デュエルを受諾します!
≪V、2人でかかりましょう!≫
「いやいや、だめでしょ」
≪えぇ…だめですか?≫
ゾエの発想は正しい。
正しいけど、そうじゃないじゃん?
師匠の弟子と言われたからには、ここは俺が行かないと。
レールガンは持ってないけど。
「ゾエ、これは決闘だ」
≪決闘……分かりました、ゾエは立会人ですね!≫
臨戦態勢だったフランベが右腕のライフルを下ろす。
決闘という概念を授けてくれてありがとう、アイゼン・リッター。
≪はぁ……楽しんでこい≫
「おう」
長い溜息の後、それでもヘイズは背中を押してくれる。
2人とも付き合わせて悪いな。
でも、これがやりたくてティタン・フロントラインやってるんだ。
≪準備はいいか?≫
「待たせた」
アリーナ3位さん、律儀に待ってる!
ちょっと申し訳なかった。
気を取り直して──跳躍のため、脚にパワーを蓄える。
鉛色の空をバックに、カッパーの巨人も跳躍の姿勢を取った。
≪行くぞ≫
「おう!」
ロックオン警報がゴング。
ペダルを蹴った瞬間、視界が左へスライドする。
赤茶けた砂が舞う。
射撃はない──上空に赤い閃光を纏ったカッパーの巨人。
さっきのは挨拶代わりのフェイント。
右腕のフレイムロックは、既に相棒を照準済み。
スティックを倒し、噴射方向を変更。
≪エネルギー残10%≫
相棒の未来位置をAP弾が貫く。
狙いは正確だが──それもフェイントなんだろ?
スラスターをカット。
眼前にビルの壁面が迫る。
機体を捻って接地、同時に壁面を蹴って飛ぶ。
≪…やるな≫
コンクリート片の粉塵をAP弾が貫き、わずかに相棒の右肩を掠った。
いい狙いしてやがる。
「こっちも行くぜ!」
上空で滞空中のアリーナ3位へ吶喊、ライフルを叩き込む。
しかし、AP弾はスラスターの赤い閃光を掠め、空へ吸い込まれる。
「早っ!?」
FCSが追従を即座に諦める速度、手動でも偏差が取れない。
さっきまで正面に捉えていた影が、右斜め後方にいた。
反射的にペダルを蹴って、左へ加速。
相棒の過去を穿ったAP弾は2発──フレイムロックの両手撃ち!
かっこいいじゃねぇか。
追撃の1発を自由落下で回避。
ビルの影に降り立ち、舞い上がる砂塵。
≪あれも避けるか≫
避けるだけじゃ勝てないけどな。
レーダーは、急接近してくる赤点を映す。
性能差は歴然、奴ならどうする?
腕と地形で補う──戦場を思い出せ。
ペダルを蹴って、後方へ急加速。
眼前で舞い上がる砂塵に風穴が開く。
≪初期機体で、よく避ける≫
「オープニングよりは避けやすい、ぜ!」
機体を旋回させる際、移動の軸線を逸らす。
AP弾が至近を掠める。
旋回と同時に、上空のアリーナ3位へライフルを連射。
≪あれと比べるな≫
急加速でビルの影へと消えるカッパーの巨人。
スラスターをカット、エネルギーを回復。
そのままストリートを突っ走り、高層ビルの立ち並ぶ一帯を目指す。
≪ヘイズ、Vが逃走していきます!≫
≪いや……あれは奴を戦場まで誘引しているな≫
解説ありがとう、ヘイズ。
後方から飛来したAP弾を飛び跳ねて躱す。
背後から急接近してくるアリーナ3位。
肉薄すれば躱せない──そこは俺の間合だぜ?
着地で硬直する前に、スラスターを噴射。
レーザーブレイドの刀身を最大へ。
上昇、旋回、左腕を振り抜く!
≪ちっ!≫
間一髪で逆噴射し、上空へ逃れるアリーナ3位。
「避けたっ」
旋回の勢いを殺さず、右腕を突き出してライフルを連射。
当然のように回避され、光弾が鉛色の空へ流れる。
≪エネルギー残10%≫
スラスターをカットし、着地。
あれで撃破できれば万々歳だったが、そう上手くはいかない。
とにかく、足場がある場所まで移動する。
アリーナ3位は距離を維持──あれで怖気づく相手じゃない。
高層ビルの影へ入り、周囲の視界が一気に狭くなる。
鉛色の空も狭まっていく。
≪いい腕だな……奴が認めるわけだ≫
「小手調べは終わったか?」
≪ああ≫
上層が崩れ落ちたビルの残骸に降り立つカッパーの巨人。
≪こいつの装弾数は6発、両腕で計12発……残り4発≫
わざわざ残弾を教える。
それは、俺を確実に仕留めるという意志の表明。
細身のティタンから放たれる威圧感が増す。
奴とは違うプレッシャーだった。
≪勝負だ≫
「来い!」
同時にスラスターを噴射、吶喊する。
視界が加速で狭まる中、手動で照準。
どちらも撃たない。
左背面に回り込まれる──そのまま高層ビルへ一直線に突進。
迫る壁面、スラスターをカット。
≪エネルギー残30%≫
壁面に接地、脚のパワーだけで跳躍。
一瞬、視界が粉塵で灰色に染まり、背面を取っていた巨人を映す。
左腕にエネルギーを集中、光の剣が伸びる。
交差は一瞬──回避はしない!
フレイムロックが火を噴き、レーザーブレイドを振り抜く。
≪ちっ!≫
発砲と同時にアリーナ3位は、俺の右手側へ加速して切先から逃れる。
「外したっ!」
光の剣は、ただ鉛色の空を切り裂く。
≪機体損傷≫
相棒は左肩の装甲が弾け飛んだ。
相手は装甲の塗装を焼かれただけ。
割に合わないか、いや──カッパーの巨人が、高層ビルの影を背負う。
それでいい。
斬撃の勢いで機体を回し、遠ざかるアリーナ3位を視界に収める。
スティックを操作し、ミサイルを全弾発射。
≪なに…?≫
当たるはずがない、そういう困惑。
簡単に回避された6発のミサイルは、背後の高層ビルに次々と命中する。
そりゃそうだ。
狙いは──初めから高層ビルだ。
それも背が高く、基部が脆そうなもの。
相棒の最大火力で引導を渡す。
≪これは…!≫
倒壊が、別の倒壊を引き起こし、鉄筋コンクリートの塊や鉄骨が降り注ぐ。
いくらティタンでも、それは回避せざるを得ない。
つまり、機動が制限される。
「行くぞ、相棒!」
進行方向にあった高層ビルの壁面を蹴り、その渦中へ突っ込む。
ここで決める!
赤茶けた砂、灰色の粉塵、視界は0──そこで瞬く赤い閃光。
スラスターの噴射炎を追う。
ペダルを踏み込んで、相棒を加速させる。
鉄筋コンクリートの塊を潜る──俺を睨む赤い眼光。
最小限の機動で鋭く旋回するカッパーの巨人。
右腕のフレイムロックが火を噴く。
機体を僅かに逸らせば、右肩のランチャーが吹き飛ぶ。
≪エネルギー残10%、右肩部ユニット大破──≫
でも、これで射程に入った。
狙うはコクピット。
行くぜ、必殺技!
「もらった!」
繰り出したサッカーボールキックが、コクピットを──
「マジかよっ」
捉えない。
上半身のスラスターだけ噴射して、空中で姿勢を変えやがった!
削り取ったカッパーの欠片が舞う。
≪甘いぞ!≫
落下しながら、アリーナ3位は両腕のフレイムロックを構えた。
上等だ、やってやるぜ!
「まだだ!」
スラスターをカット、カッパーの巨人目掛けて落下。
振り抜いた脚で踵落としを叩き込む!
≪なに!?≫
驚愕、そして赤い閃光が眼前で瞬く。
アリーナ3位は回避を優先──照準が外れる。
コクピットを掠めるフレイムロックの弾丸。
俺の踵落としも塗装を剥ぐだけ。
落下する視界の中、姿勢を立て直すアリーナ3位を見送る。
「決めきれないか…!」
不思議と悔しさはなかった。
ライフルで追撃もできたが、この高揚感に水を差したくない。
スラスターを再噴射、近場のビルに着地する。
≪…仕留め損ねたか≫
アリーナ3位は距離1000mほど、同高度のビルに着地。
立ち込める粉塵で視程は最悪、辛うじて見える。
おもむろにフレイムロックの砲口を上げ、ロックオン警報が止む。
≪弾切れだ≫
名残惜しそうな、しかし達成感のある声で、アリーナ3位は告げた。
肘にはスピードローダーらしきパーツが見える。
それでも弾切れ。
楽しい時間は、すぐ終わっちまう。
≪お前の勝ち──≫
声を遮るロックオン警報。
俺とアリーナ3位は同時に飛び退く。
刹那、ビルの屋上は爆炎に飲まれ、黒煙と粉塵が舞い上がる。
「おい、誰だよ…今のは」
横たわる高層ビルの残骸にアリーナ3位と降り立ち、下手人を探す。
またかよ。
飛び入り参加にも限度があるぞ。
さすがに空気を読もうぜ?
≪くそが……どこの塵芥だ≫
殺意に満ちた声を出すアリーナ3位。
肘に装備したスピードローダーがスライドし、フレイムロックのシリンダーにAP弾を装填する。
え、かっこいい──違う、そうじゃない。
今は、無粋な連中をどうしてやるか、だ。
レーダーに映る赤点は4つ、相棒の眼が遅れて4機のティタンを視認する。
≪V、連中は俺が殺す──≫
「俺も混ぜてくれよ……頭に来ちまったぜ」
≪決闘に水を差すとは、許せません!≫
フランベがビルの屋上に着地し、クローバーラインの射撃体勢を取る。
いいぜ、派手に出迎えてやろう。




