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【1回目】①

 

 *


【1回目】


「トライ、お前はこの勇者パーティーから抜けてもらう」


「えっ!?」


 僕の聞き間違いだろうか。長年、一緒に旅をしてきたレオンからの発言だと信じたくない。もう一度聞き返すことにする。


「ごめん。冗談……だよね? 追放って、どう言うこと?」


「俺が冗談を好きじゃないのは、お前が一番知っているだろう? 言葉通りの意味だ。勇者パーティーからは脱退してもらう。理由は言わなくてもわかるな?」


 わからない。どうして僕が……と口に出そうとして、その言葉を飲み込む。心の奥底では気づいているのだ。僕がこのパーティーで足手纏いなことなんて。僕は呆然と立ち尽くすしかない。


「一応伝えておくのであれば、単純に力不足だ。盗賊職は罠の設置、【隠密】スキルなど、サポート面に特化している支援職だ。居なくても戦力には大した影響がない」


 勇者レオンは容赦なく、僕に言い放つ。狭い宿屋の一室で勇者の辛辣しんらつな言葉が僕の心を深くえぐる。僕は冷や汗が止まらない、喉がカラカラの状態だ。


「まして、トライのユニークスキルはUNKNOWN。すでに優秀なユニークスキルを発現さしている盗賊職の冒険者はいくらでもいる。お前である必要性がないんだ」


 ユニークスキル。職業とは別に個人に与えられる個性。千差万別となっていて、不遇職の盗賊でも、ユニークスキルとの組み合わせで、十にも百にもすることが出来る。例えば、一線級の盗賊だと、状態異常付与のユニークスキルで毒を付与したり、神速のスキルで速度を高めて敵の攻撃を回避したり、不遇職でもパーティーに貢献することができる術があるのだ。


 だが、僕はユニークスキルに目覚めていない。UNKNOWNは何か条件を満たすことが出来ればアンロックされて、ユニークスキルが使用できる。けれども、いくらモンスターを倒してレベルを上げても、ロックが解除されないのだ。よって、戦闘ではお荷物なのは否めない。でも、だからと言って、パーティーに貢献していないわけではない。


「た、たしかに、現時点では戦闘では役に立たない単なる支援職だけど、アイテム管理やマップ作製といったダンジョン攻略する上での庶務に関して、僕はパーティーに貢献できていると思うんだ」


「それは認める。だが、回復アイテムや攻撃アイテムは、各々で管理すれば良いだけだし、今回のダンジョンについてはすでに探索済みだろう? マップも完成済み。あとはボスを攻略するだけ、正直邪魔になるだけだ」


「そ、そんな……」


「ちょっと、レオン! もっとはっきり言いなさいよ!! あんたが甘やかすから、反論なんて出てくるんじゃない!! 心を鬼にしなさいよ!!」


 魔法使いのマミが僕とレオンのやり取りに入ってくる。まだレオンの言い方でも甘さが残っているというのか。


「マミの言う通りだな、つい、情が移ってしまった。断言することにしよう。トライ、君は“お払い箱”だ」


「くっ……。」


 無口だが頼りになる兄貴分、戦士のナイツに目配せをする。ナイツならば、もしかしたら庇ってくれるかもしれないという期待を込めて。そんなナイツは、後頭部を掻きながら、口を開く。


「……仕方がないだろう。諦めろ、トライ」


「そ、そんな。い、いままで一緒にやってきたじゃないか!!」


 誰からも反応がない。僕の声が届いていないかのように、無関心だ。僕は黙っていた最後の一人に声をかけた。


「……キュア、君はどうなんだ?」


 情けないとは思っている。でも、こんなことは納得できない。同じ村の出身で、一番長い付き合いである、僧侶のキュアに助けを求める。


「……、ごめんね、トライ。私もレオン様と同じ意見。私のユニークスキル蘇生があるとはいえ、この先のボスは手強いと思うの。だから、ね。ここはレオン様の言うことを聞いて、引いてくれないかな?」


「なんで……」


 僕は自分自身を支える力が抜けてしまい、その場で座り込んでしまう。僕を見下ろしながら、勇者レオンは語る。


「これは決定事項だ、いいな、トライ」


 レオンは剣を携えて、この宿屋の一室を後にする。マミ、ナイツも、僕に目も暮れずに、この部屋から立ち去った。


 最後にキュアが僕に近寄り、肩に触れようと、白く透き通った右手を近づける。右手の薬指に嵌めた指輪が輝く。小さい頃に僕があげた手作りの指輪だ。その指輪が、僕の肩に触れる直前、キュアは思い直したのか、手を引っ込めた。


 そして、きびすを返して、扉へと向かう。キュアはこちらを振り向くことなく、背中越しで話した。


「トライ、私たちが無事にこのダンジョンから帰ってくることが出来たら、どうしても伝えたいことがあるの。だから、お願い。私たちの帰りを待っててね」


 予想はついている。最近、キュアは夜に自室を抜け出して、勇者が宿泊していた一室に入り浸っていた。幼いながら交わした、あのとき《・・・・》の約束は守れない、そういうことだろう。絶望感と劣等感が僕の心の奥底で渦巻く。そして、決意する、必ずみんなを見返してやる、と。


 ……だが、その願いは一生・・叶うことはなかった。


 王国歴645年5月2日――。


 僕はこの日、一番大事にしていた二つを同時に失うことになる。信頼している仲間と愛している人を。


 勇者から追放されたその日、ダンジョン最下層で、ボスと対峙した勇者パーティーは、壊滅したのだった。


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