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ゴブリン討伐依頼

 アッサム商会を後にした俺たちは、早速ゴブリンが出るという草原にやってきていた。

 腰くらいの高さの草がそこかしこに生えていて、小さい子供くらいだというゴブリンはそこかしこに潜んでいるらしい。


「で、この草原を焼き払えばいいんだろうか。それなら話は早いんだが」

「ちょ?! 待ってくださいよグレンさん、この草原には有用な薬草がいっぱい生えているんですよ! だから焼き払ってはだめです!」

「冗談だよアイリ。さすがに俺もそこまで馬鹿じゃない」


 ぽふぽふと、アイリの頭に手を置くように撫でる。

 アイリは、ぼふっと顔を赤くした。


「な、そ、そうならそうと言ってくださいよもうっ! あと耳に手が当たってます、えっち!」

「わわっと、スマン、その猫耳は触っちゃダメだったのか」

「あ、いえその、グレンさんなら別にいいんですけども、けどもやっぱり心の準備という物がありましてね?」


 心の準備があればOKなのか……そうか。

 俺は何も言わず、ゴブリン狩りに集中することにした。


 ぐっと気配を探る。

 灼熱戦士として、敵の気配位は探れるのだ。メインは都市内だったが、敵を爆殺させても迷惑にならない採掘場とかにおびき寄せることも多かったので野外でもバッチリだ。


 俺達の他に、周囲の草むらのひとつに小さな3つくらいの気配がある。これか?

 俺は荷物を地面に置き、戦闘準備を整えることにした。


「……変身!」


 変身ベルトを出現させる。そこから全身を使った手信号のような変身モーション。最後にベルトのバックルに手を当てると、ゴウッ!と一瞬燃え上がる炎が俺を覆う。

 炎が消えた時、俺は灼熱戦士カエンに変身していた。


 尚、モーション無しに簡易変身を行うこともできる。

 省略できるなら普段から変身モーションは必要ないんじゃないか、という話ではあるが、モーションのあるなしで変身直後の出力に、ギアが1速か3速かくらいの違いが出るのだ。


 カエンの探知能力であれば、敵のことが更によく分かる。視界をサーモグラフにすれば草むらの中で小人が3人、向かい合って話をしているようだった。

 視界を元に戻す。


「あ、あの、グレンさん?」

「あっちの草むらに小人らしき影が3つある。ゴブリンじゃないかな?」

「えっ、なんですか、【索敵】のスキルでも持ってたんですか」

「似たようなもんだ」


 俺はがさっと草むらをかき分けた。

 そこには、「ギィ?」と緑色の小人――ゴブリンが居た。


「これがゴブリンでいいのか?」

「え?――あ、はい」

「そうか」


 突然のことにフリーズしていたゴブリンが、俺に向かって手にした棍棒を振り回す。

 カエンとなっている俺にはほぼ止まっているようなそれを軽く受け流し、軽くパンチを繰り出した。


 ゴブリンの頭が「ボッ」と血煙となって吹っ飛んだ。


 ……しまった、思っていたより脆いな。

 まぁ、討伐数のカウントには問題ないし、ゴブリンは取れる素材もない。

 これがオオウサギだったら肉が無くなるところだった。


「まぁいいか。カエンパンチ!」


 説明しよう。カエンパンチは軽く打っても1(トン)の破壊力があるのだ。

 言わずもがな、ゴブリンは死んだ、アーメン。首なし死体が新しく2つできたな。


「……これでいいのかな?」

「す、すごいです……ゴブリンは確かに簡単に倒せるモンスターですが」

「カエンにはこのくらいの力がある、それだけだ」


 怪人や戦闘員の方がよっぽど強かったな、と思い返す。

 戦闘員でも俺のパンチ食らっても吹っ飛んで、立ち上がってまたやってくるレベルだったもんな。怪人に至っては牽制にしかならなかったし……

 ……今更なんだけど、怪人ってものすごく強かったんじゃないか?

 悪の秘密結社『ビッグオーガ』の幹部で「我々の技術力は世界一ィイ!」とか叫んでいたヤツもいたが、あながち嘘だったわけでもなさそうだ。


「ゴブリンの討伐って何匹すればいいんだっけ?」

「あ、えっと。とりあえず5匹で1依頼分、ですね。オオウサギもだったはずです」

「最低あと2匹ってことだな」


 草原を散歩して、ゴブリンを探す。あと、オオウサギも居ればいいな。


  *


 狩は2時間ほどで切り上げた。

 ゴブリンにはカエンパンチ、オオウサギ相手には、手加減として棍を使った突き。

 やはり棍はいい、回転させつつ付き出すと、カエンのパワーでも綺麗にその分の穴が開く程度で済むからな。

 そんなこんなで首なし死体と額に棍棒サイズの丸い穴をあけたオオウサギ肉を量産した俺は、一旦ギルドに戻ることにした。当然変身は解除して、だ。

 オオウサギ肉は15匹分。1匹で抱えるほどに大きく、マジックバッグにも入りきらなかった。棍に括りつけて持ち運んだけど持ちきれず、アイリにも2匹ほど持ってもらっていた。


「重いですね!」

「すまんなアイリ。俺一人じゃ持ちきれなくて。狩り過ぎちまった」

「いいんです、これも恩返しってことで!」


 もう十分に返してもらってる気もするけどな。おかげで迷子にならずに済んでるし。

 ギルドについて、丁度空いてるカウンターがあった。アイリと一緒にそこにオオウサギ肉をどさどさとおろした。


「おーい、買い取りはここで良いんだよな?」

「あ、はいはい。ただいま行きます……って、多いですね。あれ、さっき登録したグレンさんじゃないですか。もうこんなに?」

「ああ。これならもう少し強いモンスター相手でも大丈夫そうだな。あ、肉はもう少しある、すぐ出すよ」


 アイリと一緒にカウント魔石を渡し、さらにどさどさとオオウサギ肉を追加した。

 マジックバッグについては驚いてはいたようだが、さすが冒険者ギルドの受付、そこは声に出すことは無かった。

 ルーキー冒険者が高価な装備を持ってるって広まったら厄介だもんな。


「……ゴブリンの討伐も、30匹ですか。しかもこれ、全部グレンさんがトドメさしてるみたいですね。あの、に、2時間でこんなに遭遇したんですか?」

「カエンさんってばすごいんですよ、草むらの中で寝てるゴブリンも見つけちゃうんですから」

「へぇ、それは凄い。寝ている魔物というものは通常見つけにくいんですが」


 まぁ、サーモグラフィ視点なら、そこはむしろバレバレだからな。


「そのくらいにしといてくれ。飯の種になる話だし、あまり大げさに広められても困る。……で、買い取りと依頼報酬でどれくらいになるんだ?」

「あ、はい。しばらくお待ちください……え、このオオウサギどうやって仕留めたんですか? 全部綺麗に額に同じ大きさの穴が開いてますけど」

「ん? ああ、この棍でキュッと勢いよく突いたらこうなるんだ」


 さすがに変身して見せるほどでもないけど、事実だからな。


「……オオウサギを、全部正面から、ですか?」

「大きいだけでノロマだったからな」

「そ、そうですか」


 ウサギ怪人と比べたらただの置物だった。

 一発1(トン)のジャブが牽制にしかならない怪人と比べるべきではないんだろうけど。

 しばらく待つと、受付の人が戻ってきた。


「お待たせいたしました。えっと、まずゴブリンの討伐依頼の達成×6で銅貨25枚×6で銅貨150枚、オオウサギの討伐依頼の達成×3で銅貨4枚×3の銅貨12枚、オオウサギの買い取りは査定1匹銅貨30枚が15匹分で銅貨450枚……えっと、合計で銅貨612枚となります」


 オオウサギは依頼1回分の値段が安いな。こっちは肉メインで稼げってことなのか。

 計算のミスもないようだし、まぁいいだろうと俺は頷いた。


「受け取りはどのようになさいますか?」

「あ、銅貨600枚は銀貨で」

「かしこまりました」


 俺は、銀貨6枚と銅貨12枚を受け取った。そこから半分の銀貨3枚と銅貨6枚を小袋に入れ、アイリに渡す。


「ほら、アイリの分だ」

「え?! わ、私なにもしてないのにこんなにもらえないですよー」

「ん? 何言ってんだ。ちゃんとウサギが逃げてもいいように回り込んだりしてくれてたじゃないか」


 そう、アイリはこっそりとウサギの逃げ道を塞ぐように回り込んで、俺のサポートをしっかりこなしてくれていた。結局俺が一度もウサギを逃すことは無かったが、その働きはしっかり評価するべきだろう。


「……気づいてましたか。いや、でも一回も役に立ちませんでしたよ?」

「いいんだよ。パーティーは協力し合うもんだろ。……これからも頼むよ、アイリ先輩(・・)

「はうっ……!」


 俺は有無を言わさずアイリに報酬を押し付け、頭を撫でた。

 アイリは顔を赤くし、受け取ってくれた。猫耳が恥ずかしそうにへにゃっとしていた。




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