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【4-7回目】

 

【4回目】


 次は同じヘマはしない。B5F僕が死んだ場所にて、僕の瞳はスケルトンを捕らえていた。暗くて見通せないが、シャドーもたしかにいるのだろう。出来れば、あの均衡状態を崩し、漁夫の利を狙いたい。


 僕は偶然落ちていた小石を拾い上げ、二体の間にそれを投げ入れる。


 その音をきっかけに、両者が動き出す。シャドーは自らの漆黒の右腕を尖った槍の形状に変化、その隙にスケルトンは一歩踏み出して、剣を振り下ろした。シャドーは真二つに切り裂かれ、灰へと散っていく。今だ!!


 僕はスケルトンへと駆ける。油断していたスケルトンは左手に持つ、弱点であるはずの頭蓋骨を守る素振りがない。強く握りしめたナイフを頭蓋骨へと突き刺した。骨が崩れ落ち、スケルトンの討伐に成功する。よし、今回はうまくいった。あと95F攻略する必要がある。先は長い。正直、途方もない数だが、だからといって投げ出すことなど出来はしない。


 僕はB5Fへと進む。


 ダンジョンにおいて、B5Fからは別次元の難易度となる。


 一つはトラップが設置されていることが増え、罠にかかり、身動きが取れなくなる状況に陥るリスクが増えることだ。だが、こちらに関しては問題ない。そもそも本ダンジョンのマップ記録は僕が対応していて、最短経路はすべて把握している。道草を食わない限り、トラップには嵌らないだろう。


 それに、盗賊職はトラップに関して設置・解除が出来るスキルが多くある。仮にトラップに捕らわれたとしても、解除可能だろう。最悪のケースだが、身動きが取れなければ、自殺してもよい。勿論、死ぬのは途轍とてつもなく痛いのでやりたくないが……。


 さて、もう一つB5Fの難易度が上がる理由として、【隠密】スキルをものともしないモンスターが増えるのだ。こちらの方が僕に対しては死活問題だ。単純にレベル差によっては【隠密】スキルが効かないことに加えて、蔓延はびこる魔物の強さも一段上がる。


「気を引き締めて進まないと」


 僕の隣にキュアはいない。勇者であるレオンも、敵を引き付けてくれるナイツもいないのだ。せめて、発言する度に悪態をつくマミでもいてくれれば、「あんた! なにビビってんのよ!!」って発破はっぱをかけてくれただろう。でも、僕の言葉を拾ってくれる人は誰もいない、無情にも僕の言葉は闇に消えていった。自らの手で運命を変えないといけないのだ。


「っと!!」


 僕の視界に入ったのは、軍隊蟻ぐんたいありだ。急いで奴らの視界に入らないように壁へと隠れる。蟻と聞くと、人間の脅威にはならない印象を受けるだろうが、全長1メートルにも及ぶ巨大な怪物だ。また、鋼で覆われており、物理攻撃は効きづらい。関節を切り落とすような手法は有効だが、基本戦略としては、魔法使いの魔法による攻撃が効率的だ。


 マミが悲鳴をあげながら、最上位の火属性魔法で焼き払っていたなあ。っと、いまは軍隊蟻に集中する。


 一体、二体、三体か……。一体でさえ、僕では敵わないのが目に見えている。最短経路は軍隊蟻がいるルートだが、迂回することにする。マップ記録の際には最短経路へと向かったため、初めて通る道だ。石造りの通路を松明で照らしながら進む。コツコツという音が反響して僕の耳に入る。次の瞬間――。


 ガコン。


 僕が踏み出した右足が沈む。踏み出した石材が地面へとめり込み、突如として、穴が開いた。古典的なトラップ、落とし穴だ。そして、穴の下には剣山が僕を殺そうと待ち構えていた。


「ッ!! トラップ解除!!」


 僕は盗賊職の【トラップ解除】スキルを発動して、剣山を引っ込ませる。ふう、軽い命ではあるが、命拾いをした。さて、単なる落とし穴と化したトラップから脱出するため、アイテムインベントリからロープを選択して、自分の手へと発現させる。勇者たちの足手まといにならないようにと、せめて、トラップのスペシャリストたる盗賊職の役割を遂行できるように、日頃からアイテム類は準備万端としている。その準備が功を奏した。


 ダンジョンの落とし穴は、誤って落ちた場合に脱出できるようにだろうか、元の通路に出っ張りが存在する。そこに、ロープをひっかけることが出来れば、難なく脱出可能だ。ロープを投げようとした矢先、ふと、僕の影が、僕ではない何者・・かの影に覆われる。


 嫌な予感がして見上げると、先程の軍隊蟻が僕を見つけて、獲物が引っ掛かったことに喜んでいるようだ。


 なるほど。そうか。この罠に誘導して、獲物を食べようとしていたのか。完全に迂闊うかつだった。


 軍隊蟻たちは我先にと、落とし穴へと踏み入り、獲物ぼくを食していく。


 僕は奴らに噛み殺された。


 次。


【5回目】


 B5F。同じ場所で僕は落とし穴の罠を回避する。だが、抜けた先で軍隊蟻と遭遇し、同じく噛み殺される。


 次。


【6回目】


 迂回路が使えないことから、僕は正面突破を図る。【隠密】スキルをつかって、軍隊蟻の後ろにつくように通路を進む。だが、軍隊蟻の一体が急にきびすを返して、僕の方へと向かってくる。必死に逃走するが、奴の脚力に追い付かれ、馬乗りに。身動きが取れない状態に陥り、僕は夢中でもがく。


 だが、無常にも、軍隊蟻は僕の頭部を食したのだ。


 次。


【7回目】


 軍隊蟻が見えなくなるまで、ただひたすらに待つことを選択。レオン達がB5Fに辿り着いて来てしまうと、追い付くことは困難になる。それまでに何とか、奴らがどいてくれればよいのだが。僕は辛抱強く待つことにする。……どれだけの時間が経ったろうか。


 背後から、ドシン、ドシンと足音がする。


 咄嗟に振り返ると、オークが一体僕に気づいたのか、近づいてくる。緑色の皮膚に2メートル近くはありそうな長身の巨体、さらに、筋肉質な身体は、人間など赤子のようにひねりつぶすことができそうだ。


 本来、オークはB10F以下に生息することが多い。間違いなく、B5Fのおさとして君臨していることが容易に想像できる。


 僕は膝が震えて、動くことは出来ない。乾いた笑いが漏れる。


「……はは、こ、こんにちは……」


「GYOGYAOUU」


 オークは良くわからない叫び声をあげると、緑色の顔を近づけ、僕の目を見据えた。オークの牙の隙間から吐息が漏れる。


「あの、もしよろしければ、見逃してくれると……」


 僕の言葉など聞くわけもなく。巨腕から振り下ろされる鉄槌が僕の身体を粉砕する。


 意識が遠のく……。


 同じ位置で待ち続けるわけにもいかない、と。これはもう一度アプローチ方法を練りなおす必要がありそうだ。


 次。


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