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【2回目】②


 *


「少しは落ち着け」


 手持ち無沙汰な僕は椅子に座ったり、立ち上がったり、歩き回ったり、またしても座ったり、落ち着きなく右往左往していた。そんな様子を見かねた冒険者ギルドのマスターが、僕に声をかけたのだ。


 レオン達と別れた後、僕は冒険者ギルドに立ち寄った。何かあったとして、緊急時に情報が集まる場所、それがギルドだ。ここに滞在しておけば、最初に情報が来る。だが、正直、居ても立っても居られない状態が続いている。ただ待つだけというのは、こんなにも苦しいものなのか。一向に僕の振る舞いが改善されないのを見かねて、ギルドマスターは気休めの言葉をかけた。


「あいつらなら大丈夫だ、この街の冒険者が束になっても敵わない、あの神龍も倒したんだぞ、英雄の器だ」


「わ、わかっている、レオンが文字通りの勇者であることも。でも……」


 あのときの記憶が僕に訴えかけているのだ。思い通りにいかない、と。雨が降り始めたのだろうか。木造の屋根を叩きつける雨音がギルド内に響き渡る。


「ギルドマスター、レオン達はちゃんと回復アイテムを準備したんだよね?」


「ああ、ちゃんと俺も伝えたぞ。『おっさんも同じことを言うのか』と、苦言を呈されたけどな。渋々といった様子だったが、回復アイテムをインベントリいっぱいに準備していることを確認した。たとえ、今回のダンジョンのボスが神龍であっても、奴らを斃すことなんてできないだろう」


「そう……だよね。転移石も持ったんだよね?」


「当たり前だ。俺も確認しているし、転移石をダンジョンに持ち運ばない冒険者の方が少ないだろ?」


「確かに……」


 転移石はダンジョン内から入口まで一瞬でワープすることが出来る支援アイテムだ。転移石も所持しているのであれば、なにかあったとしても即座に街まで帰還することが可能となる。


「じゃあ、今回はだいじょう――」


「た、大変だ!!」


 勢いよく両扉が開かれる。ギルド内に立ち入ったのは冒険者だ。彼は必死の形相でギルド内に耳をつんざく程の大声で叫ぶ。


「勇者パーティーがB100F、ダンジョン最下層にて壊滅的被害!! 今仲間が救出に向かっている!!」


「なっ!?」


 その凶報を聞き、僕は慌ててギルドから外に出る。「おい!! ちょっと待て」というギルドマスターの声が耳に入ったが、聞いてなんていられない。


 雨足が強い。横殴りの雨が僕を痛みつける。それでも、僕はダンジョンの入り口まで駆けた。足を止めることなんて出来はしなかった。


 地下へと続く石畳の階段、そのダンジョンの入り口の真横に3つの遺体が並べて置かれていた。レオンと、ナイツ、そして、首なし死体に関しては、服装からマミだと分かる。どうして……、どうして、こうなるんだ!!僕はステータス画面のアイテムインベントリから、回復アイテムであるハイポーションを選択して、実体化させる。


「おい、なにやっている!!」


「何って決まっている!! 回復、回復をさせないと!!」


 僕はハイポーションをレオンの口に流し込む。動かない。では、ナイツは?何故か動かない。じゃあ、マミは?マミには首から上がないから、そもそも、口がない。一体どうすれば……。


「無駄だ!! もう、彼らは息絶えている。ポーションが効くのは生きている人間だけだ」


「そうだ、蘇生!! キュアのユニークスキルは蘇生だ。死んだ人間すら生き返らせる、神の奇蹟だ!! キュア、彼女はどこにいるんだ!!」


 冒険者は唇を縫い付けたように口を閉ざす。そして、藍色の布に包まれたそれを渡した。


「それしか取り戻せなかった」


 冒険者の彼が何を言っているのか理解できない。僕はそれを受け取り、ゆっくりと布をめくっていく。めくる度に自分が壊れていく音が聞こえる。すべて捲り終わると、そこにあったのは右手だった。薬指には僕があげた指輪が嵌めてある。その右手を胸に抱きながら、僕は曇天どんてんの空を仰ぎ、座り込む。


 自分の頬を伝っているのが、涙なのか、雨なのか判断つかない。僕は雄叫びを上げる、その叫びは雨音によって掻き消されていく。僕は絶望感に打ちひしがれるしかなかった。


 ひとしきり涙を流し、呆然とした後、ふと開きっぱなしになっていたステータス画面が目に留まる。今まで表示されなかった【ユニークスキル:UNKNOWN】に変化をきたしていることに気づいた。


【ユニークスキル:死に戻り】

 効果:自分の命を投げ打つことで、分岐点まで時間を戻すことができる。運命に抗うことが出来るが、代わりに輪廻に囚われることになる。

 発現条件:死ぬ、ただそれだけ


 そうか、そういうことか。昨日見たのは悪夢でもなんでもなく、現実ということか。悪夢でも夢ならばどれだけよかったか。こんなにも残酷で、残虐で、残忍で、残念な結末が現実なんて、到底許容できない。


 僕は帰る、四人がいる世界に。そして変える、残酷な運命を――。


 僕は、意を決して、立ち上がった。


「大丈夫か? 顔色が良くないが……」


 先ほどの冒険者が僕に心配そうに声をかける。だから、僕は答えた。


「うん、大丈夫だ」


 そう断言して、僕は自分の心臓目掛けて、ナイフを突き立てた。冒険者は一瞬の出来事に戸惑いを隠せていない。赤い血飛沫が辺りに飛び散り、僕は二度目の絶命を経験した。


 次の命へ僕の意識は引き継がれた。


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