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ドラゴン退治

(くらえ、不定期更新だ!(一週間ぶり))


 ミーシャの快適なテントで一晩過ごし、翌朝。今日はいよいよドラゴン退治だ。

 フレイムエッジ号についても根掘り葉掘り聞かれたが、作ったのは俺じゃないし詳しく聞かれても困る。


「で、ドラゴンはどこに居るんだ?」

「あの洞窟だよ」


 俺たちが野営をしていたところから200mくらいしか離れていない場所に、その洞窟はあった。その洞窟付近にだけ、雪が積もっている――そういえばスノードラゴンと言っていたなと思い出した。


「……近いな。夜中のうちに襲われなくて良かった」

「にゃっははは、あのテントには隠蔽の特殊効果が付与されてるから大丈夫なんだよ。普通に野営してたらさすがに見つかってただろうけどね」

「と、とりあえずグレンさん! 相手がスノードラゴンなら対冷気の魔法かけますね」


 アイリが魔法スキルを使う。【コールドガード】という、冷気に強くなる魔法のようだ。

 ふわりとした風が俺を包むと、ほんのりと暖かくなったように感じる。


「お、いいサポートだね。ほめたげよ。……さあ準備は整った、行くのだグレン! ドラゴンをぶっ殺して平和を取り戻せー!」

「……まぁ、うん。ありがとうなアイリ。それじゃ行ってくる」

「本当は私も戦えたらいいんですけど……さすがにドラゴン相手じゃ足を引っ張るだけですから」


 そう言ってアイリはミーシャの後ろに隠れる。

 俺は1人で洞窟に向かった。


 洞窟に入る前に【硬気功】を発動しておく。そして、棍を片手に気配を消して侵入する。

 なんか、秘密結社ビッグオーガのアジトに忍び込んだのを思い出すな……


 と、いけないいけない。今はスノードラゴンの巣穴だ。

 巣穴はあまり深くなく、すぐにスノードラゴンが見つけられた。スノーと呼ばれるだけあって白い鱗に覆われている。大きさは、トラックくらいか。羽の生えた巨大なトカゲが雪の上に寝そべっていた。


 ……ふむ、ドラゴンのくせに財宝をため込んでいたり、迷宮になっていたりということはないようだ。ファンタジーの定番だろうに。


 スノードラゴンがピクリと頭を動かした。……気付かれたかな。

 だがまだ他に動きはない。好戦的なヤツだったら即座に襲い掛かってくる所だろうが、間合いに入るまでの待ち伏せか、あるいは戦いを好まないのか――まぁ、どちらにせよ討伐させてもらうが。


 先制攻撃、というほどではないが石でも投げつけてみるか。

 俺は洞窟に積もっている雪を掻き分け、手頃な大きさの石を拾う。……振りかぶって――


「グルァアアアアアアアゥ!」


 ドラゴンが吼えて突進してきた、って、狭い洞窟だと逃げ場が殆どない!

 俺は洞窟の入り口まで走り、すぐ横に避けて突進をかわした。


 ドラゴンは勢い余ってそのまま洞窟を飛び出したが、ぶわさ、と羽を広げて止まる。

 そして、振り向いて俺をしっかりと視界に収める。


 これは変身した方が良いか――いや、まだだな。もう1手見てからだ。

 だがチャージは開始しておこう。俺の腰に変身ベルトが現れる。チャージして気持ちを高めておくことで、走りながらの簡易ポーズなどでも一瞬で万全の変身ができるようになるのだ。


「グゥアアアアォ!」


 ビリビリと空気が震える。よく吼えるトカゲめ。

 ……このプレッシャーは怪人を相手にしている時を思い出す。あいつらは基本的に人型だが、化物だ――それを始末していた俺もだったな。


 と、一瞬過去の事を思い出していたら目の前に太く白い丸太が迫っていた。

 否、ドラゴンの尻尾だ。俺は棍で斜め上に受け流す。が、流石に質量が大きすぎたか受け流し切れず、横に吹き飛ばされた。


 【硬気功】のおかげで俺に怪我はなかったが、棍がへし折れていた。トレント材は丈夫といってもさすがに限度があったようだ。


「そろそろ本気を出すか……変身!」


 折れた棍を捨て、ベルトのバックルに手を当てる。ゴウッ! と一瞬燃え上がる炎が俺を覆う。炎が体を包む慣れた感覚の直後、俺の姿は灼熱戦士カエンに変わっていた。

 改めてスノードラゴンに向き合う。


「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ! 我が名はカエン、悪を燃やし尽くす正義の炎! ――恨みはないが、狩らせてもらう!」

「ガォオオオオオオオオオオオオオオオオン!」


 俺の名乗りに呼応するように吼えるスノードラゴン。

 俺はカエンセイバーを構え、ドラゴンに正面から戦いを挑んだ。


  *


「なにあれ!? 鎧? ねぇアイリ見た!? 一瞬で鎧出たよ? やっぱり召喚!?」


 ミーシャは、グレンの変身をみてはしゃいでいた。

 後ろに控えるアイリが「ああ、あれですか」とどこか自慢げに答える。


「あれは変身だそうです。変身中はカエンという名前らしいですよ?」

「なにそれ! 獣人の覚醒みたいなもん?」

「姿ががらりと変わってますけど、まぁそんな感じでしょうか? 私は使えないですけど」

「え、ちょっと今しっぽ左手で受け止めたよ! さっきはふっ飛ばされてたのに! あの状態ならドラゴンと正面から力比べできるんだ!? すっげー! グレンきゅんすっげー!」


 初めて見た変身に子供のように騒ぐミーシャ。

 見ればグレン――いや、カエンは、赤く光る剣でドラゴンの身体を斬りつけながらその背中に飛び乗っていた。


「ギュワァアアアアア!!」


 そして、ひときわ大きな咆哮――悲鳴が、山に響く。

 どさり、と白い羽が雪の積もった地面に落ちた。暴れ転げる白いドラゴンに、カエンは一旦距離を取っている。


「羽を切り取ったか……! これでもう飛んで逃げられないね!」

「あの、ミーシャ様。今更なんですけどかなり冷静ですね?」

「は? もう大興奮しっぱなしなんだけど? ひょー! グレン……じゃなくてカエンかっこいー! もっとやっちゃえー! あ、でも素材は高く売れるからあんまり傷つけない方がいいよー!」


 既に赤い剣によって多く傷をつけられているし羽も切り取ったが、まだまだ無傷な場所も多い。カエンはミーシャの言葉を聞いて、手を振ってこたえた。


「おー、さすが私の弟子だねぇ。ふふふ、今夜はドラゴンステーキだ! で、えっとなんだっけアイリ?」

「……ああいやその、ドラゴンがすぐ近くで暴れてるのに余裕だなーって」

「あ、そういうこと?」


 ミーシャはぶんぶんと手を振り回してカエンを応援しつつ、アイリの疑問に答える。


「だってあのドラゴン程度、私なら余裕だからねぇ。グレンにはちょっとキツイかもって思ったから付いてきたけど、あのカエンってのなら楽勝だよ。いやぁ、あんな隠し玉もってたんだねぇ。まったくグレンは水臭いにゃー。私とどっちが強いかにゃー?」


 にこっと笑いつつも、ドラゴンから目を話さないミーシャ。それは単に面白い見世物を見ているというだけでなく、冷えた頭で戦況を分析している部分もあった。

 その上で、ドラゴン相手に負けることはないと判断し、はしゃいでいた。


「なんというか、その。グレンさんを信じていましたけど、……私、足引っ張ってるだけですよね……」

「そうだね!」


 バッサリと言い切るミーシャ。もっとも、アイリも慰めの言葉を期待していたわけでは無かったが。


「でもまぁアイリはグレンの弟子なんでしょ? 弟子なら弱くても当然だから、今はひたすらついていくしかないにゃー。……才能がない訳じゃないって、私、知ってるからね?」

「は、はいっ、頑張ります!」

「その意気だニャン♪ ささ、アイリも応援しよっか! いっけー! そこだー! あはははは!」

「はい! ぐれ……カエンさーーーん! がんばってー!」


 アイリは、とりあえず今は、お腹の底から声を出してカエンを応援することに決めた。



  *


「さて、これ以上はあまり傷をつけない方が良いか……これ、はく製にでもしたら結構壮観だろうし」


 先ほどミーシャが高く売れると言っていたので、俺はこれ以上はなるべく傷をつけないようにしようと決めた。

 既に落としてしまった羽は組み立て式ということにして……


 そうなると、あと一撃で命を奪うのが良いと思うが、必殺技のジャスティスフレアでは無傷どころか骨すら残らないだろう。

 カエンセイバーで斬りつけても浅いあたり、スノードラゴンは氷系だと思われる。相性はあまり良くない。氷は炎を弱らせる。


 しかし差があり過ぎた。焼却炉に氷一粒を入れてもさほど影響がないように、スノードラゴンはカエンの力の前にはさしたる脅威というわけでもない。


 数が多ければ話は別だが、1対1で負けるとは到底思えないな。


「よし決めた。首を落とそう」


 そうすれば確実に仕留められるし、はく製ならともかくドラゴン革のマントとかを作る分にはあまり影響は無いはずだ。

 はく製にするにしても首から上、頭が丸々残っていれば十分カッコイイはずだ。


「行くぞ……手加減して……カエンセイバー、スラッシュ……解除!?」


 ――殺気だ。今にもブレスを吹きそうなドラゴンのものではない。気配は、上空。

 俺は斬りかかろうとしていた足を強引に止め、反転。距離を取る。


 直後、空から巨大な氷柱(つらら)がいくつも降り注ぐ。雪が舞い上がり視界を軽く遮る。

 カエンセイバーをふって熱気で雪を散らす。


 晴れた視界の先には、氷柱が無数に突き刺さり、脳天さえもを貫き、ズタボロになって絶命したスノードラゴンが転がっていた。


(こっちを投稿したら次はだんぼる……あ、だんぼるとはさほど関係ない短編もこれと同時投稿しています)

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