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グレイウルフ討伐

 本格的にメンテするには、設備が足りない。不満の残るメンテだが、この世界に無い設備(もの)をねだっても仕方ない。

 手を使わずにモノを自在に動かす魔法があれば代用できるかもしれないが。


 そして晩御飯を食べ、特に何もない夜を越えて平穏に1泊した俺は、改めて冒険者ギルドに来ていた。


「……なんで本当になにもしないんですか?」

「いや、それが普通だろ。むしろ俺が手を出す人間に見えたか?」

「確かにグレンさんはそういう人じゃないですね……だから好きなんですが。あ、いや。人として好ましいという意味ですよ!」

「分かってる分かってる」


 猫って肉食獣だよな。と、俺はアイリの猫耳を見て思った。

 それはさておき。俺はギルドの受付に向かった。


「ゴブリンより強い魔物の討伐系依頼を受けたいんだが、おススメは無いか?」

「えっと、そですね。それなら……グレイウルフなどはいかがでしょう」


 灰色の狼で、1体1体もそれなりに強い。が、さらに厄介なことに3体以上で襲いかかてくることが多い。

 なので、たしか推奨ランクはC。今の俺より1つ上だな。


「いいのか? 俺はランクDだぞ?」

「あくまで『推奨』ですからね。グレンさんは戦闘が得意なようですし」


 そっか、推奨ってことは、勝てるんならどんどん挑んでもいいってことか。

 今回はグレイウルフで良いとして、次は推奨ランクBとか見てみたいな。


「ただ、このあたりで出る討伐依頼はこのあたりが上限ですね」

「そうなのか?」

「これ以上は遠出しないと。推奨ランクB以上が帝都付近に出たらすぐに討伐隊がでますから、依頼として残らないんですよ」


 対魔物の治安が行き届いているというわけか。安心して人が暮らせて、それゆえに人が集まる。大きな町というのは伊達じゃないということだ。

 東京に熊が出没しないようなもんだな。怪人は出たけど、あいつらは野生生物じゃない。


「遠出は面倒でしょうが、その分依頼料も入りますよ。強い魔物の討伐には国から補助金が出ますから」

「……なんか、俺が遠出する前提で話してないか?」

「討伐系依頼が得意そうですから、いずれそうなるでしょうと思いまして」


 ……それしか能がないからな。

 まぁ、それで人の役に立てるなら文句がある訳でもない。


  *


 そして、グレイウルフの討伐に帝都の外、街道を歩いていた。

 今回もアイリとパーティーを組んでいる。


「良かったのか? ほかの依頼受けなくて」

「いいんですよ! グレンさんと一緒の方が稼げますし、それに私も自分を鍛えたいですから」

「お、鍛えたいのか」


 そうか、鍛えたいのか。

 そうかそうか。ふふふ。


「あの、グレンさん? 凄い笑顔ですよ? そしてなんか急に寒気が」

「なに、気にするな。強くなりたいなら俺が面倒を見てやってもいい」

「本当ですか! 嫌な予感がしますがお願いします!」


 丁度目の前に灰色の狼、グレイウルフが現れた。数は4。目の前と言っても四方を囲むように、だ。

 良い教材だな。グレイウルフを誘うために加工済みオオウサギ肉を持ってきた甲斐があるってもんだ。


「じゃ、3体は俺が倒すから1体を好きに倒してみろ」

「あっさり言いますね、Cランクですよ?」

「そもそも俺の依頼に付いてきたってことは、ちゃんと働く気があるんだろ? そもそもCランクっていうのは3匹揃っての話だ、1匹なら順当だろ」


 俺は棍を構える。犬コロ3匹くらいなら、変身しなくてもいいだろう。

 まず正面のグレイウルフの鼻先をガツンと突き、一撃で昏倒させる。

 そして返す刀……棒だけど……で、左右からとびかかる狼に合わせて棍の端を置く。

 噛みつこうと勢いよくとびかかってきた狼は、口の中に棍棒を受けた。


「よっと」


 ぐいんと棍を振り回す。棍に噛みついてしまった狼は両端に振り回され、1匹ずつ地面に叩きつけられて意識を失った。

 そして、1匹ずつトドメを刺す。


「よし、3匹っと。アイリ、そっちはどうだ?」

「はぇ?! もう3匹倒したんですか?!」


 見るとアイリは剣でグレイウルフと打ち合っていた。

 防戦一方、という感じだが、攻撃を綺麗に受け流している。体力が続く限りいくらでも戦っていられそうな安定感がある。


「アイリは、回避盾っぽいな」

「は、はい?! なんですか?! 回避盾?!」

「敵の攻撃を避けつつ注意を引き付ける役だ。他の攻撃型の仲間とパーティーを組むことで真価が発揮される、ってとこだな。俺は攻撃型だから相性いいぞ」

「よくわからないですが、私とグレンさんの相性がいいってことだけは分かりました!」


 言いながらも、グレイウルフの噛みつきを剣で受け止める。

 (みずか)ら剣に突っ込んでいる形のグレイウルフは、地味にダメージが蓄積しているようだ。

 このまま防戦を続けても勝てるかもしれないが――


「あっ!」


 ――グレイウルフは、身を(ひるがえ)して逃げた。

 相手も死にたいわけじゃない、不利なら逃げる。当然だ。

 だがそれを読んでいた俺は、棍で足を払い転倒させ、地面に押さえつけた。

 アイリは、そこにトドメを刺す。


「す、すみません。私が任されたのに」

「いや、これでいい。次は2匹を引き付けておいてくれ。なに、危なくなったら助けるから」

「……は、はいぃ」


 へにょん、とアイリの耳がへたり込んだ。

 グレイウルフを何匹まで引き付けていられるか、楽しみだな。



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