、いや──カッパーの巨人が、高層ビルの影を背負う。


 それでいい。

 斬撃の勢いで機体を回し、遠ざかるアリーナ3位を視界に収める。

 スティックを操作し、ミサイルを全弾発射。


≪なに…?≫


 当たるはずがない、そういう困惑。

 簡単に回避された6発のミサイルは、()()()高層ビルに次々と命中する。

 そりゃそうだ。


 狙いは──初めから高層ビルだ。


 それも背が高く、基部が脆そうなもの。

 相棒の最大火力で引導を渡す。


≪これは…!≫


 倒壊が、別の倒壊を引き起こし、鉄筋コンクリートの塊や鉄骨が降り注ぐ。

 いくらティタンでも、それは回避せざるを得ない。

 つまり、機動が制限される。


「行くぞ、相棒!」


 進行方向にあった高層ビルの壁面を蹴り、その渦中へ突っ込む。

 ここで決める!


 赤茶けた砂、灰色の粉塵、視界は0──そこで瞬く赤い閃光。


 スラスターの噴射炎を追う。

 ペダルを踏み込んで、相棒を加速させる。


 鉄筋コンクリートの塊を潜る──俺を睨む赤い眼光。


 最小限の機動で鋭く旋回するカッパーの巨人。

 右腕のフレイムロックが火を噴く。

 機体を僅かに逸らせば、右肩のランチャーが吹き飛ぶ。


≪エネルギー残10%、右肩部ユニット大破──≫


 でも、これで()()()()()()

 狙うはコクピット。

 行くぜ、必殺技!


「もらった!」


 繰り出したサッカーボールキックが、コクピットを──


「マジかよっ」


 捉えない。

 上半身のスラスターだけ噴射して、空中で姿勢を変えやがった!

 削り取ったカッパーの欠片が舞う。


≪甘いぞ!≫


 落下しながら、アリーナ3位は両腕のフレイムロックを構えた。

 上等だ、やってやるぜ!


「まだだ!」


 スラスターをカット、カッパーの巨人目掛けて落下。

 振り抜いた脚で踵落としを叩き込む!


≪なに!?≫


 驚愕、そして赤い閃光が眼前で瞬く。


 アリーナ3位は回避を優先──照準が外れる。


 コクピットを掠めるフレイムロックの弾丸。

 俺の踵落としも塗装を剥ぐだけ。

 落下する視界の中、姿勢を立て直すアリーナ3位を見送る。


「決めきれないか…!」


 不思議と悔しさはなかった。

 ライフルで追撃もできたが、この高揚感に水を差したくない。

 スラスターを再噴射、近場のビルに着地する。


≪…仕留め損ねたか≫


 アリーナ3位は距離1000mほど、同高度のビルに着地。

 立ち込める粉塵で視程は最悪、辛うじて見える。

 おもむろにフレイムロックの砲口を上げ、ロックオン警報が止む。


≪弾切れだ≫


 名残惜しそうな、しかし達成感のある声で、アリーナ3位は告げた。

 肘にはスピードローダーらしきパーツが見える。

 それでも弾切れ。

 楽しい時間は、すぐ終わっちまう。


≪お前の勝ち──≫


 声を遮るロックオン警報。

 俺とアリーナ3位は同時に飛び退く。

 刹那、ビルの屋上は爆炎に飲まれ、黒煙と粉塵が舞い上がる。


「おい、誰だよ…今のは」


 横たわる高層ビルの残骸にアリーナ3位と降り立ち、下手人を探す。

 またかよ。

 飛び入り参加にも限度があるぞ。

 さすがに空気を読もうぜ?


≪くそが……どこの塵芥だ≫


 殺意に満ちた声を出すアリーナ3位。

 肘に装備したスピードローダーがスライドし、フレイムロックのシリンダーにAP弾を装填する。


 え、かっこいい──違う、そうじゃない。


 今は、無粋な連中をどうしてやるか、だ。 

 レーダーに映る赤点は4つ、相棒の眼が遅れて4機のティタンを視認する。 


≪V、連中は俺が殺す──≫ 

「俺も混ぜてくれよ……頭に来ちまったぜ」 

≪決闘に水を差すとは、許せません!≫ 


 フランベがビルの屋上に着地し、クローバーラインの射撃体勢を取る。 

 いいぜ、派手に出迎えてやろう。 

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